Opinion : 「身の丈の戦闘機」JAS39 グリペン (2001/6/18)
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ここのところ、何かと棘のある内容が多かったので、今週は肩の凝らない話題にしてみようと思う。私のお気に入り戦闘機のひとつ、サーブ JAS39 グリペンの話だ。
スウェーデンの SAAB 社が、JAS39 グリペンを宣伝する Web サイトを立ち上げている。(URL は http://www.gripen.saab.se/)
グリペンというと、F-22、JSF、タイフーン、ラファールと並び、新世代戦闘機の一翼を占める戦闘機だが、その中でもグリペンは異色の存在といえる。
もっとも、それをいい出すと、スウェーデンの戦闘機はドラケン以降、みんな異色ということになってしまうのだが、グリペンが他の「第 4 世代戦闘機」と比べて面白いのは、マルチロール化というトレンドを押さえつつも機体を小型にまとめていることと、「ステルス」に色気を出していないことだ。
多分、ステルス性を求めなかったのは、技術的・経済的な事情もさることながら、スウェーデン空軍が基本的に「防衛空軍」であるという事情が反映されているのではないかと思われる。
機体よりもアビオニクスにカネと手間がかかる現在の戦闘機では、機体を小型にしたからといって安価に済むとは思えないのだが、エンジンを F404 の単発で済ませた点といい、ステルスにこだわらなかった点といい、グリペンが比較的「エコノミー」な戦闘機になる可能性が高い。
少なくとも、F-22 のようにビッグで豪華絢爛な戦闘機と比べれば、安上がりなのは間違いないから、F-22 ほどの性能を要求しない空軍には、いい選択肢だと思う。
あと、スウェーデンの戦闘機の常で、高速道路からの離着陸を可能にし、各地に設けられた分散基地で再武装して出撃できるように設計されている。ということは、設備が整わない場所での運用を考慮しているということだから、整備性にも「とりわけ」気を使っていると期待できそうだ。
個人的には、日本も有事に備えて基地の分散化ということを考えるべきだと思っている。ただし、スウェーデンと違って直線区間の少ない高速道路は使いづらいので、代わりに各地に整備した地方の民間空港を使えるようにして、燃料・武器弾薬・整備機材を持ち込めば済むようにしてみてはどうだろうか、ということを、以前に書いた記憶がある。
たとえば、佐賀空港なんてヒマの極みなのだから、築城や新田原の分散展開用デュアルベースに好適だと思う。こんなことをいうと、社民党や共産党や新社会党がギャーギャー騒ぐと思うが。
ともあれ、そういう使い方には、グリペンみたいな戦闘機はマッチングが良いと思うのだ。
戦闘機をシステムの一環として考えると、グリペンはスウェーデンの国情に深く根ざして開発されているから、機体だけを他国に持ち込んでも、それがそのまま能書きどおりに機能することはないかもしれない。だが、日本に限らず、自国の周辺だけで戦うことを考えていて、なおかつ有事の基地分散化を考えているような国にとっては、一考の価値はあろう。
グリペンで感銘を受けるのは、スウェーデンが自国の国情と国力を考慮して、「身の丈に合った」戦闘機を作り上げたという点だ。無理をせずに、自国でできる範囲の能力をフルに使って、まがりなりにも国際市場で通用する戦闘機を作ったというのは凄いことだ。
その昔、身の丈に合わない内容の機体やエンジンを幾つも作ってしまった日本も、こういう考え方は見習ってよいのではないか。
グリペンは南アフリカで採用が決まっているが、これは元・宗主国のイギリスがグリペンのセールスに関わっているという事情が影響した可能性が高いので、純粋にグリペンの性能面だけで採用が決まったと考えるのは無理があるかもしれない。
とはいえ、前作のビゲンは海外セールスが皆無だったのだから、たかだか 30 機にも満たない数とはいえ、海外セールスに成功したのは立派なものだ。
その点、複数の国が寄り合い所帯で開発して、それぞれの国の思惑をごちゃ混ぜにした奇怪な戦闘機になってしまったユーロファイターなど、正直な話、実戦配備された暁には使えない代物になっていないかと心配になる。
それに、ユーロファイターは値段も高いし、その割に突出したアドバンテージはないし、よくもまあ、ギリシアもあれを買う気になったものだと思う。
ラファールや F-22 はフランスやアメリカの単独開発だから、自国の要求だけ考えて作ればよいということで、まだしもユーロファイターよりはまとまりが良いという印象を受ける。特に F-22 がずば抜けて世界最強の戦闘機なのは間違いない。
とはいえ、F-22 は高すぎる。値段も突出して世界最強だ。あれを買えるのは、例によってイスラエル・サウジ・日本ぐらいのものだろう。F-22 を撃墜するのにミサイルは要らない。世界が不景気になって、予算難に見舞われればアウトだ。
ラファールだって決して安くないし、ミサイルやエンジンも含めてフランス製品と心中する覚悟が必要だから、買うには度胸が要りそうだ。それが分かっているのかいないのか、ダッソーは今でもミラージュ 2000-5 を売り込んでいる。これとて安くはないが、ラファールよりは安いのだろう。
しかし、ミラージュ 2000 を売り込めばラファールが商機を逃し、ますます値段が高止まりして、結果としてダッソーの首を締めることにならないだろうか。
そういう意味では、ユーロファイターとグリペンの二股をかけている BAe も似たようなものだが、ひょっとすると、BAe はユーロファイターの輸出があまり望めないのを見越して、グリペンで保険をかけたのではないかという気もする。実際、西側製戦闘機のポテンシャル・カスタマーである東欧諸国にしてみれば、ユーロファイターよりグリペンの方が、まだしも買いやすい戦闘機として映るのではないか。
なんだか話が散らかってしまったが、いわゆる「第 4 世代戦闘機」のうち、F-22 のように豪華絢爛な機体がないと困るという国以外にとっては、グリペンのような「身の丈に合った戦闘機」は、なかなか魅力的な選択肢ではないかと思うのだ。
F-15 を 200 機以上抱えて、さらに F-2 の配備を進めている日本では、とてもじゃないが新規の戦闘機購入計画は成り立たない。だが、これから戦闘機のリプレースを行う国、特に NATO に新規加入する東欧諸国にとっては、グリペンは F-16 ともども、いい選択だと思う。
ひょっとすると、今後の戦闘機セールスで、グリペンは台風の目になるかもしれないと思う。皆さんは、どうお考えだろうか ?
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