Opinion : クラスター爆弾規制に関する雑感 (2007/6/4)
 

今年に入ってから二度ばかり、クラスター爆弾の規制問題を取り上げる会議が開かれている。そもそも、アメリカ・ロシア・中国が参加していないのでは意味ないじゃん、と思うし、以前にオタワ合意実現にこぎ着けた対人地雷の件と同一視していいものかどうか、個人的には釈然としない。


そもそも、マスコミが「クラスター爆弾」と呼んでいるものって何なのよ、という話は後の方に書いておいたので、御存じない方はそちらを参照していただくとして。どうして (いわゆる) クラスター爆弾だけが目の敵にされるのか。単に炸薬を詰め込んだだけの爆弾や砲弾でも、人が死ぬことに変わりはないのに。

その理由は不発弾にある。Global Security に書かれている数字によると、子爆弾の一種・DPICM (Dual Purpose Improved Conventional Munition) を例にとると、不発弾が発生する比率は 2-5%、つまり 644 発入りの M26 ロケットなら 13-32 発程度の不発が出る勘定になる (参照)。難しいのは、"depending on terrain"、つまり地形によって不発率が変わってくること。地形によっては、先の数字より多い不発が出るかもしれない。

Global Security の記事に載っている図を見ると分かるが、本来 DPICM は上部に付けたリボンを引っ張りながら落下して、下方に向けて成形炸薬を作動させる造りになっている。でも、地上の地形が真っ平らならともかく、山岳地帯や森林地帯では、地面に正対して落下するとは限らない。そうした事情から、上部に組み込んである信管が正常に作動しない場合が出てきて、それが不発弾につながると考えられる。

実は、通常型の爆弾や砲弾でも、不発弾は出る。特に、装甲板を突き破ってから、あるいは地面にめり込んでから起爆するように遅発信管をセットすると、不発になりやすいという話もある。時限信管も、作動不良で不発になる可能性はあるかも知れない。昔みたいな機械式より、今の方がマシだと思うけれど。

今でもときどき「戦時中に投下された爆弾の不発弾処理」がニュースになるが、これはみんな、投下した爆弾の信管が作動しなかったケース。だから、信管を抜くことができればとりあえず安全になるのだが、そもそもアーミングした状態で投下した爆弾の信管だから、何かの拍子にドカンと来る危険性は高い。そこで爆弾処理の専門家が必要になる。不発弾でも何かの拍子にドカンと来るのは、数年前にヨルダンのアンマン空港で証明済み。

あまり一般には知られていない話だけれど、どんな爆弾・砲弾でも炸薬そのものは簡単には起爆しないように作られていて、信管が作動すると初めて、ドカンと来るようになっている。第一、ちょっとした衝撃や加熱で簡単に起爆してしまったのでは、危なくて使えない。

要約すると。

クラスター爆弾の子爆弾の場合、「地形などの影響によって信管が作動しにくいケースが出てくる」→「不発弾の比率が通常弾より高くなる可能性がある」→「数が多いせいもあり、戦後まで不発弾が残りやすい」→「非人道的だと非難される」という構図になっている。なにも、子爆弾を大量にばらまいて面制圧するから非人道的なわけではなくて、原理的に不発弾の絶対数が多くなりやすいから非人道的だと叩かれるわけで、そこのところを勘違いしないで欲しいところ。

似たような、誤解されやすい構図は対人地雷についても存在する。

対人地雷は、人間を相手にするから残虐なのではない。武装ゲリラや統制の取れていない軍隊が、至るところに地雷を埋設しまくり、しかも埋設場所に関する記録をとらないことが、非難される主な原因になっている。まともな軍隊なら、どこに地雷を埋設したかの記録をとるものだけれど、それをやらないから、どこに地雷が埋まっているか分からなくなり、民間人に被害が出る。しかも、メカが単純だから安くて数が多いし、いつまでも作動し続けることが事態を悪化させる。

もっとも、埋設場所の記録をとっていても、小型で軽い対人地雷は雨なんかで流されて、当初と違う場所に移動してしまう可能性が高い。そういう難点を考えると、対人地雷を規制することには意義があると思う。


子爆弾の不発が多いのは、何も今に始まった話ではなくて、以前から問題点として認識されている。第一、敵軍を制圧したところに進軍してみたら不発弾がゴロゴロ、では味方に死傷者が出てしまうし、実際、イラク戦争では海兵隊がそれで苦労している (先にリンクした Global Security の記事にも書いてある)。
だから、不発弾を出さずに済むなら、その方がいい。なにも、わざと不発弾を出している訳じゃないのだ。そこが対人地雷と違う。

