Opinion : 税制の「超」単純化を ! (2002/3/11)
 

時節柄 (?)、今週も税金ネタで。

「地方で徴税して、国に上納」というのは、私がいつも主張していることだ。「政府が地方にカネを落とす」という構図があるから、それに群がって利権の甘い汁を吸おうとする鈴木宗男氏のような輩が出てくる。

…というか、「利益誘導型政治」の原点は、こうしたカネの流れにある。地方で徴税して国に一定割合を上納するようにすれば、こういう問題は生じない。自分で集めたものを自分で使うのだから、自分の身の丈に合った支出しかできなくなる。

それとは別に、「公開質問状」で指摘した件の中で取り上げたいのが、「税制の単純化」だ。特に、個人所得税について、この問題は大きい。


証券や自動車に関するものがいい例だが、いろいろな名目でいろいろな税金がかかり、それがさらに国税と地方税に分けられているというのは、まったくもって複雑怪奇というほかない。

しかも、個人所得税についていえば、ストックオプションをめぐる騒動の根本原因でもある「所得区分」のおかげで、「所得区分の解釈」は問題になるし、所得によって源泉徴収されたりされなかったり、金額によって源泉徴収税額が増えたり増えなかったり、何らかの控除があったりなかったり、損失を通算できたりできなかったり、という調子なのだから、混乱しない方がどうかしている。

以前、ある税理士の方とストックオプションの件でメールをやり取りした際にも、「とにかく、個人単位ですべての収入や損失を積み上げて、全部ひっくるめて総合課税するしかないだろう」という話になった。個別の損得ではなく、amount で計算して、単純に税率を適用する。ややこしい所得区分も控除制度も全部やめる。

どうしてそんな結論になったかといえば、報酬制度や企業活動の多様化に税制がついて行けていないから、いちいち個別の判断が必要になって、そこでゴタゴタが生じるという、いわば「制度疲労」を起こしているのが明白だからだ。

あと、納税者意識を涵養する立場から、サラリーマンも含めてすべての人が確定申告をするべきだ。それで税務署の仕事が増えるって ? いや、税制を超単純化すれば、その分だけ仕事が減るから相殺できるハズだ。問題ない。

それに、制度を単純にすれば、その分だけ電子申告がやりやすくなる。制度がややこしいと、いろいろと判断を仰いだり専門家の助言を仰がないといけないケースが増えるが、制度が単純なら、四則演算さえできれば誰でも税金の申告ができるようになる。(といい切ってしまうのも問題か)

だいたい、個人的経験からいわせてもらえば、「税務署員の指導」には何の拘束力もなく、後からそれを簡単に当局は反故にできるということが分かってしまったのだから、税務署員に指導を仰がなければいけないようでは話にならない。どうせ法的拘束力のない、アテにならない指導なら、そんなものは必要ないようにしなければいけない。
それに、制度が単純になれば、その分だけ「解釈」という形の「裁量」が入り込みにくくなるから、透明性・公平性が増すというおまけも付く。

とはいえ、収入の急増・急減で税負担にゆがみが出ても困るから、その辺については「平均課税」みたいなソフトランディング措置を入れる必要はあるかもしれない。
なんであれ、制度の中に「例外」を発生させないことが必要だ。「例外」を作れば、そこに付け込もうとする輩が必ず出てくるものだから。


正直な話、現行のような複雑怪奇な税制ができてしまったのは、特定の業界に配慮した控除制度や、戦後の特定業界優遇といった、過去の歴史の残滓が積み重ねられてきたことに最大の原因があるハズだ。何でも「戦後政治の総決算」といえば済む問題ではないが、太平洋戦争直後と現在では国の経済構造が変わっているのに、税制が変わらないというのはおかしい。

「NIKKEI NET」に連載中の「税をただす」の中で、アダム・スミスが打ち出した「租税 4 原則」の 2 番目に「明確の原則」があると指摘されている。

だが、日本の現状は、「不明確の原則」というほかない。だから、私はその点を質すべく、法廷に持ち込んで白黒はっきりさせようと「ストックオプション税務訴訟」の神輿を担ぐ腹を決めたのだ。(よほど筋の通った回答があれば再考の余地はあるが、よもやそんなことはあるまい)

どうせ「税制改革」というなら、あらゆる税金のかけ方を見直して制度をシンプルにすること、その中で先週指摘したような「努力する者は報われる」というインセンティブを取り入れること、そして税金の納入先を単純化して「地方徴税・国に上納」に流れを一本化すること。ここまでやらなければ嘘だと思う。

その過程で、一時的に負担が増えたり、あるいは減ったりする人はいるだろうが、あらゆる人の負担を変えずに制度を変えるというのは、所詮できない相談。むしろ、制度の単純化による恩恵という長期的利益を優先すべきではないだろうか。

「単純化の過程で税収が減っても困る」と財務省はいうかも知れないが、それならそれで、多額納税者に何かインセンティブを用意すればよろしい。企業が、利益に貢献した社員に対してインセンティブを提示するのと同じで、国や地方の財政に貢献した人にインセンティブを出すのは結構なことだと思う。

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