Opinion : GALA 湯沢缶詰事件に関する雑感 (2006/3/6)
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先日、新潟・湯沢の GALA 湯沢で、ゴンドラが強風のために停止して、1,400 名の人が場内に取り残されるという騒ぎがあったのは御存知の方も多いと思う。
ここに限らず、ゴンドラやロープウェイで山の上に人を運び上げて、雪質がいい (または雪がある) 部分だけを滑らせるタイプのスキー場は少なくないので、「他人事ではない」と思った業界関係者は少なくないと思われる。
スキーやスノボをやっている方なら御存知かと思うが、御存じない方のために解説すると、リフトやゴンドラというやつは、滑車によってグルグル回っているケーブル (支曳索) の下に搬器をぶら下げた構成になっている。この搬器が強風によってグラグラ揺れると危険だ。さらに揺れの度が進むと、脱索 (ケーブルが支柱の滑車から外れる現象) が発生して、ケーブルと搬器が落下して死傷者が出てしまう可能性も出てくる。そこまで行かなくても、滑車の溝ではなく縁にケーブルが乗ってしまうと、ケーブルがいたむ。
だから、風が強くなると減速運転になり、さらに風が強くなると運転を停止する。そのため、リフトの支柱には風速計が付いているのが普通だ。これが規制値を超える風速を記録すると、減速運転、あるいは緊急停止ということになる。先日、秋田のたざわ湖スキー場を訪れた際に、自分が乗っているリフトが (強風のせいで) いきなり緊急停止したことが 2 度ほどあった。
実際にリフトやゴンドラが強風に見舞われると、どんなことになるのか。強風でリフトの搬器がグラグラ揺れている様子をデジカメで動画撮影してきたので、御覧いただきたい。場所は、そのたざわ湖スキー場。
吹雪の中で揺れる搬器@たざわ湖 (要 Windows Media Player)
これはフード付きクワッドリフト (4 人乗り) だが、このように搬器が大掛かりになるほど風圧側面積が増えるので、横風による脱索の危険性が高まると思われる。(だから、古いペアリフトの方が風に強いらしくて止まりにくい)
ゴンドラはリフトよりも搬器が大きいから、さらに影響が大きい。実際、風が強いので有名な安比高原に行くと、強風でゴンドラの搬器がグラングラン揺れているのを目撃できる。いや、自分がそれに乗っていたことも何度かある。実際に現場に居合わせると、これはなかなかスリリングだ。
実際にあった笑い話。
屋外のスキー場なら、風の影響を知るために風速計をつけなければならない、というのは分かる。だが、屋内スキー場のザウスにも「法律で決まってるんだから、たとえ屋内でも風速計をつけろ」と押し通したのが、当時の運輸省 (索道事業は運輸省 - 今なら国土交通省 - の所管だから)。屋内スキー場が強風の影響を受けるはずがないのに !
結局、その後の規制緩和で風速計が必須でなくなり、ザウスでは「屋内リフトの風速計」という珍無類なブツを取り外して、どこかに移設したらしい。なんだかな。
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と、そんなわけで、強風になったらゴンドラの運行を止めるのは仕方がない。GALA 湯沢のゴンドラはかなり険しい地形の上を上っているから、これが脱索なんか起こした日には、大惨事間違いなし。それだからこそ、朝のうちから風が強い場合には、とっとと営業中止を決定して近所のスキー場に振り替えをやっている。自分も今シーズン、これで 2 度ほど振り替えになった。
最初から営業を止めてしまえば問題はないが、問題は途中から風が強くなった場合。特に先日の騒動の場合、利用者が多い週末にぶつかったことが騒ぎを大きくした。
例の事件より数日前の 2/21 にも強風でゴンドラが減速運転になり、平日にしては長い行列を作ってしまったが、ゴンドラが完全に停止しなかったことと、人が比較的少なかったことに救われている。
また、ずいぶん前に「山頂置き去り事件」が発生したときには、影響を受けた人は 100-200 人程度と少なかったらしい。つまり、今回の一件が未曾有の騒ぎになってしまったのは、人が多い週末と強風がかち合って、多数の人が取り残されたことに起因しているとみていいのではないか。
今回の場合、コースがつながっている石打丸山の山頂まで雪上車や圧雪車で人を運んで、そこから石打の山麓まで滑り降りた人が少なからずいたらしい。ただ、コース内容を考えると、この手を使えるのは中・上級者だけ。だから、初心者・初級者は脱出手段がなく、GALA 側に缶詰になってしまった。
(ちなみに、南隣の湯沢高原はロープウェイで連絡しているから、強風対策の逃げ道としては無意味。それに、湯沢高原の下山ルートは相当に狭くてつづら折れで難しいらしいし)
「強風でリフトやゴンドラが止まる」というのは、相手が自然現象だからどうにもならない。それで身動きがとれなくなった人に、どう対応するかが重要。
少し前なら、後で Web に書き立てられる心配が必要だったけれど、今では携帯電話を使って掲示板や blog、mixi なんかに "実況" する人が出現する可能性を考えなければならない。だから、対応がまずいと、あっという間にそのことを全国ネットで晒されてしまう。そういう原因でイメージダウンしてしまう事態を避けるには、先手を打たないと。
風が強くなってきたのは風速計を使えば分かるのだから、その時点で降りられなくなる人が出ることを前提にして「今、ゴンドラを止めなければならなくなったら、どう対処するか」を常に考えるようにしていれば、もうちょっと不満を抑える対応ができたかも、と思う。
高速道路なんかでクルマを走らせているときに、「今、前のクルマが事故ったらどっちに逃げるか」と考えながらクルマを運転していることがある。考え方はそれと同じ。場内がどれぐらい混んでいるかは見れば分かるのだから。
となれば、「ベースに下ろせない人が出る」ということを前提にして、早めに整理券を配った上で屋内に収容して、さらに何か食い物を出しておく。これで、かなりの不満を抑制できるのではないだろうか。所詮は後知恵かもしれないけれど、大半の人はそれで納得してくれるんじゃないだろうか ?
追記 :
まだ、GALA 湯沢ができてから十数年しか経過していないから当分は関係ない話だけれど、今のゴンドラ「ディリジャンス」を架け替えることがあったら、是非ともフニテルにしてもらいたいと思う。日本では箱根や蔵王、谷川岳で使っているけれど、あれは普通の索道より横風に強い。
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