Opinion : "迷惑メール問題" を考える (2001/11/5)
 

たまには、防衛問題から離れてみよう。

というわけで取り上げるのが、私も相当アタマに来ている「迷惑メール問題」である。携帯電話をターゲットにしたものばかりが話題になるが、歴史が長い PC 向けの迷惑メールだって、相当に深刻な問題だ。

もう潰してしまったものだから白状するが、私が以前に使用していた So-net のアカウントを潰したのも、実は迷惑メールがゾロゾロやってくるのにうんざりしたからなのだ。(しかも、So-net のメール機能にはフィルタの類が全然ないので、特定メールだけの受信拒否ができない)

最近、「スパム禁止法」が話題になっているかと思ったら、東京都も「迷惑メール禁止条例」なるものを俎上に載せているそうだ。だが、ネットワークを介してどこからともなくやってくる電子メールを取り締まるのに、東京都だけが条例を作ったところで、効果はまったく望めない。

送信者は、相手が携帯電話なら総当り式にメール アドレスを生成するし、相手が PC ならメール アドレスのリストを買い込んで、同報メール送信ソフトで一気に大量送信してしまう。だいたい、この「メールアドレスの販売」と「同報メール送信ソフト」が、問題の一因なのだ。具体的なソフトの名前を出すのは差し控えるが。


まずは、「迷惑メール」といわれているものの定義を明確にしておきたい。
自分が受け取ったメールを「迷惑」と感じる条件としては、以下のようなものが挙げられるだろう。

  • 自分が希望していないのに、勝手にメールを送りつけられる
  • 内容そのものが不愉快である
  • そういうメールを大量に受け取ることで、時間的・経済的損失が生じる

希望していないのにやってくるメールとしては、見知らぬ人からのコンタクトというものもある。しかし、それと「迷惑メール」とは、明らかに内容が異なる。そこで問題になるのが、後者の「不愉快な内容」ということになる。
そこで、手元に蓄積されたあまたの迷惑メールを対象にして内容を分類すると、こんな感じになる。

  • 不正自動架電やダイヤル Q2 接続を誘う目的の、エロサイトの宣伝
  • マルチ商法の勧誘や、各種の詐欺
  • 単なる宣伝

いずれをとっても、何の目的もないということはあり得ない。一見したところでは送信者と直接関係のなさそうな不正自動架電にしても、ダイヤル先の国から送信者に対してコミッションが入るから、なんとかして電話をかけさせて、コミッションを稼ごうとしているのだ。

意外と御存知ない方が多いようなので解説すると、国によっては国際電話の発信量と着信量に差があるため、着信量を増やそうとして、電話を着信させてくれた人にコミッションを出している国がある。だから、不正自動架電の対象になる国は、あまり聞いたこともないような国が多いのだ。たとえば、モルドバ共和国とか。

また、ダイヤル Q2 やマルチ商法については、いまさら解説するまでもないだろう。特にマルチ商法は、とにかく多数の人を傘下に引き込まないとコミッションが稼げないから、迷惑メールをばら撒いて勧誘に励むわけだ。どれだけ実質的な効果があるのか疑問だが。

ちょっと脱線するが、マルチ商法といえば、どうして「こんなの売れるかよ」といいたくなるようなチンケな商品を売ってる奴が多いんだろう。
エロサイトなら、まだ人間の根本的欲求に訴えている分だけ、ひっかかる奴の心情も理解できなくもない (苦笑)。だが、マルチで儲かるわけがないというのは人類普遍の原理だし、売ってる商品もチンケな商品ばかり。それで儲かると思う方が、どうかしている。

閑話休題。
結局、「エロサイトの宣伝」も「マルチ商法」も「単なる宣伝」も、そしていうまでもなく「出会い系サイト」も、みんな送信者にとっては金儲けが目当てなのだ。まったく、カネの力というのは恐ろしい。

