Opinion : 「似非平和主義者」の欺瞞 (2001/9/24)
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案の定、アメリカが「報復」に向けて着々と動きを進めるにつれて、日本では「報復は報復を生むだけだ」とか「国際機関による解決を」という類の、いわゆる「平和主義者」の主張が目につくようになった。
もちろん、花火を上げずに事が解決するなら、その方がいいに決まっている。理由はどうあれ、血は流さない方がいい。
ただし、だからといってテロリストを放置しておいていいとは思わないので、個人的にはアメリカが軍事力の展開を見せつけることでタリバンを恫喝し、結果としてオサマ・ビン・ラディンの身柄引き渡しに持っていくことができればベストだと考えている。
前にも書いたが、ビン・ラディンを殺してしまってはまずい。生け捕りにして裁判にかけ、法的手続きに則って断罪しなければならない。また、資金源を断つ、幹部を生け捕りにする、といった地道な作戦を継続し、組織を壊滅させることも必要だ。
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ただ、日本における「平和主義者」の言い分は、私に言わせれば「似非平和主義者」に過ぎない。その理由を述べよう。
まず、「報復が報復を生む」という主張については、反対しない。そういう例は、過去の歴史にもたくさんある。問題は、その主張をぶつける相手がアメリカだけで、他国が相手のときにこうした主張が聞かれないという点にある。
そもそも、テロリストというのは以前にも書いた通り、「話し合いなんて面倒くさいから殺っちまえ」という連中であり、そういう連中を相手に「話し合いによる解決」を希求するという考え方そのものが、チクロかサッカリンのように甘い考え方だ。
話して分かるような相手なら、最初からテロなど起こしはしない。
中東系のテロ事件では、お約束のように「パレスチナ人を弾圧するイスラエルが悪い、そのイスラエルを後援しているアメリカも悪い」という論法が出てくるが、そのパレスチナ人とて、「報復には報復を」という対処をしているのは同じで、私にいわせれば、イスラエル側もパレスチナ側も、五十歩百歩である。
しかも、領土獲得とか政治犯の釈放といった、何か明確な要求を掲げてテロを起こすテロリストと違い、イスラム原理主義者の起こすテロは単なる対米攻撃が目標であり、アメリカという国家そのものが地上から無くならない限り、彼らもテロを止めることはないだろう。「イスラム社会に浸透するアメリカ」や「アメリカに追従するイスラム国家」の存在そのものが、イスラム原理主義者にとっては「悪」だからだ。
つまり、イスラム原理主義者系テロリストにとって、パレスチナ問題というのはテロを正当化するための言い訳に過ぎないのだ。イラクがクウェート侵攻とパレスチナ問題を「リンケージ」したのと同じである。
そういう連中が引き起こしたテロを批判するのにパレスチナ問題を持ち出すのは、あちらさんの思惑にまんまと乗せられているだけである。
そういうわけで、なにも「力の解決」を求めているのはアメリカだけではないということを、ここで確認しておきたい。なのに、自称「平和主義者」はアメリカの軍事行動だけを非難する。これは明らかに筋が通らない。
名指しで書くならば、アメリカの軍事行動大反対、それに手を貸す自衛隊の派遣にも大反対という社民党や共産党は、パレスチナ側の「報復行動」やイスラム原理主義者のテロについて、どういう見解を持っているのだろうか。
たとえば、共産党は過去に「アメリカの核兵器と、ソ連の防衛的な核兵器をひとからげにして反対運動をするべきではない」という趣旨の、超たわけたことをいっていた前科がある。社民党も、前身の社会党時代に「ソ連の核兵器は正しい核兵器」という発言があったような記憶がある。そんな連中が掲げる「反戦・平和」など、誰が信用するものか。
要約すると、私がいう「似非平和主義者」とは、相手によって「平和主義」が出てきたり出てこなかったりするという、はなはだ御都合主義的な体質を持った「平和主義者」のことである。
アメリカの軍事行動にだけ反対する「平和主義」なんてものは、「平和主義」とはいわない。それは単なる「反米主義」であって、アメリカに対するテロ攻撃を止めないイスラム原理主義者と同じ穴のムジナである。
真に人類の相互理解と平和共存を希求するのであれば、核兵器に「正しい核兵器」も「間違った核兵器」もないし、報復行動に正しいも間違いもない。力に訴える解決は、すべて等しく反対されるべきものだ。そうした、筋を通した主張ができる人ならば、私は「平和主義者」として認めるし、議論のテーブルにもつく。
しかし、「アメリカの軍事行動だけ反対」という「平和主義に名を借りた反米活動家」は、議論の対象にならないし、そもそも信頼するに値しない。そういう連中が主張する「平和」は、まやかしの平和である。
「似非平和主義者」は、多分、かつてのソヴィエト連邦、あるいは今の北朝鮮のような体制のことを「平和」というのだろう。そんなにああいう体制が好きなら、日本から亡命して移住すればよいではないか。
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ところで、イスラム原理主義者がテロを正当化する免罪符に使っているパレスチナ問題だが、イスラエル側とパレスチナ側の双方が、相手との共存という考え方を受け入れない限り、金輪際解決することはないと思う。
双方がゼロサム・ゲームを振りかざし、自分たちがすべてを手に入れるべきだといっているのでは、相手が納得するはずがなく、解決のチャンスは失われる。多分、今の調子でやっていたら、百万年経っても撃ち合いを続けているのではなかろうか。
だから、とにかく双方で同時に撃ち合いを止めること。それから、特にイスラエルに対しては、戦車や攻撃ヘリまで投入しての、過剰な報復行動を慎めないものかと申し上げたい。
相手がどこかの国の正規軍ならともかく、民間人相手にそこまでするのでは、結果としてパレスチナ側に対し、テロやその他の暴力行為を起こす理由をくれてやるようなものなのだから。
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