Opinion : サーチエンジンの公共性 ? (2007/10/29)
 

例の、「初音ミク」の画像が Google と Yahoo! の画像検索結果からきれいさっぱり消えてしまった件。話が鎮静化し始めてから取り上げるのも何だけれど、考えがまとまっていなかったので、このタイミングになってしまった。

本当に「TBS 陰謀説」や「電通陰謀説」が存在するのかどうかは知らない。もちろん当事者は否定しているし、仮に、本当に裏でカネが動いて結果を操作したのだとしても、当事者がそのことを公に認めることは考えにくい。だから、真相はおそらく闇の中。

確かに、騒ぎになってから突如として画像を検索できるようになっただとか何だとか、怪しい状況証拠はいくつかあるけれど、状況証拠はあくまで状況証拠。それだけを頼りにしてカッカし過ぎると、逆に足元をすくわれかねない。冷静に、冷静に。

一連の騒ぎで気になったのは、多くの人がサーチエンジンというモノを買いかぶりすぎているんじゃないかなあ、と思ったこと。

確かに、私自身も何かあると「まずググる」。検索結果の精度が比較的高いと思われていて、実際、「サーチ猿人」と化すことは多くないという印象だけれども、それでもときには、「なんでこうなるの !」といいたくなるような検索結果は出てくる。Google とて万能選手ではない。実際、blog サービスによっては Google のアルゴリズムとの相性があって、妙にランキングが上がったり下がったりするケースがあるようだし。

それはそれとして。これまで、サーチエンジンの検索結果がまったく誰にも操作されていない、中立公正なものだったといいきれるかというと、それもまた違うと思う。


最近、Web サイトの URL を書く代わりにキーワードを提示して「○○で検索」とやっている広告が多い。あれは御存知の通り、いわば検索キーワードを広告費で買っているようなもので、広告費を支払う代わりに、当該キーワードで検索したときに広告主の Web サイトをトップに出すようにしている。最適化だけでトップに出しているわけではない。

当該企業の広告を見て検索をかける人にとっては、それで何も問題はない。でも、広告で用いているキーワードの中には、企業名や商品名ばかりでなく、もっと普遍的な言葉も含まれている。たまたま、そうしたキーワードを使って検索した人にとっては、検索キーワードを買った会社の Web サイトがトップに表示されることで、検索結果が操作されている、と強弁することもできる。

無難な落としどころは、「スポンサードリンク」は検索結果の中で別枠として提示することだと思う。無料でサービスを提供している以上、広告に頼って商売しているケースが多いのは周知の事実なのだし、伏せるようなことでもなかんべ。

今は更新が止まってしまっているけれども、Yahoo! にはディレクトリ検索がある。これはサイトの登録を申請すると Yahoo! の中の人が当該サイトの内容を調べて、載せるか載せないかを決めていた。どういう基準なのかを明文化して公開しているわけではないし、申請したのに載らなかったからといって、いちいち理由を説明してもらえるわけでもない。逆に、当サイトみたいに Yahoo! のディレクトリに載ったケースでも、載ったときに「この点を評価して載せました」みたいな説明はなかった。

つまり、人為的に登録の可否を判断しているディレクトリ検索では、なにがしかの形で人間の判断が入っているわけだから、なにがしかのアルゴリズムに基づいて機械的にランク付けするのと比べれば、「結果が操作されている」ということはできる。

つまり、企業側の運営方針、あるいは広告ビジネスの絡みで検索結果に影響が出るケースはこれまでにもいろいろあるので、たまたま「初音ミク」の画像検索結果が不審だったからといって、いまさらサーチエンジンの公共性も何もないだろうと。第一、中国みたいにサーチエンジンの結果をフィルタリングさせている国だってあるわけだし。

blog 検索なんかは、サーチエンジンに新エントリ投稿時の ping を送っているかどうかで、検索結果に出てくるかどうかが違ってくる。どこに ping を送るかは、blog サービスの側で、あるいは blog 主が決めるものだから、これだって (意図的ではないにしても) 結果を操作してしまっている。

Web や blog のサーチに限らず、新聞やテレビだってなにがしかの編集方針に基づいて記事や番組を作っているのだから、単に事実だけを右から左に流しているわけではない。バイアスのかかった記事や番組が出てくれば、それだって一種の「結果の操作」といえる。

話は飛ぶけれども、高速道路のハイウェイラジオや VICS が、事故・渋滞・工事などが発生しているときに、その手前の「順調に流れている区間」の情報しか出さない場合があるのも、「結果の操作」といえるんじゃないか。これについてはこちらも学習して、「途中の IC までしかいわないときは、その先で何か起こっている」と考えるようになったけれど。


幸い、サーチエンジンは Google や Yahoo! だけではなくて、Live Search、goo、フレッシュアイなど、いろいろある。それぞれランク付けのアルゴリズムが違うし、ロボット巡回の周期も違う。だから、あるサーチエンジンの結果が思わしくなければ、別のサーチエンジンで試すことができる。

もしも、あるサーチエンジンが広告、あるいは裏金、政治的圧力、その他の "大人の事情" により、目に余るほどの検索結果の操作を行っている事実が露見すれば、そうしたサービスはユーザー離れを引き起こすと思われる。そうやって、ユーザーによる選別でサービスを淘汰するのが、もっとも無難な対応だと思われる。サーチエンジンに限った話ではないけれども。

逆に、「公共性があるサービスだから、国、あるいはその他の公共団体が運営すべし」なんてことになったら、そっちの方がよほど、政治的配慮により結果が操作される可能性が高いとは考えられないだろうか。現に、国がやることでも「声がデカイ奴の言い分が通る」なんていう事態が発生している事例がある。まだしも、ユーザーによる選別で淘汰できる可能性がある営利企業の方がマシだと思うのだけれど、どうだろう。

もっとも、こんな風に考えるのは私が「小さい政府」論者で、国防や外交みたいに政府がやらないとどうにもならないもの以外は、できるだけ民間でなんとかすべし、と考えているせいもあるかも知れない。

今回の件に限らず、何かを批判するのに「公共性」とか「公共財」とかいう言葉を持ち出す人が見受けられるけれども、何でも公共物扱いすりゃあいい、ってもんじゃないと思う。現に、公共性が高いサービスでも民間企業の手に委ねているケースはたくさんあるのだから。もちろん、サービスを提供する側に一定水準以上の良心が求められるのは事実であるにしても。

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