Opinion : いわゆるビラ配布事件に関する雑感 (2007/12/17)
 

たまたま先日、葛飾政党ビラ配布事件 (Wikipedia の当該記事) に関するニュースを聞いたのと、以前から立川反戦ビラ配布事件 (Wikipedia の当該記事) のような事例も存在したことから、この辺の話について書いてみようと思った次第。


法的な話については自分の専門外だから言及しないけれど、ビラを配布する行為を正当化する側の主張として、どうにも腑に落ちないのが、「商業的宣伝ビラも日常的に投函されているが、これらについて起訴されたものはない」という主張。

確かに、うちの郵便受けも郵便物より宣伝ビラの方がずっと多いのが実情。ピザ屋などのデリバリーサービスに関するビラみたいに、ひょっとすると出番があるかも知れないものならまだしも、自分には縁のない業種の宣伝ビラからエロビデオの宣伝まで、実に多種多様なビラが投げ込まれている。それらは、ほぼすべてが「紙ゴミ回収用」のボックスに直行するのだけれど。

じゃあ、そういった宣伝ビラ、宣伝チラシの類と立川反戦ビラ配布事件を同一視していいのかというと、それは違うんじゃないのと思った。

なぜかといえば、商業目的のビラは単なる無差別配布、数打てば何パーセントかは当たるかも知れない、という性質のものであるのに対して、立川反戦ビラ配布事件は違うから。どう違うかといえば、「自衛官、ならびにその関係者に対して、自衛隊のイラク派遣に関する政治的メッセージを伝える」という、ターゲットと意図を明瞭にした行為である点が違う。

そういう意味では、被告側が主張する「居住する自衛官の平穏を侵害しておらず、仮に侵害があっても軽微で罪に問う必要がない」が、論拠としてピザ屋のチラシを持ち出しているのは大間違いもいいところ。行為そのものが同じに見えても、意図しているところ、そして両者の立場はまったく異なるのだから。

海外でも似たような事件はある。デンマークでイスラム原理主義過激派勢力が、軍人の家族に対して電子メールなどを使った心理戦攻勢を仕掛けた件のこと (DefenseNews 2007/9/17)。つまり、「反戦ビラ」ではなくて「反軍電子メール攻撃事件」なのだが、これに対してデンマークの当局は断固たる措置に出て、問題の行為を仕掛けた過激派勢力の逮捕に踏み切っている。どういう法律を根拠にしたのかまでは知らないけれど、内乱罪とか外患誘致罪とか、そんな類の法律だろうか。

つまり、「ビラ撒き」だからすべて同一視していい訳ではなくて、その内容や対象、配布元と配布相手の関係性といったこと考慮に入れないと、適正な行為といえるかどうかは判断できないんじゃないの、ということ。単なる無差別配布と、敵対する立場から影響力を行使するつもりで行う配布を、単純に「ビラ撒き」というだけで同一視するのはどうかと。
(繰り返すけれど、「適正な」であって「適法な」ではない。為念)


影響力という点で非対称性がある関係の下での配布についても、また同様。前に、都立の学校における日の丸・君が代強制の一件について言及したことがあったけれども、これが類似のケースといえる。

教師が個人的にどういう思想を持とうが、そんなのは知ったことじゃない。ただ、個人的思想を教師という職業とリンクさせて、教育現場に持ち込むのはどうなのよ、ということはいいたい。日の丸・君が代に反対したければ学校の外でやればいいじゃないの、ということ。

なぜかといえば、以前にも書いたかもしれないけれど、教師という立場は生徒に対して強い影響力・強制力があるものだし、それを利用して生徒に思想を広めようとしている、と思われても仕方ない部分があるから。つまり、教師と生徒という (上下関係がある) 関係性が関わってくる点が問題じゃないの、ということ。

同じことは、日の丸・君が代を強制する立場の側にもいえそうなものだけれど、それならなおのこと、批判する側が同じ手を使って説得力があるといえるのか、と訊いてみたいところ。それに、少なくとも過去には強制じゃなかったわけだし、それが強制に至ったのは何故だ、先にトリガーを引いたのはどっちだ、と考えるとねぇ。

そういえば、某所の blog で blog 主に対する批判的コメントが書き込まれたら、その blog 主が「あなたは私に敵対する立場の blog に出入りしているではないか」といって、当該コメントを削除したことがあった。現実問題として、批判コメントに対する耐性が著しく弱いブロガーは実在するものだけれど、それはともかく。

「自分に批判的な立場を明確にしている者からの批判コメント」を許しませんなんていいだしたら、それって「自衛隊に反対する立場の人が、それを主張するビラを自衛隊の官舎に乗り込んで撒いた」っていうのと何が違うわけ ? 少なくとも、批判的立場を明確にした上での行為、という関係性については同じだと思う。なのに、後者のビラ撒きについては無罪を主張して、前者については問題ないと主張するようなことがあれば、それってダブスタっていうんじゃなかろうか。


葛飾の件については、両者の立場がどうとかいう話ではなくて、共同住宅の廊下にまで入り込んできた行為の是非が問われているものだから、これはまた別次元の問題。こうなると法律の門外漢の手には負えない話で、私としては「おおやにき」の記事に同意、ということで。

ただ、当該エントリのコメント欄で「自民党のビラだったら〜」とお約束の反論をしている人がいるのには笑った。あまりにもテンプレにはまりすぎる。

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