Opinion : 続々・空自のマルチロール戦闘機に関する与太話 (2005/8/25)
 

最初は日記の方で書いていたのだけれど、長くなってきたので、Opinion 臨時版にしてみた。


空自の FX がらみで、F-15E とラファールが候補から落ちて、F/A-18E/F、F/A-22、タイフーンが残った、という報道がある。もっとも、空自のオフィシャルな発表ではなくて観測気球らしいという話もあるのだが。

で、このニュースに反応して「F/A-22 じゃなきゃヤダヤダヤダ」と駄々をこねている軍ヲタが多数いるらしい。そりゃまあ、F/A-22 がフルスペックで買えるなら、それに越したことはないと思うけれど、国の財政状態や、他の装備調達計画との兼ね合いも考えないといけない。

それに、個々のプラットフォームの性能だけじゃなくて、システムとしての能力を競う、という発想が出てきてもいいと思うのだけれど。こんなことを書くと戦闘機乗りが怒るかもしれないけれど、戦闘機も AAM も、防空や制空を実現するシステムを構成する、ひとつの構成要素に過ぎないわけだから。

F/A-18E/F では Su-27/30 よりドッグファイト性能で劣る ? だったら、別の方法で勝てるように工夫する、という考え方だってある。どのみち、完全無欠なオールラウンド戦闘機なんて存在しないわけで、どんな戦闘機でも、得意分野があれば不得意分野もある。得意な部分を発揮しつつ、敵の利点を発揮させないのが正しい戦い方というもので、「あっちが持ってるからこっちも」というだけでは、新しいオモチャを欲しがる子供と変わらない。
もっとも、あまりにも隔絶した性能差があれば、こういう論理も成り立たなくなってくるけれど、なにもスカイレイやカットラスやスーパーセイバーでフランカーと張り合おうという訳じゃないのだ。

それに、ASM を積んで対艦攻撃をやるには、F/A-22 より F/A-18 の方が向いている。どの機体でも ASM-1 や ASM-2 のインテグレーションをやらなければならないのは同じで、それなら外部兵装ステーションが多い F/A-18 が有利、という見方もできる。


「F/A-22 じゃなきゃヤダヤダヤダ」と駄々をこねてる人に訊いてみたい。たとえばあなた達がクルマを買うときに、値段や維持費のことを無視して、純然たる性能や好みだけで車種やグレードやオプション装備を決められますか、と。みんながみんな、レクサス LS や BMW M3 やランエボやインプレッサ WRX やフェラーリを買える訳じゃなくて、懐具合やお家の事情に合わせた妥協をやっている。それと同じこと。

あえて露骨に書いてしまえば、F/A-22 を求める意見の背後には「世界一流国家の日本たるもの、常に世界最高の戦闘機じゃなきゃ格好悪い」「日本が中国や韓国より見栄えの悪い戦闘機しか持てないなんて、我慢できない」という心理が少なからず存在するのでは。

ついでに嫌味を書くと、「F/A-22 じゃないとフランカーに勝てない」といってる人が、一方で「五式戦があればムスタングに勝てる」と主張してたら爆笑モノなのだが。

たとえ国防のために購入する兵器といえども、カネのことを無視して考えることはできない。スペックだけしか目に入らず、値段の事を無視して「F/A-22 じゃなきゃヤダヤダヤダ」とごねる声を聞いたら、加藤友三郎が墓の下で嘆くだろう。軍備は国を護るためのもので、軍備のために国を傾かせてしまったのでは本末転倒もいいところ。自国の力だけではどうにもならない部分を補うために、集団的安全保障だとか外交だとかいったものがあるのだ。


追記 (2005/8/26 00:15)

タイミングが悪いことに、これをライブした後になって「シンガポールに F-15E 関連機材や兵装などを FMS 経由で輸出する可能性が云々」というニュースが入ってきた。まだシンガポールの A-4SU 後継機については「選定中」ということになっているが、これが F-15 導入決定につながる動きと仮定すると、日本にも影響があるかもしれない。

目下、F-15 の生産ラインは韓国向けの F-15K だけを手がけている状況なので、F-15K の製造が終われば確定した仕事はなく、クローズになってしまう。だから、シンガポールが F-15 を採用するかどうかで、生産ラインを維持できるかどうかが決まる。
そんな他人任せの状況下で、FX として F-15E を選択するのは不可能な相談で、F-15E が空自 FX で選に漏れたという報道も、このことが背景にあった可能性が考えられる。性能がどうこうという以前に、機体を入手できなければ話にならないのだから。(IOC 獲得が 2010 年代と確定している F-35 にも同じことがいえるが)

もし、シンガポールが F-15 の採用を決めれば、当面は生産ラインの維持が可能。となると、とりあえず F-15E 系列の機体でつないで、将来的には F-35 に持っていく、という選択肢も考えられるのでは。すでに F-15 がしこたまあるわけだから、少なくとも後方支援や教育訓練の見地では他の機体より有利。

ちなみに、F/A-22 のスーパークルーズと高度な電子戦機能、データリンク機能を活用して、駿足で身の安全を確保しながら情報をリアルタイムで送ってくる SIGINT プラットフォームとして使うアイデアがあるらしい。それはそれで面白い話だけれども、「だから日本でも F/A-22 を買え」という話になるかどうかは、また別の問題。

というか、何を導入するにしても、まずは那覇と新田原と築城 (と下地島 ?) を全面的に掩体運用にするのが先だろうと。

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