Opinion : 続・意外な兵器輸出国 (2006/6/12)
 

昨年 9 月に「意外な兵器輸出国」という記事を載せたら、予想外の好評で多くのアクセスをいただいた。今年 5/1 付の「松下電器はパソコン兵器の回収を、だって !? 」にぶっちぎられるまでは、おそらく過去最多アクセスだったと思う。

その「意外な兵器輸出国」に、「成城トランスカレッジ !」とかいうサイトが喧嘩を売ってきた (問題の記事)。もっとも、わざわざリンクを張って槍玉に挙げておきながら、後でひっそりとリンクを外しているのだから竜頭蛇尾。
「福島瑞穂党首の迷言」について取り上げたサイトや blog はゴマンとあるのに、その中からわざわざ、この話題を冒頭のつかみに利用しただけの記事に噛み付いたのだから御苦労な話。その理由はひょっとすると、「中立国が兵器輸出をガンガンやっている」という事実が気に入らなかったから、かもしれない。

もっとも、兵器輸出に熱心なのは中立国に限らない。金額ベースでいうとアメリカが圧倒的にトップ。ただ、米英仏露中ぐらいしか兵器輸出国が存在しないかというと、そんなことはない。前回は、いわゆる「中立国」とその周辺を中心に取り上げたけれど、それ以外にも兵器輸出国はわんさとあるし、製品が日本に入ってきている事例も少なくない。

ということで前回と同様、手当たり次第にリンクを張りながら各国の事例を紹介してみたい。輸出というより、防衛関連産業に熱心な国という方が当たってるかも。


まず、いわゆる平和活動家の皆さんが「戦後処理については日本と対極にある」といって持ち上げている、ドイツ。そのドイツは、実は兵器輸出の世界では大物の部類に入る。得意なのは潜水艦と水上戦闘艦、AFV、銃器、電子機器の類。ドイツだけに、精密な製品に強い ?

艦艇建造所としては、HDW (Howaldtswerke Deutsche Werft)LurssenThyssenKrupp AG が御三家。HDW は潜水艦に強く、ここの潜水艦は世界各地で多数のカスタマーを抱えて (手近なところでは韓国がある)、ベストセラーになっている。Lurssen はミサイル艇などの小型高速戦闘艇に強い。
また、ドイツ名物というと水上戦闘艦の MEKO シリーズがあるが、これがまた世界的ベストセラーになっている。ウェポン・システムをモジュラー化して「お客様がお望みの製品を搭載できます」とやっているあたり、なかなか商売がうまい

そして銃器・火砲。日本の SAT も含めて、世界各地の対テロ部隊が競って導入している 9mm 短機関銃・MP5 は Heckler & Koch の製品だし、ここは G3 などの自動小銃も海外カスタマーが多い。そして、最近だと 27mm 機関砲でおなじみの Mauser も、歴史と伝統ある銃器の名門。
火砲の分野では、陸自の 90 式戦車や米軍の M1A1・M1A2 戦車がライセンス生産で導入している 120mm 滑腔砲 L44。これは Rheinmetall DeTec AG 社傘下の RLS (Rheinmetall Land Systems) 製。

「米軍が劣化ウラン弾を撃っている戦車砲は、実は環境活動家や平和活動家の人が贔屓しているドイツ生まれの製品だったんだよ」
「な、なんだってー」

そういえば、福島党首には「日本はドイツを見習うべき」発言の噂もあるらしいけれど、真偽の程は知らない。とでも書いておかないと、またぞろ「成城」が喧嘩を売ってこないとも限らない :-p

AFV メーカーとしては、RLS と KMW (Krauss-Maffei Wegmann) が双璧。Leopard 戦車は西側諸国のベストセラーだし、NBC 偵察車 Fuchs は米軍にも導入実績がある。やはり「戦車といえばドイツ製」だ。長射程が自慢の PzH2000 自走砲もあるけれど、これはオランダぐらいしか買い手がいない。
そういえば、どこでも走れるのが自慢の UNIMOG を流用した装甲車・Dingo シリーズというのもある。メーカーは KMW。イスラエルがこれを買おうとして未遂に終わった。

そのほか、艦艇用電子機器の STN ATLAS Elektronik GmbH。英 BAE Systems 社の傘下にあったが、EADS 社の傘下に移ることになった。そのほか、戦車用の履帯なんかで有名な Diehl は、実は電子機器メーカーやミサイル・メーカー (Diehl BGT Defence) を傘下に抱える防衛コングロマリット。