世の中には、「わざと不発弾を出して、地雷と同じ効果を狙っているのだ」なんて珍説を唱える人がいるけれども、それなら最初から散布地雷を使えば済む話。わざわざ、効果のほどが不確かな不発の子爆弾に依存する必然性は皆無。効果のほどが明確でない兵器は、使いにくい兵器でしかない。

そして、短時間で広域を制圧できる、クラスター爆弾の有用性を捨てることはできないという立場もある。blog に書いたように、フィンランドが「クラスター爆弾の即時規制に反対」といっているのが典型例で、これは日本と事情が似ている。あと、スイスもクラスター爆弾の規制に対しては消極的なグループに属している。というわけで、「日本だけが孤立している」というデマゴーグに騙されないようにしましょうね、と。

いずれも、「地雷を取り上げられて、さらにクラスター爆弾まで取り上げられたら、どうすりゃいいの」という立場。第一、自国が敵軍の侵略を受けて、どうやって撃退しようかと必至になるような場面で、クラスター爆弾が残虐だとかなんとか、いっていられませんって。

そこで提唱したいのが、単に「クラスター爆弾」というだけで一律に規制すれば済むのか ? という考え方。いきなり全廃というから話がややこしくなるので、イギリスやフィンランドがいっているように、「まずは自爆機能付きのものに限定しましょう」という方向に持っていくのが、暫定的な落としどころになるんじゃないだろうか。

実際、メーカー側でもいろいろ工夫はしている。アメリカ製の CBU-105/B SFW (Sensor Fuzed Weapon) やイスラエル製の M85 みたいに、作動しなかったときに自爆する機能、あるいは投下から一定の時間が経過したら自爆する機能を備えた子爆弾も開発されている。それでも、自爆機能が確実に作動するのか、とかいう類の反論は予想されるけれど、自爆機能がなければ自爆する確率はゼロなのだから、不発弾が残る確率が下がるだけマシ。
(余談だけれど、いわゆる平和活動家の人に欠けているのは、こういう「○○よりマシ」という考え方じゃなかろうか。"All or Nothing" で考えるから、却って事態が良くならない)

ちょっと嫌味をいうと。陰謀論者がいうように政治家を焚きつけて戦争を起こさせるよりも、既存の兵器に対して「残虐だ」キャンペーンを起こさせて、改良型の新兵器を調達する方向に持っていく方が、兵器メーカーは儲かるんじゃなかろうか (おい)

さらに、「他国に侵略する場合と、自国の防衛に使用する場合でも、迷惑度や後始末の容易さには違いがあるんじゃないの」という考えもあるのだけれど、これは具体的な規制案に落とし込むのが難しいし、「おたくの国のクラスター爆弾は攻撃的だから駄目、うちの国のは防衛的だから OK」なんていったら、喧嘩になる。どこの国でも、新兵器導入時に「防衛的だから」というエクスキューズをくっつけるのはお約束だし。これについては、もうちょっと脳味噌を絞る必要がありそうなので、とりあえず先送り。


ついでに、世間で「クラスター爆弾」といわれているものについての余談。

厳密にいうと「クラスター爆弾」(別名を集束爆弾ともいう) とは、航空機搭載型の爆弾のうち、多数の子爆弾 (sub munition) を内蔵していて、それを目標地域の上空でばらまくタイプのものを指す。米軍の統合弾薬命名法でいうと、たとえば SUU-66/B というディスペンサー (ドンガラ) があり、これに BLU-114/B という子爆弾を 200 発詰め込むと、CBU-94/B という「クラスター爆弾」ができあがる。

だから、同じディスペンサーでも中身を変えれば、別の種類の兵器に化ける。子爆弾を対人用にしたり対戦車用にしたり、あるいは地雷に変えたり (それだって対人地雷と対戦車地雷がある)、といった具合。

ところが、これ以外にもマスコミなどが勝手に「クラスター爆弾」と呼んでいるものがある。その筆頭が、地対地ロケット MLRS (Multiple Launch Rocket System) が使用する M26 ロケット。これが M77 DPICM (Dual-Purpose Improved Conventional Munition)×644 発を内蔵しており、目標地域の上空でばらまく。

実は、イスラエルがレバノンで使用した「クラスター爆弾」とは、その大半が M26 のこと。厳密にいうと M26 は地対地ロケットであって航空機搭載用の爆弾ではないのだが、子爆弾をばらまくという点では共通しているから、混同されてしまっている。さらにややこしいことに、榴弾砲の砲弾にも DPICM を内蔵したものがある。

業界の外では、この手の子爆弾散布モノはみんなひっくるめて「クラスター爆弾」と呼ばれてしまうのが現状。「軍艦なら何でも "戦艦"」「AFV なら何でも "戦車"」と同じで、なんだか釈然としない。

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