Opinion : 女性専用車に関する、結論のない雑感 (2005/5/23)
 

なんと、4 週連続で「鉄」関連の話題になってしまった。もちろん、その他のネタを見捨てたわけではないのだけれど。


手元に、「鉄道ジャーナル」の 1972 年 8 月号がある。これ、「列車追跡」の記事を集めた特集を組んでいる号なのだが、その中に「女の園も楽ではござらぬ」という記事がある。当時、中央快速線で朝のラッシュ時に一部の列車限定で運転されていた「婦人子供専用車」について書いた記事だ。
今だったら、まず、この「婦人子供」という名称自体が噛みつかれそうだが、それはそれとして。

件の記事によると、この手の車輌が日本の鉄道界に登場したのは、意外なほど古い話だという。
なんでも、発端は明治 44 年の大晦日。「東京女子校制服図鑑」を買ったことがある方なら御存知かと思うが、中央線の沿線には歴史の長い名門女子校が多い。そうした学校に通う女学生 (死語) が、電車の中で痴漢されたり付文 (ラブレターのこと !) されたり、といった自体が多発して問題化、それで中野-昌平橋間に通学時間帯だけ、専用車を運行したのが始まりだそうだ。

その後もいろいろと変転があったらしく、2 等車 (今でいうところのグリーン車) が「老幼専用車」に看板を掛け替えてみたり、「女学生通学専用車」が運行されたりしたものの、結局は消えてしまった。結局、1972 年の時点では中央快速線で、一部の東京寄り先頭車が「婦人子供専用車」として運転されているだけだったとの由。

こうしてみると、今も昔も状況は大して変わらないなあと思う。RJ 誌の記事を読むと、「婦人子供専用車」に対して「逆差別だ」という声が上がったり、「ハコごとの乗車率が平均化されない」とクレームがついたり、「乗るとお化粧の匂いが凄い」という感想があったりする。最近、女性専用車について同じようなことを書いている Web サイトや blog があちこちにあるのを見ると、まさに「歴史は繰り返す」。

現実問題として、痴漢や覗き、最近ではカメラ付き携帯電話を使った盗撮なんて輩までいる訳だし、以前よりマシになったとはいえ、ラッシュアワーになると電車が激しく混雑するのも変わらない。
「男女は同権なれども同質にあらず」というのは私の好きな言葉だけれど、実際、身体の構造も平均的体格も、直立したときの重心位置もモノの考え方・感じ方も違う。ミクロ的な話はともかく、マクロ的に見れば女性の方が体力的にハンデを負っていて、物理的に抵抗しづらいのは事実だから、なにがしかの対策を講じなければならないという状況は理解できる。

それに、一方では「痴漢冤罪事件」なんてものもあちこちで発生している。意図的な「痴漢」と、電車の揺れなどに起因する「事故」の区別をつけるのは、女性側から見れば難しい話かもしれないから、余計なトラブルを避けたければハコを分けてしまえ、という考え方には、一定の理はある。南アのアパルトヘイトで、人種ごとにハコを分けていたのとは事情が違う。

実際、電車が揺れた拍子に胸やお尻に手が触れてしまい、冷や汗をかいた経験がある人も少なくないのでは ? 私の場合、仕事で外出するときには "凶器" ゼロハリバートンを持ち歩くので、これを他の人との間に入れて、うっかり触ってしまうような事態が起きないように逆ガードしていることが多い。
ちなみに、なぜ "凶器" かというと、これで人を殴ったら、間違いなく脳震盪ぐらいは起こすと思うから。おっと。

そんなわけで、「女性専用車」の導入自体には反対しないけれども、問題は、どこのハコを「専用車」にするか、ではなかろうか。このさじ加減ひとつで、反対意見の多寡はだいぶ違ってくると思う。

単に「○号車」と、絶対位置で決めると、分かりやすい。「○○側先頭車」と、相対位置で決める方法は、分割・併合がある路線では採用しづらい。先頭車が途中から先頭車でなくなったりするから。

一方、専用車に指定するハコを選択する際の基準については、混雑度の低いハコを指定する方法と、混雑度の高いハコを指定する方法がある。
前者だと、「女性専用車ばかり空いている」とイチャモンつけられそうだし、指定されたハコから押し出された男性客が他のハコに移る分だけ、他のハコの混雑率が上がって顰蹙を買うかもしれない。
後者だと、混んでいるほど痴漢が出やすいという考えと、ハコごとの乗車率平均化という観点からは理に適っているが、混雑するハコというのは便利な場所にあるのが通例だから、「逆差別だ」と非難されやすい。

結局、「あちら立てればこちらが立たず」というわけで、どの選択肢をとっても、なにがしかの問題点は残るし、文句をいう人は出てくる。

それに、すべての女性客が専用車に乗る訳ではないから、女性専用車を作ったことで逆に「専用車以外に乗るのは、痴漢されてもいいという意思表示だろう」なんていう、甚だしくイカれた解釈をする阿呆も出てくるかもしれない。

ちなみに、あまり話題にならないけれども、「安心して寝られるかどうか」という問題がかかっている夜行列車の方が、実は深刻な問題じゃないの、という気もする。実際、夜行列車でも女性専用車を設けている事例はあるが、この場合、通り抜けができないように編成の端に設置する例が多いようだ。この辺は、通勤電車とフィロソフィーが違う。(そういえば、飛行機では長距離路線でも「女性専用席」って聞いたことないけれど、問題にならんのかな)


根本的には痴漢や盗撮をする奴がいけないので、それがいなくなれば、わざわざ「女性専用車」なんてものを作る必然性はなくなる。そう考えると、あくまで「専用車」は対処療法なのだが、過去の歴史からいって痴漢を根絶するのは難しい。だから、「専用車」がベストな選択かどうか断言できないにしても、ベターな選択とはなる。

こういう問題に「全員が納得する最強の解決策」はないと思うので、「女性客ばかり優遇しやがって」と猛反発を買わない程度の範囲内で、できるだけの対策を講じていくしかないのでは。優遇の度合が過ぎると、今度はおじさん向け夕刊紙あたりがブーブーいいそうだし、それが原因になって要らぬトラブルにならないとも限らない。

私見としては、ラッシュや終電間際などの一部ピーク時間帯に限定して、比較的空いているハコを女性専用車に指定するのが、比較的、反発の度合いが少ない選択肢だと思う。その際、列車やハコを指定するルールをできるだけ分かりやすくして、誤乗のトラブルを避けることが前提になる。
後は、フレックスタイム制やオフピーク通勤を浸透させて、ピーク時の混雑度を下げることか。ガラ空きの電車の中で公然と痴漢するような大馬鹿者は、滅多にいないだろうから。

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