Opinion : これは 10 年戦争だ ! (2001/11/12)
 

米英軍による対アフガン攻撃が始まって、1 ヶ月ほどが経過した。案の定、新聞や TV では「戦争の泥沼化」だの「ベトナム化」だのという見出しが躍っている。いわんこっちゃない。

だが、いったい何をもって「泥沼化」だの「ベトナム化」だのという言葉が出てくるのだろうか ?

湾岸戦争の地上戦みたいに 100 時間でカタがつかなかったから ? 爆撃の成果が上がっているように見えないから ? 湾岸戦争の緒戦のように、"精密爆撃" の映像が公表されず、タリバンが宣伝する "誤爆" の話ばかりが聞こえてくるから ?

どうも、昨今のマスコミ報道を見ていると、話が短絡的過ぎるように思えてならないのだ。今週は、その辺について考えてみよう。


そもそも、基本に立ち返って考えると、今回の戦争の目的は何だろうか。

少なくとも、アフガニスタンという国家を地図から抹殺するのが目的、というわけではなかろう。もっとも、今のアフガニスタンは「国家」の体をなしているかどうか疑問だが、たまたまラディンがアフガニスタンに匿われているから、アフガニスタンが爆撃目標にされたというのが正しいのではないか。アフガニスタンの一般市民にとっては、まことに迷惑な話だ。

アメリカが地上軍を大々的に投入しない理由も、その辺にあるハズだ。
そもそも、アメリカは自分が先頭に立ってタリバン軍を駆逐するつもりはないように思える。それは、外国が直接介入しても紛糾を招くだけだという判断 (アメリカはベトナムで懲りている) があるはずで、それよりむしろ、アフガニスタン国内の反タリバン勢力を援助するような形で軍事行動を行う方が理に適っている。

だから、アメリカは爆撃を中心にした活動を行っていて、実際のタリバン追い出しは北部同盟などにやらせようとしているのではないか。
もっとも、湾岸戦争後にイラク国内の反体制グループを糾合しようとして失敗した前例もあるし、北部同盟などがどれだけアテになるか分からないが、少なくとも米軍が自ら介入するよりはマシな選択といえる。

ただ、早いところラディンを捕まえることができれば、それに越したことはない。とはいえ、そのために機甲師団や騎兵師団を投入するのは不正解で、それこそ特殊部隊の仕事だ。
特殊部隊がアフガン国内に潜入して、うまいことラディンの居所を突き止めることができれば、レンジャー部隊か何かで急襲すればよろしい。残念ながら、湾岸戦争のように戦車戦をやるような相手と場所ではない。

ラディンも馬鹿だなと思ったのは、せっかくタリバンが「証拠がなければ身柄は渡さない」と庇ってくれたのに、自分で「犯行声明」まがいの発言をしてしまったことだ。あれでは、どうぞ自分をひっとらえてください、と身柄を差し出すようなものではないか。

今回の爆撃によって多少なりともタリバンが弱体化し、反タリバン勢力主導で新体制を作ることができれば、アメリカにとっては目標の一つが達成されたのではないかと考えられる。それは、ラディンにとっては庇護者を失うことになるからだ。

また、爆撃を受けた一般市民が「タリバンがラディンを匿ってるから、こういうことになるんだ」といって反タリバン・反ラディン感情を持てば、それも目的達成の一助になる。

結果としてタリバン体制が崩壊するか、そこまでいかなくてもタリバンが片隅に追い詰められて非合法化されてしまえば、ラディンにとっては居場所がなくなることを意味する。つまり、一種のいぶり出しだ。そうなれば、結果としてラディンの身柄確保がやりやすくなるだろう。ラディン健康不安説なんてものも出ているようだし。

と、アメリカ政府はこういうシナリオで動いているのではないかと思うのだが、これのどこが「ベトナム化」なのだろうか。単に戦争が長引きそうだからベトナム化だというのは、あまりにも単純な見方だと思うのだ。
そもそも、湾岸戦争の地上戦があまりにも鮮やかに決着した (ように見えた) からといって、今後は何でもあのペースで進むと考える方が間違っている。

フレッド・フランクス大将が「熱砂の進軍」で書いているように、湾岸戦争だって「迅速ではあったが、容易な戦いではなかった」ということは、今ではしっかり判明している。たまたま、イラクの兵隊が闇の中で M1 戦車にわらわらとよじ登ろうとした映像が、TV で放送されなかっただけの話だ。

そんなわけで、「ベトナム化」だの何だのといういい加減な見出しを付けている新聞や雑誌、TV の関係者に対しては、ベトナム戦争や湾岸戦争の内容を調べて上でそういっておるのか、と問い質したい。あれこれいい加減で身勝手でピンボケな論評をする前に、少しは過去の戦争について勉強しろといいたいのだ。


そもそも、対テロ戦争というのは、相手が狂信者なだけに、時間がかかるものだ。イギリスが北アイルランドを平和な状態に持っていくまでに、何年かけたか考えてみればよい。
今回は、相手がさらに大規模で凶悪なことを考えれば (さすがの IRA も、飛行機を乗っ取って突っ込ませるなんていう、気違いじみたことはしていないのだ)、北アイルランドの和平よりも、もっと時間がかかっても不思議ではない。

しかも、対テロ作戦は隠密作戦が多くなるから、表立って発表できないことも多いだろう。発表できないということと、作戦に進展があるかどうかというのは、こと特殊作戦についていえばあまり因果関係はない。

これで一番困るのは、とにかく「画」がないことには始まらない TV 関係者かもしれない。とにかく、特殊部隊主体の作戦というのは、TV 向きじゃないのだ。
とはいうものの、だからといって、成功の発表がないから "ベトナム化" だなどといわれたのでは、作戦当事者はたまったものではなかろう。そんな間抜けな "報道" は、いったい誰の味方かといいたくもなる。

基本的に「平和 > 戦争」という超単純な公式の中で動いていて、戦争に関することは何でも重箱の隅をつついて悪くいわなければならないと思っている、特に日本のマスコミ関係者や一部政党関係者にとっては、アメリカがどういう狙いで作戦を展開しているのか、なんてことは、実はどうでもいいのかもしれない。

だが、そんな最初から論点のずれた状態で、あれこれ勝手なことをいうのは、いかがなものかと思う。これは 10 年戦争なのだ。湾岸戦争のように簡単にケリがつくはずがない。長くて地味で泥臭くて、しかも目に見えない戦いが続くものなのではないのか。北アイルランドで SAS が何をやっていたかなんてことが、いちいち報道されてたっけか ?

本当にテロはよくない、テロリストは根絶すべし、と思っているなら、そのことをちゃんと理解して、テロリストの思う壺にはまらないようにするのが、我々一般市民が取るべき道なのではなかろうか。ベトナム化だなんだと囃す論評を見ていると、実はこいつら、タリバンの回し者なんじゃないかと勘繰りたくもなる。

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