Opinion : どうなるキティ後継艦 (2005/4/4)
 

「ライブドア vs フジテレビ」の陰に隠れて、大事なニュースがいろいろと埋もれてしまっているような気がする。ほりえもん的なニュースの考え方からいうと、世間の関心を集めるニュースだけが多数のページビューを集めて、そうでないニュースは淘汰されてしまっても、誰も関心を持たないのだから仕方ない、ということらしいのだが、それは「報道」というものをまるで分かってない者の言い草だろう。

閑話休題。
そんな、話題にならない重大ニュースのひとつに、横須賀を "事実上の母港としている" 米海軍の空母をどうするか、という問題がある。現在、横須賀に陣取っている USS Kitty Hawk (CV-63) は 1961 年竣工というお婆さんで、すでに艦齢 44 年。米海軍の基本パターンとして空母は 50 年ほど使うことになっているようだが、なんにしてもタイムリミットが近い。

そこで後継艦を何にするかという話が出てくるが、現時点で米海軍が保有している空母のうち、通常動力艦は USS John F.Kennedy (CV-67) のみ。残りはすべて原子力艦だ。となると、「世界唯一の被爆国の核アレルギーに配慮して、通常動力艦の JFK を」ということをいい出す人が出てくるのはお約束。


そもそも、この「世界で唯一の被爆国」といういい方ってどうなのよ、という話はあるのだが、それを論じ始めると本題がどこかに行ってしまうので措いておくとして。

問題なのは、GWOT (Global War On Terror) のために戦費負担が増している状況下で、米海軍に対する予算削減策のひとつとして JFK の早期退役案が出ていること。JFK が退役すれば、後は全部原子力空母になるから、「横須賀に原子力空母 ? とんでもねえ」といって、脊髄反射的に文句をいう人が出てくる。

もっとも、今の米海軍では、SSBN を除いて核兵器は搭載していないことになっているし、米海軍の原子力推進艦が重大な原子炉事故を起こしたという話も聞かないので、原子力空母が配備されたからといって何か実害があるかといえば、おそらくは存在しない。

日本には原子力推進艦をメンテナンスできる施設がないが、最近は昔と違い、いったん炉芯を交換すれば 20 年かそこらは使える。だから、RCOH (Refuelling & Complex Overhaul) を済ませたばかりの艦を配備すれば、原子炉を開けなければならないような事態は不要と考えてもいい。原子炉に関係ない部分のお守りだけなら、横須賀の施設でも可能ではなかろうか。

もっとも、米海軍の部内には JFK の退役に反対する意見もあるし、その際の言い訳として「日本に原子力空母を配備するのは政治的に云々」といって JFK の早期退役案を葬る、という話も、それはそれで筋が通っている。JFK は最近、メンテナンスに問題がありすぎて艦長の首が飛んだりしているが、かつて USS Midway (CV-41) がそうだったように、横須賀 SRF が腕をふるって艦を徹底的にメンテナンスしてしまえば、

  • 原子力空母を配備することに伴う感情的反発を避けられる
  • 傷んだ JFK を良好なコンディションに戻せる

ということで一石二鳥だ、という見方もできる。

軍艦ヲタク的見地からすると、JFK は外舷側に傾斜した煙突を備えており、これは帝国海軍の「隼鷹」「飛鷹」「大鳳」「信濃」といった空母に対するリスペクトが感じられるので好ましい。しかも、横須賀で入渠することになる 6 号ドックは、「信濃」の建造現場でもあるのだ。
もっとも、横須賀に配備する空母をどれにするか決めるのに、煙突の外見を理由にするわけにはいかないけれど。

ついでに書けば、JFK は建造当初にソナーの装備を予定していたせいで、ベルマウスが艦首中央部に付いていたりして面白い。もっとも、高速で走っていることが多い空母にソナーを付けて、どれだけ戦術的に意味があるかというと疑問ではある。


個人的には、原子力空母が来ようが JFK が来ようが、どっちでも構わないという立場を取っている。ただ、このタイミングで日本に空母を置くのをやめるのは、中国や北朝鮮に間違った政治的メッセージを送る可能性があるので問題外。そう考えると、原子力空母の代わりに通常動力空母を配備するのも、政治的メッセージという点では弱気のサインと受け取られる可能性があるかもしれない。

それに、なによりも JFK 自体が 1968 年竣工のお婆さんで、すでに艦齢 37 年。日本に配備してしばらく経てば、横須賀 SRF がどんなに頑張ったとしても艦齢に達してしまい、またぞろ後継艦問題が発生することになる。

しかも、今度は逃げ道となる通常動力空母がない。艦艇建造に関するマスター・プランをコロコロ変えて、造船所から「長期計画が立たないので設備投資もできない」と文句をいわれている米海軍だが、なんにしても通常動力空母の建造話は 1 ビットも出てきていないので、次こそ、原子力空母の配備という話がやってくる。

もっとも、そのタイミングで日米関係がどうなっているかとかいう未確定要素はあるのだが、個人的には日米の同盟関係は必須と考えているので、今後も横須賀への空母配備は続くという前提で考える。そうなると、今回、JFK を配備することで決着したとしても、それは問題の先送りに過ぎず、いずれまた、同じ騒ぎを繰り返すのは確実。

それならいっそのこと、原潜の領海侵犯事件なんかで日本周辺の安全保障問題に関心が高まっているタイミングを狙って、原子力空母、それも比較的新しい艦を配備してしまうのも、ひとつの方法じゃないかと思われる。

原子炉の安全性がどうとかいう人はいるかもしれないが、日本国内で事故らなければ後はどうでもいいのか、という突っ込みはできるし、そもそもかつてのソ聯海軍と違って米海軍の空母は航海に出ていることが多いのだから、いてもいないようなもの。それなら、問題を先送りせずに原子力空母の配備に踏み切るのも、あながち、悪い話じゃないと思うのだが。

いっそのこと、かつてのソ聯海軍みたいに「あれは空母じゃなくて "航空機搭載重巡洋艦" です」といってみたらどうだろう… いくらなんでも無理か。


追記 (2005/4/5)
NavNews (2005/4/4) によると、米海軍は、予定されていた JFK の COH (Complex Overhaul) を 4/1 にキャンセルした。そして、母港をフロリダ州 Mayport からヴァージニア州 Norfolk に移す話も、COH のキャンセルに伴って白紙に戻された。
これは「財政上の配慮」とされ、15 ヶ月かけて実施されるはずだった COH をキャンセル、捻出した予算を、もっと優先度の高い案件に回すとされている。また、JFK の退役、あるいは第一線引退については、依然としてペンディング状態と発表されている。

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