Opinion : キャリアセレブ塾という勘違い記事 (2006/9/4)
 

なんか、フザけた記事を載せている人がいるというので、見物に行ってみたらひっくり返りそうになった。それがこれ。

白河桃子の「"キャリモテ" の時代」(第 3 回)
(Working Woman キャリアセレブ塾):NBonline (日経ビジネス オンライン)

その「キャリアセレブ塾」という陳腐なタイトルはどうにかならないのか。

ちなみに、Microsoft Bookshelf で「celebrity」の日本語訳を調べると、「名声, 高名。(マスコミなどをにぎわす) 名士, 有名人」とある。後で取り上げるように、記事の内容ときたら「名声」とも「名士」ともトンと縁がなさそうだけれど、なにせ貧困国援助の黒歴史「ホワイトバンド」を「セレブバンド」と称してしまう週刊誌があったような国だから、「セレブ」という言葉も大安売り。


では、いったいどういう記事なのかというと「1960 年代生まれのキャリア女性が結婚できない理由」がメインテーマ。ま、自分も 1960 年代生まれの独身だし、身辺にも同年代の独身女性が何人かいるわけで、そんなにぶっ飛んだテーマではない。

記事を書いた白河氏は、冒頭でこうぶちかます。

「いい女になればなるほど、いい男が寄ってくるなんて大間違い」という一言に深くうなずいた私も、気がついていた。「そうだ。日本女性の進化に男性はついてこられなかったのだ」ということに。

ずいぶんと、見下げた物の書き方をしてくれるじゃないか。あん ?
では、その「日本女性の進化」とは何なんだろうか。たまたま自分は外資育ちだから、性別とは無関係にバリバリ仕事をする女性ならたくさん見ている。そのこと自体に難癖を付けるつもりはまったくないのだけれど、白河氏の論理爆裂ぶりには、ちと目を覆いたくなる。なにせ、引き合いに出しているのが、こんな話だったりする。

「東京の 30 代男性の 50% 以上がシングルなんだよ」と言っても、独身女性たちが「どこ ? どこにいるの ?」と言うのも当たり前。お互いに、全く違うところに "棲息" しているのだ、多分。例えば女性たちが、話題のシェフが腕を振るう最新のフレンチレストランで「やっぱり生のトリュフが食べられる季節は逃せないわ」などと言っている時、シングル男性たちはマンガ雑誌を片手に牛丼を食べているのかもしれない。

両者の間には、よほどのことがないと愛は生まれない。

だいたい、「話題のシェフが腕を振るう最新のフレンチレストラン」なんて書いてしまうところが痛い。要するにそれは、雑誌などが仕掛ける流行に乗っかってワイワイやっているということではないのか。話題になっていようがいまいが、美味しいものは美味しい。せめてこれが「自分で美味しい店を求めて食べ歩きして云々」ならよかったのだけれど、この文面ではトレンドとやらに乗っかっているだけとしか見えない。バブルの頃に、いちはやくヌーボーを味わうのが流行ったのと同じ。

そんなに生のトリュフを食べたかったら。フランスに行って、自分でブタさんを引き連れてトリュフ堀りをすればいいじゃないか。そうすれば獲りたてにありつけるぞ。(注 : トリュフは地面の中に埋もれているので、特別に訓練したブタさんに探してもらう。昔は犬だと駄目という話だったけれど、最近は犬でも探せるらしい)

ついでに書けば、「マンガ雑誌を片手に牛丼」云々という対比の仕方が痛い。オトコたるもの、誰もがマンガと牛丼を愛好しているとでもいうのか。ふざけるな。ステレオタイプにも程がある。その程度の低レベルな書き方しかできないのに「オトコが進化していない」とは片腹痛い。

当サイトをいつも御覧いただいている皆さんならご存じの通り、私は数年前からスキー狂と化しているけれども、これは雑誌が煽ったわけでもなければ、トレンドとやらになっているわけでもない。ハイソなイメージだからやっているというわけでもない。
つまり、他人から見てどうとかいうことはまったく考えていない。うまいこと火を付けてくれた方がいて、やってみたら面白くてハマってしまって、年間 7 ヶ月滑る生活になってしまったというだけの話。個人的にはトリュフよりも圧雪したてのアスピリンスノーの方がよほど嬉しいけれど、それはそれとして。

グルメでもスポーツでもその他の趣味でも何でも、自分が主体的に楽しみを見つける分には「進化」と称してイイと思う。でも、メディアが仕掛ける流行に乗っかってハイソ (これも古い言葉だな) な気分を味わって「私ってセレブー♪」なんて思っているのだとしたら、そいつはとんだ勘違い。そんなもん、こっちから願い下げだ。寄るな触るな近寄るな。(幸い、私の身辺にはそこまでトチ狂った人はいないが)