ジェット・エンジンやディーゼル・エンジンでおなじみの MTU Friedrichshafen GmbH は、戦車や艦艇のディーゼル・エンジンに強い。国鉄の DF50 で採用例がある MAN AG Startseite もドイツのエンジン屋で、大戦中は U ボートのエンジンで有名だった。今だと、軍用トラックと、そのエンジンを作っている。
確かに、ドイツ製のディーゼル・エンジンと聞くと「なんとなく良さそう」な感じがする (謎)。


「次はイタリア抜きでやろうぜ」なんて意地悪はしないで、イタリアについても見てみよう。イタリアの場合、防衛関連産業の多くは Finmeccanica 社の傘下にまとめられている。

多分、知名度の高さでは拳銃・小銃の Fabbrica d'Armi Pietro Beretta S.p.A. が一番。米軍の制式拳銃も、ここの製品 (ちと不評だけど)。

日本でもっとも身近なのは、実は海上自衛隊の艦載砲を大量に供給 (ただしライセンス生産) している OTO Melara かもしれない。米海軍の O.H.Perry 級ミサイルフリゲートが搭載している Mk.75 も、実はここの 76.2mm コンパクト砲をライセンス生産したもの。
OTO Melara は艦載砲の名門で、さらに AFV やウェポン・ステーションなども手がけている。かつて、76.2mm 艦載砲を陸上に転用して、自走対空砲 Otomatic なんてゲテモノも作った。(もっとも、ドイツでも PzH2000 自走榴弾砲の砲搭をそのまま軍艦に載せてテストしたことがあるから、あまりイタリアのことを笑えない)

航空機だと、米軍に C-27J Spartan を売り込み中の Alenia Aeronautica、ジェット練習機をあちこちに輸出している Aermacchi、メンテナンスや改造がメインで、イタリア空軍向け KC-767 の改修なんかを引き受けている Alenia Aeronavali

そして、MV Agusta と聞いてバイクしか思い浮かばないのは片手落ち (「汚れた英雄」の読み過ぎかも)。ここは軍用も含めてヘリコプターでも有名だった。その後にイギリスの Westland 社とつるんだ関係で、現在は AgustaWestland となっている。海自の新型掃海ヘリ (MCH-101)、そして米海兵隊の新型大統領専用ヘリ (VH-71A) は、ここの EH101 Merlin がベースだ。民間向けのヘリも、いろいろ日本に入ってきている。

艦艇は Fincantieri がある。ただし、イタリア製艦艇の輸出はあまり目立たない。ここは豪華客船なんかも手がけている。そして、電子機器やシステム・インテグレーションの SELEX Sistemi Integrati。この辺は最近だと、フランスとつるんで艦艇や艦載ウェポン・システムの共同開発をやっている。


そのドイツとイタリアが加勢していた、フランコ将軍の国・スペインはどうか。

スペインで主役を張っているのは、EADS-CASA。ここは、Eurofighter Typhoon にも加わっているが、主として小型の戦術輸送機で有名。最近では、アメリカと喧嘩中のベネズエラから、CN-235 と C-295 を受注している。もっとも、CN-235 は米沿岸警備隊からも受注しているし、米陸軍と米空軍の戦域内輸送機調達計画・JCA (Joint Cargo Aircraft) にも CN-235 と C-295 を売り込んでいるのだから、欧州情勢は複雑怪奇。

造船所は Navantia。かつては Izar といっていた会社で、中国に軽空母を売りつけに行って未遂に終わったことがある。その Navantia は、ノルウェー海軍のイージス艦を建造中、さらにオーストラリア海軍に強襲揚陸艦を売り込み中。また、フランスの DCN とつるんで開発した潜水艦・Scorpene 型がインド、マレーシア、チリから受注を獲得している。もちろん、自国向けの艦艇もたくさん建造している。

あとは、火砲と AFV を手がけている General Dynamics Santa Barbara。もともと地場資本だったのが、米 General Dynamics 社に買収されて GD グループ傘下に入った。つまり、オーストリアの Steyr-Daimler-Puch やスイスの MOWAG とお仲間ということ。ただし、輸出市場ではあまり目立っていない。


いかん、調子に乗って書いていたら分量が増えすぎた。以下、駆け足。

デンマークといえば Terma A/S。デンマークが F-35 計画に参画している関係で、F-35 のコンポーネントをいろいろ受注している。また、AN/ALQ-162 電子戦装置を内蔵した「ECM 兵装パイロン」や、チャフ/フレアー・ディスペンサーを内蔵した兵装パイロンを F-16 用に開発したことでも有名。

