Opinion : "暴れん坊" を活躍させる条件 (2005/3/28)
 

政治家でも軍人でも企業経営者でも、何かの業績をきっかけにして世間的な注目を集める人がいる。その中には、やたらと派手な言動が目立ち、結果としてメディアに持て囃され、「マスコミの寵児」あるいは「カリスマほげほげ」などと呼ばれてしまう人も少なくない。この手の人の多くは、アジテーターとしての才能にも恵まれているので、大衆を味方につけるのが上手い。

ただ、そうした人が最後まで、好意的な評価の中で大活躍を続けることができるかというと、必ずしもそうとは限らない。ちょっとした (あるいはとんでもない) 当人の失策、あるいは周辺状況の変化が原因で、コロッと評価が変わってしまうこともある。

そこで思ったのは、こうした "暴れん坊" は、単独で存在するのは難しいのではないか、ということだった。


天才肌で、何かと派手な言動、あるいは過激な言動が目立つ人物は、特に企業や軍隊といった組織の中では疎んじられることが多い。典型例が米陸軍のビリー・ミッチェル将軍で、航空機の優位性を主張するだけなら良かったのに、勇み足で余計なことをいって軍法会議にかけられてしまった。

もし、そうした人物が組織の中で生き残っていくことができるとすれば、そうした人物を引き立てるだけの雅量を持ち、周囲との間で生じる軋轢の緩衝材となり、当人に足りない部分をフォローする、そうした役割を受け持つ上司、あるいはパートナーが必要なのだと思う。

具体的に、そうしたコンビの例をいくつか挙げてみた (敬称略)。

  • 本田宗一郎と藤沢武夫
  • 辻政信と服部卓四郎
  • ウィリアム・ハルゼーとチェスター・ニミッツ
  • アーネスト・キングとフランクリン・ルーズヴェルト

こうしたコンビをずっと維持できれば、両者の長所を組み合わせることもできるし、"暴れん坊" の立場も守られる。だが、往々にしてこうした後ろ盾は何かの拍子に失われるもので、その結果、"暴れん坊" はハシゴを外された格好になって、没落してしまう事例も少なくない。

典型例がアーネスト・キング提督で、どうもこの人、とにかく人格的に問題があって、周囲との軋轢が耐えなかったらしい。おまけに人物評価が酷薄極まりないせいで、何人もの海軍士官が前途を台無しにしてしまったりもしている。
だが、第二次世界大戦においてキング提督が発揮した戦略眼の確かさは万人が認めるところ。そのことを認めるルーズヴェルト大統領が健在だったときには、キング提督も海軍のトップとして権勢を振るうことができた。ところが、ルーズヴェルト大統領が死去して、後任が陸軍びいきのトルーマン大統領になったせいで、キング提督はハシゴを外された格好になり、晩年はパッとしなかった。(と書くと、あまりにも控えめな表現かもしれない)

そのキングの下で、「頭が悪い」などと罵られていたのがウィリアム・ハルゼー提督だし、実際、レイテ沖海戦のように際どいポカもやっているのだが、そのハルゼーとキングの間にニミッツがいて、緩衝役を務めてくれていたからこそ、ハルゼーも "猛将" としての長所を発揮できたのではなかろうか。海兵隊の "ホーリング・マッド・スミス" にも同じことがいえる。

いちいち書いているとキリがないからこの程度にするが、他のコンビにしても事情は似たり寄ったり。もし、"暴れん坊" が調子に乗りすぎて暴走しそうになったり、周囲との軋轢がひどくなったりしたときに、冷静に諌めてくれる、あるいは緩衝役を務めてくれる相棒がいるかどうかで、その後の評価や当人の人生はコロリと変わる。

それに、この手のタイプは往々にして、小さな組織、あるいは旗色が悪くて景気付けを必要としている組織では威力を発揮するが、大きな安定した組織では威力を発揮できなくなるケースが少なくない。それをフォローするには、智謀に優れた冷静で優秀な参謀役、あるいは上役が要る。
だから、周囲がイエスマンばかりになってしまい、一緒になって当人をおだててばかりいると、ロクな結果にならない。そういう意味では、諫言されたときにそれを聞き入れられるかどうかで、当人の器の大きさが知れる、ということもいえる。その点、本田宗一郎氏は立派だった。

メディアに祭り上げられた場合も同様で、特に新聞やテレビの場合、さんざん持ち上げて煽っておいてからドスンと落とすことが多いので、まことに始末が悪い。だが、そういう性質があることを承知して、浮かれてしまわないようにブレーキをかけられる人がいるかどうかで、大きな違いが生じる。


なんでこんなことを書こうと思ったのかというと、5 週間前に「壊し屋さんに喝采を送るのは止めよう」を書いたときに念頭に置いていた何人かの中の一人について、「なんか、辻政信に似た部分があるんじゃないの」と思ったため。こんなことを書くと非難囂々になりそうだけれど、「あの人」や「この人」に、服部卓四郎みたいな引き立て役、あるいは藤沢武夫みたいなサポート役はいるんだろうか ? 疑問だ。

もっとも、辻政信という人、自ら前線に出て行って "現地視察" をやることに熱心だった。このことだけは評価してもいいんじゃないかと思ったが、視察した結果から導き出す結論が独りよがりだから、やっぱり駄目だ。

Contents
HOME
Works
Diary
PC Diary
Defence News
Opinion
Ski
About


| 記事一覧に戻る |