Opinion : 私的税務行政改革案 (2004/1/26)
 

いよいよ、私が提起しているストックオプション税務訴訟の一審判決が、4 日後の 30 日に迫った。こちらが準備書面にして出した内容に対して、当局側はまるで筋の通った反論ができず、まったく別のところで関係のない主張をしているという、まるでミッドウェイで負けたのをアリューシャン作戦で隠蔽した聯合艦隊のような情勢だから、常識的にみれば原告勝訴は堅いが、実際にゲタをはいてみるまでは分からない。
それに、どちらが勝っても高裁にいくのは確定的だから、勝ったところで「嬉しさも中くらいなり」というところか。

それはそれとして、この件で腹が立って仕方がないことがある。


仮に本件が原告勝訴で確定した場合、追徴された税額に加えて法定利息 (還付加算金) を上乗せした金額を受け取ることになるが、これは元はといえば国民の血税だ。国税の人間が、功名心で (?) 解釈の変更による「濡れ手に粟」の追徴を企てた挙句に失敗し、税務行政に対する信頼を失墜せしめたというだけでも犯罪的なのに、さらに、彼等は自らが仕える国家に対して法定利息という名の損失を与えるという、一種の背任行為を犯したことになる。

きつい言い方をすれば、個人の功名心が原因で国家に大損害を与えたわけだが、それに対して、「一時所得→給与所得」という解釈変更を最初にいいだした、(おそらくは東京国税局の) 関係者は何か責任を取るのだろうか ? 断じてそんなことはあり得ないだろう。
自分がやったことに対して責任を取らない、というだけではない。多分、肝心の言い出しっぺはある程度の役職に就いていただろうから、訴訟にケリがつく頃には退職金をもらってノウノウとしている可能性がある。しかも、ひょっとすると「無試験の特典」でもって税理士の資格を得て、国税の組織的斡旋によって顧問先を得てノホホンと暮らしていることになるかもしれない。そして、自らの傲慢と判断ミスが国家に与えた損失については知らん顔。そんなことがまかり通っていいものだろうか。

もっとも、すでに 100 件になんなんとするストックオプション税務訴訟に関わる法定利息を、国税の関係者に「責任を取る」という形で個人負担させた日には、今度は関係者が破産してしまう。だから、全額個人負担というのは現実的ではないにしても、何らかの形で責任を取らせる、あるいはペナルティを課すような制度を導入するのが、道理にかなっているのではないだろうか ? 民間企業で似たような背信行為を犯せば、クビが飛んでもおかしくないのだから。

法定利息の話だけではない。2000 年 8 月の「マイクロソフトの申告漏れリーク」では、あたかも当初から「給与所得」として申告するよう指導していたかのごとき言い草だったが、それが虚偽の内容であることはすでに露見している。しかし、国税側がこの件に関して自ら訂正したわけではないから、マイクロソフトの関係者につけられた傷はそのままだ。長谷川元常務のような脱税事件は刑事事件として法に則って処罰すればよいが、虚偽のリークによって傷をつけたという事実については、国税は責任を取らなければならない。脱税犯人がいるという話と、世論操作を目的とした虚偽のリークで名誉を毀損したというのは、まったく別の問題だ。
正直な話、よしんば追徴された税金を取り返せないとしても、この「虚偽の申告漏れリーク」の件については断じて許せない。虚偽の情報をマスコミにリークした張本人と当時の東京国税局長を笹塚 NA ビルの前に呼び出して、TV カメラの実況中継付きで謝罪会見と土下座をさせたいところだ。


話は変わって。

税務署ごとに設置されている調査部門の人間が非違を発見して修正申告を獲得すると、それが勤務評定に記録される、という話がある。つまり、非違が多ければ多いほど、調査部門の人間にとっては都合がいいわけだ。いいかえれば、正しく、正直に申告する人が増えれば増えるほど、調査部門にとっては「めしの種」(というか「出世の種」) が減ることになる。そんなおかしな話があるか。
純然たる筋論からいえば、正しく申告した納税者が多いほど税務署の人間が評価される、というのが当然ではないか。不正直な申告や間違った申告が増えるほど、評価が上がる原因が増えるなんて、そんなイカれた話はない。

そこで、某巨大掲示板に投稿したアイデアに話が進むのだが、税務署ごとに「正しい申告が行われるように納税者からの相談や指導に当たる部門」と、従前通りの調査部門を並立する形で設置したらどうだろう。そして、提出された申告書に非違が少ないほど前者の、非違が多く発見されるほど後者の、それぞれ勤務評定をよくするわけだ。
もし、「相談・指導部門」の人間にいわれたとおりに申告書を書いて「調査部門」から物言いがついたら、「相談・指導部門」の人間と「調査部門」の人間が対決することになる。

こうすると、「相談・指導部門」は正しい申告が行われるように、いい替えれば非違が少なくなるように、必死になって指導に励むだろう。なにしろ、「勤務評定」というニンジンをぶら下げるのだから効果覿面だ。その一方で、調査部門は非違を発見しようとして必死になる。こちらは従前通りに勤務評定というニンジンがあるわけだから、これはこれで必死になる。結果として、2 つの部門が相克することによって一種の「競争原理」が導入され、適正な申告の増大、ひいては正当な税収増加が期待できると思うのだが、どんなものだろうか。

「競争原理」という考えからいけば、税務署をひとつの地域ごとに複数設置するという考えもないわけではないが、これはいくらなんでも非現実的だ。諸外国には、未納の税金を債権として民間の徴収請負会社に売却する事例もあるようだが、いきなりそれを導入するのもムリがある。そこで考えたのが、この「2 部門並立競争制度」というわけだ。

さらに、先に書いた「無茶苦茶な解釈による challenge」で訴訟に負けた際のペナルティ導入や、憲法 84 条そっちのけで「通達」を出すことを「税制整備」と勘違いする現状の是正を組み合わせることで、今の日本の税務行政が抱えている問題点を、いくらかでも解決できるのではないかと考える。もちろん、現場は激しく抵抗するだろうが、そんな既得権益などくそくらえだ。ついでに、「無試験の特典」や「組織的斡旋」も全廃してしまえばよろしい。

冷静に考えると、「勤務期間が一定期間を超えると無試験の特典が手に入る」とか、「特定の指定官職に限って顧問先を斡旋する」なんていう、「地位」に立脚して利得が増える商売をやっているからこそ、「権利付与時の地位に基づいて、所得区分が決定される」なんていう珍無類な主張を思いつくのかもしれない。しかし、それが世間一般の感覚からは大きく遊離していることを、国税の関係者は知るべきだろう。

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