いきなり場を南米に移して、ブラジルの Embraer。ここの旅客機は、早期警戒機や電子戦機のベースになっている事例が結構多い。EMB-145 ベースの早期警戒機はメキシコやギリシアに導入事例があるし、ずっこけた米陸軍の ACS (Aerial Common Sensor) 計画では、プラットフォームが ERJ-145 だった。また、Super Tukano みたいな軽攻撃機にも手を染めている。

同じアメリカ大陸で、カナダ。世界各地からシミュレータを受注している CAEは、もちろん軍用機のシミュレータも手がけている。
それと、忘れちゃいけない GDLS (General Dynamics Land Systems) Canada。もともと General Motors の傘下だったのが、後で GD 傘下に移った。LAV シリーズのベースは、同じ GD 傘下の MOWAG 社製 Piranha だから、現体制の方が収まりがいい。ここは、米海兵隊の LAV-25 や米陸軍の Stryker (LAV-III) を手がけている。オーストラリア軍の ASLAV も、ベースはここの LAV。そういえば、イスラエルが Stryker を欲しがっている話、どうなるだろう ?

そのイスラエルは、インドとのコネクションが強まっている。実は、米軍にもイスラエル製品はいろいろあり、イラクが「イスラエルが参戦している」と勘違いさせられたことも。
戦闘機、人工衛星、弾道弾迎撃ミサイルまで作る IAI、各国の古い戦闘機をアップグレードするというとしゃしゃり出てきてレーダーを売りつける IAI/Elta、陸戦兵器なら何でもやる上にトルコ陸軍の M60 戦車をアップグレードしている IMI、自走砲なんかを手がけていてインドにも売り込みをかけていた Soltam などなど。
いずれも対外輸出にはなかなか熱心。中国に Phalcon 早期警戒レーダーを売りつけそうになるなど、ときどき要らんものまで売りつけに行く悪癖がある。

そして、Spike 対戦車ミサイルをポーランドやスペインから、ターゲティング・ポッドや M2 Bradley 用のリアクティブ・アーマーをアメリカから受注するなど大活躍中の Rafael Armament Development Authority。エレキ系では、電子機器メーカーの Elbit Systems や、通信機メーカーの Tadiran Communications といった渋い脇役もいる。
古い戦闘機の改修というと、Elbit Systems もよく出てくる。ルーマニア空軍の MiG-21 を近代化改修したのがここ。

お隣のヨルダン。KADDB (King Abdullah II Design and Development Bureau) が陸戦兵器をいろいろ手がけている。ただし、輸出には至っていない。それでも、新生イラク陸軍・空軍向けの装備や、人員の訓練をかなり引き受けているのは知られていない話。

南アフリカ。最近は経営が苦しいけれど、Denel の大砲や自走砲は侮れない。過去に G5 や G6 といった超長射程が自慢の火砲が、中東諸国から受注を得ている。かつてはイラク軍も G5 を持っていたから、湾岸戦争の時には聯合軍の作戦にも影響した (かもしれない)。
ミサイルも、Denel 傘下の Kentron が開発した Umkhonto 艦対空ミサイルが、自国以外にフィンランドで採用された実績がある。空対空ミサイルの A-Darter や R-Darter もあるが、こちらのセールス状況はよくない。

韓国。なんとトルコ軍に Samsung Techwin 製の K9 Thunder 自走砲を買わせた (運用実績のほどは知らんけど)。造船では日本・中国と並ぶ御三家だけに、インドネシア軍からメンテナンスやアップグレードを請け負うなど、艦艇分野にも食い込んでいる。
KAI (Korean Aerospace Industries) は T-50 練習機を開発して売り込み中ながら、まだ輸出は獲得できていない。そういえば、米韓共同開発の K1 戦車は「輸出のポテンシャルがある」といわれつつも未遂に終わっている。もっとも、KAI 社の KT-1B Wong Bee 練習機はインドネシアで採用実績がある。

現在は自国向けの「公共事業」で食っているものの、ひょっとすると輸出市場で化けるかもしれないのが、シンガポールとトルコ。前者は Singapore Technologies グループが航空機関連や AFV、火砲を手がけている。後者は FNSS、BMC、Otokar などの AFV メーカー、それと AselsanRocketsanHavelsanAyesas といった電子機器関連などのメーカーが育ってきている。


そんなわけで、いわゆる国連常任理事国のことばかりに気をとられていると、それ以外にも兵器輸出で食っていたり、あるいは防衛関連産業の育成に熱心だったりする国がいろいろあるという事実を見落としてしまう、というお話。

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