Opinion : 日米政治動向二題 (2002/2/4)
 

最近、ブッシュ政権が北朝鮮・イラン・イラクを「悪の枢軸」呼ばわりして、ちょっとした騒動になっているのは、すでに御存知の通りだ。

さらに、9/11 のテロ事件をきっかけにして、国防予算の大幅増額も決まった。少し前の JDW に報じられていたが、これまでゴタゴタしていた大型プロジェクトに対して、次々と「満額回答」かそれに近いものが出ているという大盤振る舞いぶりだ。

なんだか、最近のブッシュ政権を見ていると、20 年前のレーガン政権と似たものを感じるのは気のせいだろうか。


よほど若い方でなければ御存知かと思うが、かつてレーガン大統領はソ聯のことを「悪の帝国」呼ばわりし、平時としては未曾有の大軍拡を断行した。おかげでアメリカの対外債務はかなり増えたらしいが、それに対抗しようとしてソ聯はついに自爆してしまったのだから、一発の弾も撃たずに「悪の帝国」を崩壊させたという点で、レーガン軍拡は (結果論だが) 正解だったという見方もできる。

それに、今の米軍の主要装備の大半はレーガン軍拡時代に調達されたものだから、レーガン軍拡がなかったら、いまごろ米軍は装備の老朽化に泣いていた可能性が高い。そういう意味でも、レーガン政権の遺産は多大なものがあったといえるのではないか。

では、今回のブッシュ大軍拡と対テロ強硬路線はどうだろう。
相手が国家ではなくてテロリストだから、ソ聯が崩壊したのと同じように話が進むとは思えないが、少なくとも「9/11」をきっかけにして、世界的な「対テロ包囲網」を構築する機運を作ったのは間違いない。

ただ、アメリカが突出して武力行使に走ると、(すでに兆候が出ているように) 同盟国からの反発を買うのは必至といえる。アメリカとて、経済減速の折から、独自に好き勝手にやるほどの馬力はないだろうから、時間をかけて少しずつテロリストの力を削いでいくことにならざるを得ないハズだ。

ただ、今回のアメリカの軍拡では、弾道ミサイル防衛や RMA といった、これまでにない分野の増強に力が入ることになるので、純技術的観点から見て、注目すべきものがあるのは間違いない。ここで開発された要素技術やドクトリンが、21 世紀前半のアメリカの動きを左右するものになるハズだから、動向を冷静にウォッチしてみたいと思う。


話は変わって、日本国内の話題をひとつ。

最近、ある報道機関の世論調査で、「日本にできる国際貢献策は ?」という設問に対して、もっとも多かった回答が「テロ対策」だったのだそうだ。9/11 事件の影響だろうか。

もっとも、そこでは「テロ対策」という回答だけで、そのために具体的に何をするかというところまでは突っ込んでいなかったようだ。今度はぜひ、「日本にできるテロ対策は ?」という質問を期待したいものだ。多数の珍答・奇答を目にすることができるに違いない。

だいたい、9/11 以前に一般市民を相手にした大規模なテロ事件を経験していた国というのは、サミットに参加するような国の中でもそう多くなかったハズだ。その数少ない事例の一つが「地下鉄サリン事件」であることはいうまでもない。

あの事件の発生当初、私はてっきり某国の特務機関の仕業かと勘違いしたが、実は犯人が日本国内に住む日本人だったというのには驚かされた。
もっとも、公安当局は以前からオウムが怪しいと思っていたに違いない。事件後の迅速な強制捜査ぶりが、それを裏付けている。

その辺のレスポンスの速さが、「9/11」後にたちまち「アルカイダの仕業」と断定して報復行動に出たアメリカ政府と、なんとも奇妙に符合していると感じるのは、私だけだろうか ?
実は、CIA や NSA は以前からアルカイダのテロリストぶりを承知していて、鉄槌を下すチャンスを窺っていたのだとしても、まるで不思議はないと思う。といっても、あれほどのことを仕出かすとは思っていなかったのだろうが。

で、その「未曾有のテロ事件」を起こしたオウム真理教 (アレフと改称) に対して、連中を潰す絶好のチャンスだった破防法適用に待ったをかけたのも、同じ日本人の仕業だ。「冷戦崩壊で世界平和」という迷信を信じ、身内のテロリストを野放しにしているのに「テロ対策が最重要」とまでいうか。

だいたい、「テロ対策」と回答した人達が具体策としてどんなことを考えているのか、そこが問題だ。
私が常々いっているように、テロリストというのは「話し合いなんて面倒くさいから叩っ斬れ !」という連中である。だが、自称平和主義者の平均的日本人にかかると、「同じ人間だし、話せば分かるはずだ」ぐらいのことをいい出しても不思議はない。

ついでに書けば、「拉致疑惑」だの「不審船」だのに、これまで長い間「大甘」な対応しか取ってこなかったくせに、いきなり豹変して「テロ対策」といわれても、どうもピンと来ない。少なくとも、具体的に何を考えているのか、そこまで聞かせてもらわないことには。


私自身も口にすることだが、「アメリカの戦争行為を非難するなら、テロリストの方はどうなんだ」という主張がある。その辺は、アメリカ非難の論陣を張る諸氏も気にしているようで、「テロリストの野蛮な行為は許されないが、しかし」という枕詞をつけてアメリカ非難をするのがお約束になっているようだ。

とはいっても、その「テロリストの野蛮な行為」に対して、具体的、かつ実効性のある対策は何かということになると、いきなりトーンダウンしてしまうケースが多いようにも見受けられる。

こんな調子だから、「テロ対策が必要」といっておきながら、実際に何か対策を考える段になって「あれは駄目、これも駄目」と、いわゆる各論反対状態になってしまうのがオチではないかと思えてならない。
身内のテロリストに断固たる態度を取れないのに、他国のテロリストに対策するといっても、信用されないのではないか。まずは、自分の足元をちゃんと固めることが必要だと思う。

Contents
HOME
Works
Diary
PC Diary
Defence News
Opinion
Ski
About


| 記事一覧に戻る |