また、「単なる宣伝」の場合、他者からの宣伝依頼を受けてばら撒かれる、いわば「迷惑メール広告」も少なくない。それを商売にしている会社もいろいろある。
依頼者側はひょっとすると、迷惑メールの何たるかをよく知らずに「メールで宣伝すれば安上がり♪」という文句を鵜呑みにして宣伝を依頼するのかもしれないが、迷惑メール業者に宣伝を依頼するのは、一種の共犯である。迷惑メール業者と一緒に晒し者にされても、文句はいえまい。


とどのつまり、根本的にはカネが絡んだ話だから、たとえ法律を作ろうが条例を作ろうが、メール送信行為そのものを規制しても、何の抑止力にもならないと思う。だいたい、今のインターネットのシステムでは、送信者が身分を偽ったり隠したりする手段はいろいろある。

たとえば、「ライブドア」や「TRYNET」に代表される無料プロバイダがいい例だ。無料プロバイダは簡単にサービスを申し込めるし、おそらくはサービスを申し込んだ人物の個人情報が本物かどうか、なんていう確認はしていないだろう。そんなことをすれば、会社のオペレーション・コストが上がってしまう。
反面、利用する側にすれば、コストはかからないし身元は秘匿できるし、おまけにまずいことになったら簡単に捨てられるのだからいいことずくめだ。

かくして、「ライブドア」や「TRYNET」からは大量の迷惑メールが殺到することになる。特に身元隠蔽に長けたエロサイト宣伝系のメールは、「ライブドア」と「TRYNET」から送られたものが多い。(それに比べると、マルチやってる奴は全般的に身元秘匿が甘いから、ときどき晒し者にされる馬鹿が出る)

また、携帯電話に送られるメールの場合、ヘッダの解析ができない。PC ならヘッダを調べて送信者に迫る手がかりが得られることもあるが、携帯電話ではできない相談だ。

こういう事情があるから、メール送信行為そのものを取り締まるだけでは迷惑メールはなくならない。というか、そもそも取り締まりは不可能だ。
むしろ、迷惑メール送信によって儲ける手段というのは限られているのだから、それを根絶するべきではなかろうか。それで迷惑メールが壊滅するとは思えないが、多少の効果はあるだろう。

たとえば、身元を偽って利用できる無料プロバイダをどうにかするとか、出会い系サイトやマルチ商法、ネズミ講の規制を強化するとか、国際電話の料金精算に絡むコミッション支払いを止めさせるとか。そういう「臭いニオイを元から絶つ」施策を講じなければ、迷惑メールは減らないだろう。

迷惑メールが「人類の敵」だというのは、私が前々からいっていることだが、たまたま自分のところに「出会い系サイト」の宣伝が殺到したからといって怒り出す官房長官も、東京都だけで条例を作ろうとする動きも、なんか「木を見て森を見ていない」という気がしてならないのだ。もう少し、根っこの部分から手を打たないと、状況の改善は望めないハズだ。


ところで、NTT ドコモが打ち出した「一部のメール受信をタダにする」というのは、まるで根本的解決になっていない。利用者が「迷惑メールのパケ代で儲けやがって」といって怒るので (なにしろ事実なのだから)、ガス抜きのために「無料」という言葉を打ち出しただけではなかろうか。
まあ、「メール受信が無料」といっている J-PHONE だって、その実「192 文字までは無料」というのが真相のようだから、似たようなものだ。

そもそも、「電話番号ではないアドレスを使える」といっても、たいていの人は「名前プラス数字」というパターンが多いのでは ? それなら、使用頻度の高い日本人の名前の後ろに数字を適当にくっつけることで、ある程度は確実に送信できてしまうだろう。なにも、ありとあらゆる文字の組み合わせを試す必要はないのだ。

そう考えると「迷惑メール対策には好きなメールアドレスの設定を」という宣伝も、なんだかダマカシのように思える。好きなアドレスを設定できるといっても、実際には多くの人は自分の名前を流用するだろうから、結果としてスパマーにクリブを与えているようなものなのだ。
(クリブ : カンニング ペーパーの意。第二次大戦中にイギリスで、ドイツのエニグマ暗号を解読するために活用した内容が推測しやすい定型文などのことを、こう呼んだ)

結局のところ、迷惑メールに対する根本的な対策は、メールを使わないことなのかもしれない。ふう。

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