Opinion : 「費用対効果」が大事 (2002/5/27)
 

費用対効果。英語では cost performance。発揮される性能や効果を費用で割って、投じた費用当たりの単価を求める指標ということになる。個人的に、モノを買うときには、もっとも重視している指標だったりする。

たとえば、Intel が新しい CPU を出したとする。最近でも、FSB 533MHz の Pentium 4 が出た。しかし、私はすぐに初物には手を出さないことが多い。理由は簡単で、値段が高く、費用対効果が悪すぎるからだ。

もちろん、自作系ライターなら事情は違うが、ソフトウェア関連の記事を主体としている私の場合、常に最新 CPU を使う理由はない。だから、いくら PC パーツの購入費用を経費で落とすといっても、いきなり初物に手を出すことはしない。ある程度、値段がこなれて、そこそこのシステム価格になったところで初めて買う。
どうしても仕事で必要な場合は別にして、たいていは、このパターンだ。


とはいっても、値段は度外視して、最新・最強のものを使わなければならない商売というのも存在するのは事実だ。たとえば、レーシングカーが典型例だと思う。かつては兵器の世界も同様だったと思うが、この業界は値段が上がりすぎた反動で、最近は費用対効果に五月蝿いようだ。いい傾向だと思う。

ただし、費用対効果というのは相対的な指標だから、単にコストがかからなければいいというものでもないというところが難しい。
たとえば、費用がかかっても、それによって得られる性能アップが画期的なものであれば、費用対効果は優れているといえる。個人的には、F-22A ラプターがこのケースに該当すると思う。

逆に、性能向上がそれほどでなくても、費用がかからなければ、この場合も費用対効果は優れている。少ない効果でも目的が達成できるのなら、これもひとつの考え方だ。最近、古い戦闘機や戦車、軍艦をアップグレードして食い延ばすケースが多いが、こうしたケースの大半は、このパターンだろう。

もちろん、少ない費用で画期的な性能アップが得られれば最高だが、そんなお目出度いケースは、あまり多くないだろう。

これらはいいとしても、問題は「費用ばかりかかって、効果が上がらない」というケースだろう。これは最悪だ。

以前、高速貨物船の「テクノスーパーライナー (TSL)」に批判的な拙稿をしたためたことがあったが、その理由は突き詰めていうと「費用対効果が悪すぎる」というものだった。この考えは今でも変わらない。

TSL の場合、船価もランニングコストも猛烈に増加する割には効果が薄い、ということを書いた。ディーゼル推進の大型フェリーが 30kt で突っ走れるのに、そこからたかだか 10kt やそこらの速度向上のためにガスタービン推進の馬鹿でかい船を造っても、割が合うはずがない。対潜護衛艦がガスタービン推進にするのとは事情が違う。

また、「田舎の高速道路」や「整備新幹線」の場合、費用は同じでも需要の少なさが原因となって効果が下がるから、これも費用対効果が下がることになる。よって、投下した資本の回収に時間がかかる過ぎる、あるいは回収に失敗することになり、いい結果にはならない。

「技術偏重主義者」「スペック偏重主義者」は往々にして、「効果」の部分にばかり着目するのだが、何を作るにしてもカネがかかるのだから、現実問題としては、費用対効果を無視することはできない。そこのところの視点が欠落した意見が、意外なほどに幅を利かせていないだろうか ?

それでも、趣味の道具として買うものなら、本人が破産しない限りは好きにすればいいと思う。趣味なら本人が満足できればいいのだから、費用対効果もヘッタクレもない。フェラーリが好きならフェラーリを買えばいいし、自前のジャンボ・ジェットを飛ばしたければ、そうすればいい (そんな奴はいないよ)。

だが、国が税金で何かするとか、企業が新たに投資を行うという場合は事情が違う。税金の元は国民の血税だし、企業の投資だって元をたどれば顧客や投資家のカネだ。それを、費用対効果を無視してジャブジャブ使ったところで、褒められるハズがない。
たとえ、カネ余りの時期であっても駄目だ。なぜなら、それは納税者や顧客、投資家に対する、一種の背信行為だからだ。


私がよくいうように、「技術的に優れた製品 = 優れた商品」とは限らない。技術的に優れていても、イニシャルコストやランニングコストがかかりすぎれば、結果として長所をコストが押し潰してしまう。それを防ぐには、「費用対効果に優れた製品」であることも、また必要ではないか。

比較的 (他国と比べた相対的な意味で) 経済的に余裕がある米空軍が、最強を求めて F-22 を買うのは分かる。しかし、経済的に余裕のない国が F-22 を買うのは自爆行為だ。かつての日本の八八艦隊と同じで、敵に負ける前に経済的に国が潰れてしまう。それでは、何のための軍隊だか分からない。

同じことが、個人が購入するさまざまな商品、あるいは公共事業や兵器調達、企業の投資活動についてもいえるハズだ。どんなに優れた効果が得られる商品や装備、投資であっても、そのためにカネがかかり過ぎたのでは、リターンを得る前に所要経費で屋台骨が怪しくなってしまう。

そのような視点を忘れて、「スペック」とか「効果」の部分だけを基準にして物事を論じるのは、片手落ちというものではないだろうか。

Contents
HOME
Works
Diary
PC Diary
Defence News
Opinion
Ski
About


| 記事一覧に戻る |