Opinion : 「クールダウン」や「慣らし」の必要性 (2002/7/29)
 

スバルのインプレッサ WRX (先代) に乗っている友人がいる。何度か同乗させてもらったことがあるが、自宅に戻ると、しばらくアイドリングしてからエンジンを止めていたのが印象に残る。もちろん、ターボの焼き付きを防ぐためだ。
自分のクルマは NA だから、そんな気遣いはない。放っておけば、勝手にクールダウンしてしまう。

ハイチューンのターボ車は面倒だなあと思っていたら、クールダウンが必要なのはターボ車だけの話ではなかったらしい。JDW 誌によると、アフガニスタンから帰国するカナダ軍部隊は、まずグアム島に移動して休暇を過ごしてから、カナダに戻るのだという。

その記事の説明では、強いストレスにさらされる戦場から、いきなり平和な環境に戻すのではなく、いったん「クールダウン」してから故郷に帰り、しかもその後は勤務を平常より軽くした状態にしてから、通常勤務に戻すのだそうだ。

なんでも、第二次世界大戦の時には船便で移動していたため、海外に出征した兵士は何日もかけて船便で帰国する間に「クールダウン」ができていたが、飛行機で移動すると「クールダウン」の時間が取れないため、代わりに強制休暇を取らせるのだそうだ。


このニュースを読んで「へえー」と感心していたら、今度はアメリカのフォート・ブラッグで、アフガン帰還兵が家族を殺害してしまう事件が相次いでいるというニュースが入って来た。

いうまでもなく、フォート・ブラッグといえば米陸軍特殊作戦部隊の中心地、第 82 空挺師団やデルタ・フォースが駐留している。どちらもアフガニスタンに多くの人員を送り込んでいたはずだ。

しかも、通常より厳しい環境にさらされるであろう特殊部隊兵士は、ストレスも人一倍のはず。米軍は実情調査と対策に乗り出したというのだが、実は、隣のカナダ軍の方が先手を打っていたわけだ。
国のために生命を危険にさらした兵士も大変だが、それを支えていた家族も大変だったはず。それが、無事に帰国した家族の手で殺されたとあっては、たまったものではない。この調子では士気にも関わるし、早急な対策を望みたいものだ。

フォート・ブラッグの一件が、カナダ軍が気配りをしていた「クールダウン」の件と同じ原因なのかどうかは分からないが、その可能性は高いと思う。ターボ車のタービンと同じで、それまで全開で回っていたものがいきなりストップすると、環境の激変で変調をきたしてしまうのだろうか。


戦場と日常生活、というのはあまりにも極端な対比だが、よく考えたら、人間誰しも、周囲の環境の変化は多かれ少なかれ、ストレスや心理的負担の原因になりがちだ。たとえば、転職や転勤、転校、進学、引っ越しなどが該当する。
ひょっとすると「結婚」や「離婚」も含まれるのかもしれないが、これはやったことがないので分からない。経験者のコメント求む (苦笑)

よく考えたら、自分も転職を何度かやっている。直近では「会社員 → 自由業」という転職をやっているが、これもよく考えたら、相当な環境の変化だ。
なにしろ、「明日から会社に行かなくていい」という生活で、いきなり自宅にフルタイムでいることになってしまう。「給料日」とか「ボーナス」という単語は消滅したし、最近では「週末」や「祝日」が、よく分からなくなってしまった。実は、こういう変化も、場合によってはストレスの原因になるのかもしれない。

そういえば、「ストレス」とは少し違うが、猛烈に多忙な生活がしばらく続いた後で、仕事がみんな片付いて一挙に暇になると、反動で気が抜けたようになってしまうことがある。これも、環境の急速な変化に振り回されている一例かもしれない。

まぁ、この程度の変化だったら、なんとか乗りこなすことができているが、それに比べると、仕事も生活環境もいっぺんに変わってしまう「海外転勤」なんかは大変そうだ。身近に経験者が何人かいるから、機会があったら話を聞いてみようと思う。


人間の場合も、こうした各種の「環境の変化」に際して、いきなり変化に順応しようとしてバタバタするよりも、少しずつ「慣らしていく」という対応が必要なのかもしれない。ちょうど、アフガン帰りにグアム島でノンビリさせられたカナダ軍兵士のように。
機械はいきなりぶん回したり、あるいはいきなり止めたりすると、故障したり、焼き付いたりする。同じことが、人間にも起こらないとはいい切れないだろう。

故障した機械は部品を取り替えれば直るけれども、故障した人間、とりわけ心理的な故障は、後で直すのに手間がかかる。それがもっとも極端な形で出てしまったのが、「アフガン帰りの米軍兵士による殺人事件」なのかもしれない。

件のニュースを聞いた後で、「ターボタイマー」や「慣らし運転期間」に相当するものが要るな、と思った。全開で稼動した後はクールダウンしてやる、あるいは全開で動き始める前に足慣らしをする、といった配慮を忘れず、自分で自分を壊さないように気を付けないといけないというわけだ。

なにしろ、自分にとって自分の代わりはいないのだから、自分が壊れてしまったら救いようがない。ついつい、目先の仕事に食らい付き、後先のことを考えずに走り回ってしまいがちなので、自戒を込めて。

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