Opinion : 詰め込みの美学 ? (2005/12/12)
 

多分、記憶を辿ると中学生ぐらいからということになるのだろうけれど、鉄道車輌の形式図を書く趣味があった。過去形で書いているのは、最近では多忙で、とんと書くヒマがないから。

あくまで形式図だから、さほど立ち入った詳細な設計はしないにしても、編成全体の構成からさまざまな接客設備の配置を決めて、それを車体の内部に割り付けて 1 枚の図面にまとめるところまでやる。だから、結構な時間がかかってしまう。学生の時分はまだしも、社会人になってからそこまでやる時間的余裕は、ちょっとない。

通勤電車から特急電車までいろいろ書いたことがあるけれど、あまり自由度が高すぎると途方に暮れてしまう模様。むしろ、限られたスペースの中にいろいろな道具立てを詰め込むために脳漿を絞る方が、自分には向いていると感じた。以前に「制約が厳しいほど面白い (2003/5/19)」で書いたのと似た話で、限られた空間の中で配置にいろいろと工夫を凝らすのは、パズルを解いているみたいで面白い。

鉄道車輌の場合、基本的には直方体の箱だから、空間設計といっても比較的シンプルな部類に入ると思う。ただし、ダブルデッカーは例外。E4 系 Max の階段まわりなんか、現物を見ると惚れ惚れする。<サンライズ> や <カシオペア> になると、もっと凄い。<カシオペア> には乗っていないけれど、<サンライズ> の空間の使い方にも感心した。


最近、ふと思い立って、手空きの時間を使って潜水艦のラフな艦内配置図を書いている。あくまでラフだから、本職の人が見たら突っ込みどころ満載だと思うけれども、これはこれで面白い遊びになる。

それがまた、ロサンゼルス級みたいな巨大なフネは相手にする気が起こらなくて、全長 50m にも満たないような小さい艦を相手にしている。相手が大きすぎるとどこから手を付けていいか分からなくて、途方に暮れてしまうから。つくづく貧乏性というか、ウサギ小屋育ちなんだと実感してしまう (苦笑)。

潜水艦が難しいのは、船殼が円形断面になっているところ。だから、最大幅を基準にして配置を考えると、左右の端に寄っていったときに空間がなくなってしまう。常に立体的に考えないとレイアウトができない。それがまた面白い頭脳ゲームになる。

それに、詰め込みたいものはいろいろある。ついつい「人道的配慮」をしてしまい、「魚雷と一緒に寝るような真似はさせたくないよなぁ」とか「休憩スペースを兼ねて、メシを食う場所はちゃんと用意しないとなぁ」と考えてしまう。さらに、「やっぱり、士官と先任下士官とその他で、寝る場所は分けないと駄目だよなあ」とか「厨房があまり貧弱でもアレだしなぁ」なんてことまで。ちなみに後者では、食堂車の設計が役に立ちそうな気がする。

もちろん、一義的には「いくさぶね」だから、発令所のスペースも十分に取りたい。いまどきの兵器は電子機器が相当な場所を取る。魚雷も、ドイツの潜水艦みたいに発射管に装填した分を撃ち尽くしたら終わりにするのではなく、再装填可能にしたい。となると、魚雷の格納スペースがそれなりに要るし、積み込みのことも考えないといけない。ソナーの配置も死角ができないように考えないといけない。特殊部隊を揚陸させることも考えた方がいいだろうか ? なんてことまで考えてしまう。

さらに、保全上、通信室は独立させないといけないだろうし、ソナー室だって別室の方がよさそうだ。でもスペースは限られてるし… うーんうーん… といって悩むのが面白い。これってひょっとして、マゾ ?


何を設計するときでも同じだけれど、頭の中で考えているだけだと爆発してしまうので、まず失敗してもいいから紙の上に書いてみる。すると、頭の中で考えていたときには予想していなかった問題点が出たり、不明瞭でモヤモヤしていた点がスッキリしてきたりする。それを基にして書き直したり、新しい図を起こしたりする。
あと、既製品に関する図や写真も参考にしながらいろいろやっているうちに、なんとなく方向性が見えてくる (こともある)。

そうやって何かまとまった形ができたら、次はもっと制約をきつくしてみる。なぜか、制限を緩やかにしようとは思わないところが貧乏性たる所以。

こういう遊びには、家の中でモノの収納に頭を使うのと似たものを感じる。ゆったりしたスペースを贅沢に使うというのは、どうも性格的に受け付けられないらしい。手持ちのスペースを最大限に使って詰め込む方が性に合っている様子。こうなってくると、「余裕のない設計ばかりしやがって」といって大戦中の日本機の悪口を書いてしまう自分は何なんだ、ということになってしまう (大汗)。

でも、ポータブル オーディオやノート PC の設計をしている人なんかは、仕事で年がら年中、こういう悩みと格闘しているわけだ。自分の場合は遊びだから、煮詰まってどうしようもなくなったら逃げ出せるけれども、仕事だとそうもいかない。いくら、日本人のスピリットとして「限られたスペースに詰め込むことを追求する」というのがあるのだとしても、仕事でやるとなると、それはそれで大変。

もっとも、中には「余計なものを積めないように小さく設計した」にもかかわらず、積まなければならないものがどんどん増えてしまい、みっともない出っ張りが増え続けている F-16 みたいな例もあるから、難しいもんだと思う。

Contents
HOME
Works
Diary
PC Diary
Defence News
Opinion
Ski
About


| 記事一覧に戻る |