Opinion : 情報提供は見た目よりもスピード (2004/12/13)
 

先週、寒い駄洒落をぶちかましたにもかかわらず、相変わらず雪不足が続いている。毎日のように、各地のスキー場の降雪情報を調べているのだが、そこで感じたのは、情報提供のスピードや質には、それぞれのスキー場によって相当な格差があるな、ということだった。

もっとも分かりやすい手段はライブカメラだが、映せる場所は限られているし、設置や運用にそれなりにコストがかかる。まして、ユーザーが自分で操作できるタイプのライブカメラなら、なおさらだ。挙句、誰かが面白がって、どうでもいい種類の映像を映したままにしてしまったりする。

実のところ、何も「ライブ」カメラでなくても、30 分程度のインターバルで画像を更新してくれれば、それで十分じゃないかというのが個人的意見。相手が天気だけに、リアルタイム更新と 30 分ごと更新で、そんなに情報の質に差が出るわけでもない。
そこまで行かなくても、たとえば文字情報だけでもそれなりの頻度で更新してくれれば、こちらとしては安心する。何も情報がないより、悪い情報でもあった方がいい。

実際、一日一回どころか、朝・昼・晩と最新情報を Web に載せてくれるところもあれば、オープン予定日が来ても放置状態 (実は雪不足で滑れない) なんていうところもある。どちらも滑れない、あるいは滑れる場所に制限があるのだとしても、前者の方が印象がいい。


スキー場を経営する立場からいえば、「悪い情報が流れて宿泊キャンセルが相次いでも」と思うかもしれないし、実際、これはあながち杞憂ともいい切れない。だが、事前に「駄目でした」と分かってキャンセルするのと、「当日、行ってみたら駄目でした」というのとでは、どちらの方が不満度が高いだろう ?
自分なら後者だ。相手がお天道様なのだから、そりゃ思い通りに行かないこともある。でも、そうした情報をちゃんと伝えてくれれば、「滑れるようになったときに行ってみよう」と思う。しかし、後者のケースでは、「情報を出し惜しみしてたんじゃないの」と猜疑心を持ってしまいそうだ。

ちょうどこれは、過去に 2 度ほど槍玉に挙げた、道路公団のハイウェイラジオに通じるものがある。過去に指摘しているように、ハイウェイラジオは往々にして、事故・各種規制・工事などの情報があると、その情報をいわずに、問題の場所より手前の IC の名前を出して「○○までは順調に流れています」と大本営発表をする。

最近ではこちらも学習しているから、途中の IC の名前しか出てこなければ「その先で何か起きてるな」と判断するし、実際、その通りになっていることが多い。しかし、ハイウェイラジオ慣れしていなければ、「順調です」だけが耳に入り、その先で嫌な思いをするかもしれない。そして、道路公団の評判が下がるかもしれない。

ちなみに、ハイウェイラジオだけでなく、VICS 情報にも似た傾向がある。やはり、何か不具合があると途中までの情報に切り替えてしまうケースが少なくないが、ハイウェイラジオよりも若干はマシなようだ。

三菱自動車の「リコール隠し」みたいなことがあると、マスコミ各社は「不都合な情報でもちゃんと公表する方が信頼されるはずだ」と書くことが多い。それはその通りなのだが、この手の、日常的に発生している「不都合な情報隠し」について槍玉に挙げた話を聞かないのは、いったいどうしたことか。

そういえば、わざとなのかシステムの都合なのか知らないが、JR CYBER STATION で提供している空席情報も、深夜帯になると検索できないのは不満だ。真夜中に、翌日に切符を買いに行きたいから情報を調べようと思っても、「翌朝 6 時まで待て」といわれてしまう。何のためにインターネットで Web 経由の情報提供をやっているのかと。


インターネットと Web の普及で、何が一番変わったかといえば、人手を掛けずに 24 時間、欲しいときにいつでも情報を取りに行けるようになったことだと思う。この、ユーザーが能動的に情報を取りに来てくれる (いわゆるプル型) ところがポイントで、情報を提供する側は、Web のコンテンツという形で情報をサーバに投げておけば、後は手間がかからない。電話応対のために人を貼り付けておく手間や経費に比べれば、はるかに安い。
といっても、すべての人が常に Web を使えるわけではないから、電話みたいな従来型の情報提供チャネルも捨てられないが、それしかない場合に比べれば、確実に負担は少なくなっているはずだ。

また、ときどき勘違いしている人がいるのだが、積雪情報とか、列車・飛行機などの運行情報のように、情報そのものを見ることだけが目的になるコンテンツの場合、見せ方に派手な演出は要らない。ついつい Web デザイナーが道楽凝り性で、画像やら Flash やらをガンガン使ってしまっている Web サイトもあるようだが、それは違う。芸能人の Web サイトじゃないのだから、必要にして十分な情報が適切なタイミングで更新されていれば、極端な話、テキストだけでよろしい。その方が速く表示されるので、ユーザーにも優しい。MS 製品を排除したくてカッカしている経済産業省の思惑とは関係なく、ユニバーサル性という点から見れば、特定のブラウザに依存しないテキスト情報が最強なのだ。

「インターネット (または Web) を使った情報提供」という言葉が使われるようになって 10 年近く経つが、この辺の本質が分かっていない人が少なくないと感じられる。もちろん、Flash でも何でも、使えるテクノロジーの幅は広い方がいいし、実際、それを効果的に使っているコンテンツもたくさんある。
ただ、「見ること自体を楽しむコンテンツ」と、「最新情報を迅速に提供するためのコンテンツ」には違ったアプローチが必要だと思うし、両者を TPO に応じて使い分けるという点では、まだまだ発展途上の面が強いと思う。最新情報を早く見たいと思っているときに「Now loading...」といって延々と Flash アニメーションのダウンロードを始められると、イライラしてしまう。

電子メールを使った情報提供にしても、one to one で、プッシュ型で情報が届く利点がある反面、状況によっては (たとえ携帯電話が相手でも) リアルタイム性に制約が生じることもある。だから、何でもメール マガジンにすればいいというものでもなかろう。ひところ、何でもかんでもメール マガジンにするのが流行ったが、最近ではすっかり沈静化してしまっているではないか。

「情報化時代」という言葉は 20 年ぐらい前からいわれているが、その「情報」を適切に伝達・流通させるために用いる手法の判断、あるいは私がいつも書いているような、世間に流布している膨大な情報を読み取り、不要なものを捨てるためのテクニック、といった面については、どちらかというと蔑ろにされていないだろうか ? 本当は、そっちの方が大事だと思うのだけれど。

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