Opinion : 高速道路で遭遇した錯誤の話 (2004/4/26)
 

ここのところ、ネットショッピングの「価格掲載ミス」が話題になっている。1 割とか 2 割程度の価格差だったら「常識」の範囲内だから勘違いして注文してもおかしくないと思うが、先日の「eMac が定価の 1/40 程度の価格で掲載された」騒動に至っては、もはや文句をいう方が間違っていると思う。常識的に考えて、そんな価格で商品が出てくるはずがないのだから。

もちろん、だからといって間違った価格を載せてしまった責任というものはなくならないにしろ、本来 10 万円近い値段がするものが 3,000 円を割っていたとあっては、何かとんでもない裏事情があるか、さもなくば間違いと考えるのが自然だ。だから、調子に乗って「間違い価格のままで販売しろ」と騒ぐのもどうかと思う。「激安販売 spam」がよくやるように、意図的にユーザーの錯誤を誘って客寄せを働いたというわけではないのだから。

だいたい、その昔から「うまい話には気をつけろ」とか「うまい話には裏がある」といわれているにもかかわらず、うまい話にひっかかってしまう人が後を絶たないのだから、始末が悪い話だと思う。
もっとも、「うまい話」にひっかかって後で泣きを見るのは、なにも商品を買う話に限らない。先日、東北自動車道の浦和料金所 (上り線) で、「うまい話には裏がある」的な話を経験したので、それについて書いてみたい。


浦和に限らないが、高速道路の本線料金所は状況によって上下線の仕切りを移動して、レーンの数を増減させる場合がある。また、常にすべてのブースに職員がいるとは限らないから、通行可能なレーンには青信号、通行不可能なレーンには赤信号を出している。ところが、この信号が遠目には分かりにくい。
さらに、最近では ETC レーンが設置されているが、料金所によって ETC レーンの場所が一定していないし、場合によって「ETC 専用」だったり「ETC/一般」だったりと使い分けられていることが、さらに話をややこしくしている。

といったところで、4/18 夕方の浦和料金所上り線だ。このとき、全体としてみると上り線に割り当てられたレーンが多かったのだが、右端から順に、こんな並びになっていた。そして、レーンの上にはこれらの並びに合わせて看板が掲示されていた。

... 一般 一般 ETC 専用 ETC 専用 一般

浦和本線料金所 1

問題は、右端の「一般」が閉鎖されていたことだ。もちろん、閉鎖されているレーンには赤信号が表示されていたはずだが、遠くから見ると、(上の写真で分かる通り) 赤信号よりも「一般」表示の方が目につきやすい。

かくして、閉鎖されている「一般」レーンに突っ込もうとした ETC 非装備車が、近くまで行ったところで問題のレーンが閉鎖されていることに気付いて ETC レーンで立ち往生したり、2 つ並んだ ETC レーンの左側にある一般レーンに割り込みをかけようとしたりして、ゴタゴタしてしまったわけだ。
その結果、自分が並んでいた一般レーンは割り込み車がどんどん入ってくるせいで一向に進まず、しかもその横の ETC レーンまで、割り込もうとして止まってしまった車で通行が阻害されるていたらく。それに対して何の手も打とうとしない料金所の関係者は、一体全体、何をしているのかと呆れてしまった。

浦和本線料金所 2

実は自分も同じ愚を犯しそうになったのだが、「ちょっと待て。右端に空いている一般レーンがあるなら、どうしてそんな目立つ場所に列ができていないんだ ?」と気付いて、ETC レーンの左側にある一般レーンに向かった経緯がある。そして料金所に近付いてみたら案の定、右端の一般レーンは閉鎖されていて、前記のような騒動を引き起こしたわけだ。
自分が判断ミスを犯さなかったのは良かったが、判断ミスをしたドライバーがどんどん前方に割り込んでくるせいで、結果として料金所通過までに小一時間かかるという大馬鹿な事態になってしまったのは腹立たしい。うまいこと他人を出し抜こうとした他人の判断ミスについて、正しい判断をした方がツケを払わされるのではたまらない。

もちろん、自分がそうしたように、「空いている一般レーンが目立つ右端にあるなんて、そんなうまい話があるわけがない」と気付けばいいのだが、一般的に混雑度が高い右端のレーンを閉めているというのは、常識的に見て考えにくい。だから、ドライバーにすべての責任をおっかぶせるのはフェアではない。冒頭で書いた "激安 eMac" の話とは次元が違う。


そもそも、料金所でどこのレーンに入るかというのは、ドライバー同士が「いかにして他のクルマを出し抜こうか」と神経戦を展開する、一種の戦場みたいなものだ。日本に高速道路が登場したのは昨日今日の話ではないのだから、そんなドライバー心理を掌握していないという言い訳は成り立たない。
それでいて、紛らわしいことに右端にデカデカと「一般」表示を掲示したレーンを用意して、しかもそこには職員を置かずに閉鎖しているというのでは、もはや意図的な通行妨害としかいいようがない。左端のレーンをひとつ閉めて、職員を右端のレーンに回せば済む話なのだから。そうでなかったら、仕切りの位置をひとつ左にずらして、右端の 2 車線を ETC 専用にすればいい。そうすれば、ETC 非対応車は自動的に左に寄る。これで何の問題もないではないか。

先に「確信犯」と書いたが、この閉鎖レーンの配置も、ひょっとすると「ETC レーンをスムーズに通り抜ける姿を見せつけて、ETC の普及を図ろう」という、道路公団と国土交通省が仕組んだ陰謀なのかもしれない。なにしろ、あの手この手で ETC を普及させようと躍起になっている両者のことだ。その程度の小細工はやってもおかしくない。現に、本線上で発生している混乱を放置プレイにしてしまったぐらいだ (おっと、陰謀論の罠にはまってしまった :-)

本当に陰謀なのかどうかはともかくとして、この一件はほとんど確信犯的にドライバーの錯誤を引き起こしていたわけだから、道路公団側の問題と考えてよいのではないか。よしんば意図的なものでなかったとしても、わざわざ渋滞を引き起こすような状況を自らの手で作り出して、しかもそれを放置していたわけだから、何の責任もないとはいわせない。そんな道路公団に「料金所渋滞解消には ETC を♪」などと調子のいいことをいってもらいたくないものだ。どうやら、道路公団には「顧客満足度」という言葉はないらしい。

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