Opinion : 空自が下地島空港を使うなら (2005/3/21)
 

空自が、有事の際の前進基地として下地島空港を使う話が現実味を帯びてきた。確かに、朝鮮半島と並んで台湾海峡もキナ臭いので、筋の通った話だと思う。

これから書くことは、"本職" たる防衛庁の皆さんも先刻承知のことだと思うけれども、それでもあえて書いてみたい。


どこでも同じことだけれど、飛行場というのは必須の存在でありながら、案外と脆弱な存在でもある。ハリアーや F-35B のように滑走路が要らない機体は別として、普通の飛行機は滑走路を穴だらけにしてしまえば離陸できず、いないも同然の存在になってしまう。第一、どんなに強力な戦闘機でも地上にいればただの金属塊。空中戦で撃ち落とすよりも、寝込みを襲って地上で潰す方が早道かもしれない。

だから、ヨーロッパではずいぶんと前から、どこの基地でもシェルターが当たり前のように設置されていた。日本でも、三沢の 35th FW なんかは全機がシェルター運用だし、空自でも基地によってはシェルター運用をやっているケースがある。

そこで問題なのが下地島だが、日本本土よりもむしろ台湾に近いくらいの場所なので、いざというときに備える前進基地としては、まことに都合がよろしい。だが、現場に近いということは、それだけ余計な火の粉が飛んでくる可能性も高いということ。単に、爆撃で滑走路や機体が破壊される心配だけでなく、特殊作戦部隊が潜水艦で送り込まれて、ゲリラ攻撃を仕掛けてくる可能性も考えなければなるまい。

ちょいとググってみたら、沖縄県の Web サイトに、下地島空港の紹介記事が載っていた。これを見ると、海からの攻撃に対しては脆弱な感じがするし、地形はまっ平らで起伏が少なそうに見えるから、空からの攻撃に対しても無防備な感じがする。

こんな、"火事場" に近くてあけっぴろげな飛行場なら、本当ならイスラエル空軍がやっているように、地下に強化格納庫を造るぐらいでちょうどいいぐらいだと思う。だが、まっ平らな地形や、サンゴ礁の可能性が高そうな地質を考えると、地下を深く掘り返すのは難しいんじゃないかという気もする。
となれば、滑走路周辺の緑地帯に、理想は 1 個飛行隊分、せめて半個飛行隊分ぐらいのシェルターを設置しなければ、前進基地としては意味をなさないように思える。

もちろん、シェルターは地上にいる機体を護る役にしか立たないから、それ以外にも、必要とされる「基地の要塞化対策」はいろいろある。十分な燃料・武器・弾薬をストックしておくことも必要だし、燃料タンクを地上に露出させるなんて問題外。滑走路の復旧用に機材・資材を揃えておく必要もある。防空用に移動式レーダーと短 SAM が要るだろうが、これは花火が上がりそうになったところで空輸すれば済むか。

また、海から工作員を送り込まれる可能性を考えると、侵入阻止のための施設整備や、いつでも 1 個中隊ぐらいの守備隊を送り込めるような装備の事前集積をやっておきたい。戦闘機に加えて、近隣警戒用にヘリコプター (SH-60K とか ?) も展開できるようにしておく方が良いだろうか。もちろん、いつぞやの漢級原潜みたいなのが近所をウロウロしないように、平素から海自の P-3C に目を光らせてもらおう。

よく考えると、何も下地島に限った話ではなくて、那覇基地の TAC 部隊だって同じこと。民間飛行場と共用している那覇基地にシェルターを作るのが難しければ、嘉手納 AB を米軍と共用する方がいいかもしれない。恒常的に共用するのが難しければ、空自用に空き家のシェルターを増設しておくとか。(花火が上がったら本土から支援戦闘機部隊が進出する必要が生じるかもしれないから、理想としては 2 個飛行隊分のシェルターが必要 ?)

冷戦時代には「北方重視」で、陸自も空自も北海道を重視していたが、北海道はまがりなりにも「本土」だから、施設面でも防備面でも、あるいは兵站支援の面でも、まだしもやりやすかった。その点、南西方面は島が連なった構成だから、護るにはまことに都合が良くない。特に、海からの攻撃に対処しなければならない防備面と、燃料を初めとする消耗品の補給面は、こういう地勢だとボトルネックになりやすい。


かつて、中曾根内閣の時代に「不沈空母発言」なんてのがあったし、時代を遡ると、井上成美の「新軍備計画論」でも以下のような主張があった。

  • 三、陸上航空基地は絶対に沈まない航空母艦である。航空母艦は運動力を有するから使用上便利ではあるが、極めて脆弱である。故に海軍航空兵力の主力は基 (地) 航 (空) 兵力であるべきである。
  • 四、対米戦に於ては陸上基地は国防兵力の主力であって、太平洋に散在する島々は天与の宝で非常に大切なものである。
  • 五、対米戦では之等の基地争奪戦が必ず主作戦になることを断言する。換言すれば上陸作戦ならびにその防禦戦が主作戦になる。
  • 六、右の意味から基地の戦力の持続が何より大切なる故、何をさておいても、基地の要塞化を急速に実施するべきである。

確かに、島があって、そこに飛行場を作れれば "不沈空母" として機能するけれど、結局のところ、機体や施設を護るための対策がなければ片手落ち。かつて井上成美が書いていたことが、那覇基地や下地島空港に対しても、そのまま適用できるのではなかろうか。

そんな、基地施設の抗堪性という観点から考えると、次期主力戦闘機は F/A-22 よりも、F-35A よりも、実は F-35B の方が "日本向き" かもしれない。地理的に縦深性がない分だけ、別の方法で粘り腰を発揮する必要があるだろうから、滑走路なしでも作戦できる STOVL 機の F-35B は都合が良いと思う。

参考 :
空自、民間用空港使用へ 伊良部・下地島 対中有事の根拠基地 (SANKEI Web)

Contents
HOME
Works
Diary
PC Diary
Defence News
Opinion
Ski
About


| 記事一覧に戻る |