Opinion : 観艦式予行に行ってきたよ (2006/10/23)
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ネタに困ったから、これでいこう (半分ウソ)
T 大学戦史研の御厚意に甘えて乗艦券をいただき、22 日の観艦式予行に行ってきた。
乗った艦は、護衛艦隊旗艦・たちかぜ (DDG-168)。以前、舞鶴地方隊の展示訓練におじゃましたときに乗ったのが、あまつかぜ (DDG-163)。つくづく、現役最古参の DDG に縁があるようで (笑)
護衛艦隊旗艦だから、艦内には「護衛艦隊司令部 作戦室」なんて看板を掲げた部屋もある。あれ、看板にカバーを掛けといた方がよかったんじゃなかろうか。
印象的だったのが、騒音の少なさ。民間のフェリーなんかに乗ると、船内のどこにいてもエンジンの轟音から逃れられないものだけれど、いくら全速を出していないとはいえ、「たちかぜ」はずいぶんと静か。さすが、ASW のために静粛性を要求されるだけのことはありますな。
午前中の移動中にやっていた、Mk.13 ミサイル発射器の装填デモも、メカヲタクとしては面白かったもののひとつ。ミサイルの出し入れがずいぶんと迅速で、なるほど、連装の Mk.22 に代わって C.F.Adams 級で途中から採用されただけのことはあるわい、と変な感心の仕方をしてしまった。この Mk.13、艦内側には配管やバルブがいろいろ取り付いていたけれど、圧縮空気か何かで駆動しているんだろうか ?
そんな話はともかく、やはり洋上を走っている軍艦はいい。特に観艦式となると海上自衛隊のオールスター出演だから、地方隊の展示訓練とはスケールが違う。これだけ多数の軍艦がフォーメーションを組んで走り回り、陣形変換や針路変更、さらには (移動式観艦式だから当然とはいえ) 単縦陣のままで 180 度の針路反転をやって観閲部隊の単縦陣後方にピタリとつけてみせる等々、運動の見事さに惚れ惚れ。
だいたい、クルマと違ってフネの操縦は難しいと聞く。ガタイが大きくて勢いがあるから、なかなか進み出さなかったり、速力を上げたら行き脚がつきすぎて止まれなくなったり、舵を切ったら行き過ぎたり。でもって、海軍は複数の艦が陣形を組んで動くのが当然だから、指示通りに制形できないで飛び出したり遅れたりすれば「やいやい、この山船頭。ただいまの操艦者名知らせ」とどやされるのがオチ。実際、帝国海軍には自艦を僚艦にぶつけて「陸軍大佐」とあだ名を付けられた戦艦艦長もいたわけで。
写真を撮るのは遠慮したけれど、帰路に艦橋でしばらく様子を見ていたら、これがまた面白かった。海図に書き込んだ予定針路を基にして変針点を予告するやりとり、周囲にいる他の船舶を記録して、レーダーなどで測的して衝突回避を図る際のやりとり、そのレーダーのコンソールで、トラックボール (マウスより具合がいいのか、艦載用のコンソールはみんなトラックボールを使っている) を自在に操りながら機器に指令を出したり情報を読み取ったりする手さばき、これがまた惚れ惚れする。
そういえば、海図台の上に LORAN と GPS の受信機が並んで取り付けてあって、表示している緯度・経度が微妙にずれていたのは御愛敬。メインで使っているのは GPS だそうだけれど、それはそうだろうなと。でも、いざというときの予備として LORAN があれば、もっと心強いかも。
もうひとつ。なるほど、本物を見るのがいちばんだなと思ったのが、LCAC の騒音のでかさ (笑)。そんなに海が荒れていたわけでもなかったのに、激しく船体を動揺させながら突っ走っていた。もっと荒れた状態で全速航行したら、とんでもない乗り物になりそうだ。あれで被災地から救出されることになったら、救出の過程も大変だなと思った。でも、いざ自分が救出される立場になったら、爆音をたてながらやってくる LCAC が神のように見えるに違いない。
海上自衛隊としても、実際に海の上で活動している様子を見てもらう貴重な機会ということで、広報には力が入っていた様子。小さい子供がいるといちいち声をかけていたり、登舷礼の由来について解説していたりして、なんともいい感じ。
普段、多くの国民にとっては馴染みの薄い世界だけに、こういう機会を通じて少しでも知ってもらおうとするのは重要。日本周辺が何やらきな臭くなってきている昨今だからこそ、こうやって国防の第一線にいる人達が「自分たちの活動を理解してもらおう」と努力するのは、とてもいいことだと思った。
昔は「サイレント・ネイビー」なんていっていたけれど。「男は黙ってサッポロビール」「海軍は黙って国防の任務に邁進」だけでは、一見したところでは格好良さそうでも、下手すると殻に閉じこもって独りよがりになってしまう危険性がある。逆に、外部からの見た目ばかりを気にするようになってしまうと、もっとよくないけれど。要は両者のバランス。
それに納税者の立場からすると、自分たちの税金を使って建造・維持されている戦力が実際にどんなものなのか、どんな風に機能しているのかを見る機会がないのでは、これまたよろしくない。「見る義務がある」とまではいわないけれど、「見られるものなら見ておいた方がいい」とはいえる。
いちばんよくないのは、「自分たちがよく知らないところにいて、こちらには顔を見せてくれない、物騒なモノを抱えている怖い集団」という脳内妄想を勝手に発展させてしまうこと。こういうイベントを通じて自衛隊の現場と国民が接触する機会を作るのは、そんな脳内妄想を抑えるのに有効なんじゃなかろうか。
ともあれ、今回のイベントに参加するきっかけを作っていただいた T 大学戦史研の皆さん、それともちろん海上自衛隊の皆さん、どうもありがとう。
それにつけても「もったいない」と思ったのは、肝心の観艦式本番 (の予行) の頃には疲れて力尽きてしまい、艦側で配布していた毛布を敷いて、あるいは毛布にくるまってグロッキーになってしまっていた人が少なくなかったこと。最初に出航して相模湾の海上まで移動する過程で、もうテンションを上げ過ぎちゃったのですな。
そんな調子だから、帰路にはもうグロッキーになった人が上甲板の至るところで座り込んだりひっくり返ったりしていて、あちこちでいわれているように「難民船」のごとき様相を呈してしまっていた。もったいない。
そして、休憩所として科員食堂のみならず、CPO 室まで開放していた。乗組員も大変だ。おつかれさまです…
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