白河氏のいうには、1960 年代生まれのキャリア女性が結婚できないのは「男に期待しすぎた」からだという。つまり「オンナの進化についてこられないオトコが悪い」ということらしい。さらにこうくる。

周りの独身女性たちと話していると、「(結婚したい男性は) 尊敬できる人」というキーワードが必ず出てくる。実は "負け犬世代" が望んでいるのは「男女同権」の男なんかじゃない。仕事バリバリの "負け犬世代" から見て、さらに「仕事でもそれ以外の点でも、自分よりも上の男」が好みなのだ。
(中略)
この好みは、彼女たちの母親世代から刷り込まれたことなので、どんなに女性が強くなり経済力がついたとて、刷り込みからなかなか逃れられない。この世代の女性たちは、「私たちが頑張っていい女になれば、男ももっと頑張っていい男になるはず」と期待していた。女性と一緒に男性も成長していくものと信じて疑わなかったのだ。
(中略)
日本の男性は「自分と同等に頑張る」女性には、どうも腰が引けてしまうようだ。
(中略)
しかし今からすれば、「男性ももっと頑張るはず」というのも、女性たちの思い込みに過ぎなかった。男性たちは、変わる必要性など全く考えてもいなかったのだから。

えーと、なんですか。つまり、「私達はこんなに頑張っているのに、進化しているのに、それについてこられないでマンガ片手に牛丼なんか食べてるオトコ達が悪いのよ」「自分よりも上の男を目指すように刷り込んだ親の世代にも原因があるのよ」ということか。みんな周りが悪いんですかそうですか。

そういえば、こんな私でも、「尊敬してます」といってくれた年上のお姉様がいたけれど、それについて詳しく書き始めると面倒なことになるのでパス。あしからず。

どこかで聞いたようなロジックだと思ったら、景気が悪いのもイラクで戦火がやまないのも巨人軍が優勝できないのも郵便ポストが赤いのも、世の中の悪いことはみんな「小泉が悪い」「自民党が悪い」と書いてしまうどこかの夕刊紙とよく似ているじゃないか。単純に白黒二元論でぶった切って誰かに責任を押しつけて、想定読者層に媚を売っているところがそっくり。

さらにいえば、自分より上のレベルのオトコに引っ張ってもらうのは OK で、一緒にレベルアップしていこうというのは NG ですか。と突っ込んでみたい。つまりはそれって、「玉の輿願望」と本質的に違わないんじゃないか ? かりにも「キャリアセレブ塾」と銘打った記事の内容がそれか ?


結局のところ、この記事のどこが痛いのかというと、「進化」の内容として引き合いに出している例がとんでもなく陳腐なこと、「オトコ」というものを性別や生まれた年代で単純にぶった切っているところ、そして読者に対する媚が露骨なところじゃないかと思った。

そりゃ確かに、自分より下のレベルの女性を求める男性というのはいると思う。だから、「自分より下のレベルの女性を求める男性と、自分より上のレベルの男性を求める女性がミスマッチ」というのは分かる。それだけ書いておけばいいものを、トリュフとか牛丼とかいう陳腐な対比を行ったり、「同年代の 1960 年代生まれは駄目」「もっと下の世代なら」と単純に年代でぶった切ったり、メディアが仕掛ける結婚モデルがうまく機能していないといい出したり、それらをひっくるめてオトコというものを見下げたことばかり書いたりするからおかしくなるわけで。

とどのつまり、この記事は「いいオトコがいないのよー」と愚痴を垂れている人の共感を煽り、「貴女は悪くない。悪いのは貴女の周りだ」と自己正当化の理由を用意しているだけ。いっちゃ悪いけど、この記事を読んで共感・納得しているうちは売れ残ると思う (暴言)。

まずは、今の自分の生活を手持ちのリソースの範囲内で充実させること。その「充実」の基準となる識見は、外部から押しつけられたものではなく、自分で培うこと。そんなこともできないで、何が「進化」かと。

男女の別を問わない話だけれど、メディアが仕掛ける話題とか流行とかいうところから一歩距離を置いて、「自分はどうなのか。自分が本当に必要としているのは何なのか」を考えること。それと、性別や既婚・未婚の別に関係なく、自分が今の生活を主体的に充実させているかどうか考えてみることも必要なんじゃないですかネ。

今回のネタ元 :
障害報告@webry

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