Opinion : テポドン騒動に絡めて与太話 (2006/6/26)
 

とっくにケリがつくかと思ったけれど、未だにケリがつかないので、今週もテポドンに絡めて与太話。


誰がいいだしたのか、北朝鮮がテポドンを弄んでいる様子を指して「撃つ撃つ詐欺」と呼んでいる由。確かに、「テポドンを撃つぞ」と脅迫して交換条件を引き出しておきながら、状況が変わると「核を保有しちゃったもんね」といいだすあたり、詐欺師といわれても仕方ない。こうやって、周辺諸国を脅かして自国の生存を図るためのカードを増やしている。

可笑しくて仕方ないのは、その北朝鮮のやり方を弁護している人が、よりによってこの日本国内に存在していること。
もっとも、上には上がいるもので、かつて「1 発だけなら誤射かもしれない」と書いた新聞もあった。書いた人も書いた人なら、それをそのまま世に出したらどんな反応が返ってくるかを読めずに通過させてしまった、社内のチェック体制もどうかと思う。

どうせなら、Northrop Grumman 社が開発中の KEI (Kinetic Energy Interceptor) とまではいわないにしても、せめて GBI (Ground Based Intercepter) や ABL (Airborne Laser)、SM-3 ブロック IB あたりが完全にモノになってから「撃つ撃つ詐欺」を仕掛けてくれれば、MD の実弾標的ができて、いいテストになったのに (少なくとも、指揮管制システムのテストにはなる)、と不謹慎なことを考えてしまった。

そういえば、誰とはいわないけれど、その MD に反対している人がいたような。

どこの要撃フェーズをとっても、MD 関連の装備を使って北朝鮮の陸地を占領することはできない。それどころか、北朝鮮の領土にすら足を踏み入れることはない。しかも、弾頭は基本的に運動エネルギーを使った直撃破壊型なのだから、そいつが間違って地上に落下したところで、蒙る被害はテポドン以下。コンクリート詰めの 500lb 爆弾をぶつける (米軍がイラクでやっている) のと、どっちがダメージが大きいか。

つまり、MD というのは弾道ミサイルを要撃する以外には、なーんの役にも立たないモノ。だから、それが脅威になるとしたら、MD 自身が実現するつもりの成果に関連する話以外はあり得ない。

以前にもどこかで書いたように、北朝鮮 (& 中国) にとって MD の何が脅威かというと、弾道ミサイルと核弾頭を組み合わせた「究極兵器」の脅しがきかなくなる点に尽きる。せっかくの弾道ミサイルなのに MD で叩き落とせる、なんてことになってしまったら、テポドンを弄んで「撃つ撃つ詐欺」をやるわけにも行かない。核弾頭装備の ICBM/IRBM を使った脅しも効きにくい。なるほど、それは困りそうだ。

つまり、MD に反対している人は、中国や北朝鮮が保有している弾道ミサイルが無力化、あるいはそれに近い状況になるのを怖れていて、それで MD に反対しているのではないか、ということになる。えーと、あなた達は一体全体、誰の味方で、誰を護りたいのですかな ?

え ? 「中国が MD に対応して強力な ICBM を開発することになり、軍拡に拍車をかけるから駄目」? 別に MD があろうが無かろうが、中国は軍拡に熱心ですが何か。それに、軍備に金をつぎ込みまくることでソ聯と同じ道をたどるかもしれないけれど、そんなことになっては困るから MD に反対すると ?


反米宣伝といえば、傑作なのは「日本に寄港している米海軍の軍艦の多くが核ミサイルを搭載している」といって、イージス艦なんかの入港反対デモをやる人が未だに存在すること。どうせでっち上げるなら、もうちょっとマシな理由を考えてくれませんかね。しかも、先週にも触れたように、核云々で抗議するのは米軍だけで、その他の国はスルーだし。

前に別館で書いたように、イージス艦に搭載可能な唯一の核弾頭付きミサイル、BGM-109A トマホークは、START2 で撤収が決まった関係で、とうの昔に倉庫行き。つまり、核弾頭装備のミサイルそのものが現場に存在しない。しかも、通常弾頭のトマホークが存在しているのは湾岸戦争のおかげで知れ渡っているのだから、「トマホーク = 核弾頭」と主張することもできない。

トマホークはモジュラー構造で改造が簡単にできるから、倉庫行きになった BGM-109A は、ひょっとすると通常弾頭型に改造してしまったかもしれない。あれだけ実戦でトマホークをバンバン使っているのだから、使わないと分かっている BGM-109A を倉庫で寝かせておいたら、GAO (General Accounting Office) の怖いおじさんに叱られる。なにせ 1 発 100 万ドルはくだらないのだから。

それとも、大昔の ABM を思い出して、弾道ミサイルの要撃には核弾頭を使うという「1960 年代の常識」で記憶が止まっているのか。しかしそれをいいだすと、核弾頭による弾道弾要撃にはソ聯の方がよほど熱心だったという事実が出てくるのだが。

ひょっとして、「イージス艦に核兵器」と主張する御仁は、核弾頭装備のタロスやテリアが未だに現役だと思っているのだろうか。どちらも弾体が長すぎて Mk.41 VLS に入らないし、そもそも、とうの昔にタロスもテリアも引退している。核弾頭装備のスタンダードを開発する計画は 21 年前に中止された。というわけで、「イージス艦に核弾頭」という言いがかりは成立しない。残念でした !

別館に書いたネタの使い回しだけれど、そんなにいうのなら、イージス艦の艦上に木と猪 (亥) を並べて「木亥兵器」を置いておけばいい :-)

それとも、これは「ツンデレ」というやつで、イージス艦の寄港に反対するデモとみせかけて、実は大好きなイージス艦を喜び勇んで見物に行くのが本当の趣旨なんだろうか。
そうなると、「B-52 が艦船から発進して云々」の発言でおなじみのあの人も一種のツンデレで、実は内心、B-52 を搭載できるような超巨大空母の出現を渇望しているんだろうか (まてこら)。


もっとも、テポドン騒ぎに乗じて「こちらから先制攻撃を」と主張する人がいるのも困りもの。そんなことをやったら、今度は日本が悪役にされる。先週書いたように、実弾頭装備のテポドンが着弾しても、NBC 兵器を搭載していなければ大した被害は出ないのだから、先に北朝鮮に撃たせて北朝鮮を悪者にしないと、日本の立場がなくなる。

こういうときに重要なのは、いかにして相手を悪役にして立場を悪くさせるか。中露がテポドンの一件で北朝鮮に露骨に味方しないのも、それをやったら自分まで悪者にされると分かっているから。

北朝鮮を弁護したり、この件に乗じて反米宣伝を加速させたりするのも問題だけれど、だからといって「政府の弱腰」を突き上げたり過剰な強攻策を主張したりするのも、それはそれで国益を損ねるんじゃなかろうか。実は、そうしたやり方を煽ること自体、日本の立場を悪くするための、某国が仕掛けた世論操作工作かも知れないよ ?

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