Opinion : ネットでの実名義務付けについて考えてみた (2007/12/24)
 

「こんごう」の SM-3 要撃試験 (JFTM-1) 成功について書こうかとも思ったけれど、MD について書きたいことはおおむね、すでに書いてしまっているし、まあいいや。ということで、別の話題で。


ネット界で出ては消え、出ては消え、となるお約束の話題で「実名義務付け」というのがある。最近だと、2 ちゃんねるあたりから大挙襲来する名無しさんの大群が気に入らない人なんかが、この手の主張を好むように見受けられる。

私はというと、以前にもどこかで書いたと思うけれど「本名だろうがコテハンだろうが名無しだろうが知ったことじゃなくて、基本的にはまず内容で判断すればよろし」という立場。そういえば、内容より先に「本名 (またはコテハン) を晒して書いているかどうか」「身元を明らかにしているかどうか」にこだわるのは、内容の真贋を判断する、あるいはその内容に反論するだけの土台がないからじゃないの、なんて見方もあるようだ。

もちろん、「本名を晒して書いている人の方が、自分が書くモノに対する責任感を持って、ちゃんとした内容で書くはずだ」という主張にも一理はあるけれども、それとてケース・バイ・ケース。新聞記者でもニュースキャスターでも芸能人でも評論家でも、名前を晒しているのにスットコドッコイなことをいったり、あるいは書いたりする人はいるでしょ ?

いわゆる著名人の場合はともかく、一般人だとさらに事情は複雑。仮に「本名で書いています」と本人が言明したところで、それを裏付ける手段がなかなかないのだから、本名なのか、実在の名前っぽいコテハンなのかは判別不可能。これ、本名 vs 匿名に関する議論で、あまり出てこない話みたいだけれど。

たとえば、当サイトの主は「井上孝司」という名前だけれど、これが本名だって証明しろといわれたら、いったいどうすればいいんだろうか。運転免許証か健康保険証の写真でも撮ってアップする ? でも、それが本人のモノだと証明できるかどうか。

第一、運転免許証は顔写真入りだけれど、それとて本人が別のところで顔写真を晒していて比較できなければ、証明の役に立たない。会社の社員証や ID カードなんかが顔写真入りになっているのは、それを所持している本人とパッと比較できるから意味があるのであって、ネットではこの方法に有用性があるのかどうか。

では、ドメイン名の WhoIs はどうか ? 会社なら登記関連書類を用意しないとドメインを取れないケースがあるけれど、すべての種類のドメインがそうなっているわけじゃなかったはずだし、個人でドメインを取るのに、いちいち戸籍関連の書類を出せなんていわれない。それに、プライバシー保護にうるさい昨今、WhoIs の内容が本人の個人情報そのままだとは限らないし (kojii.net だってそうだ)。

さらにいうならば、同姓同名という問題もある。たまたま私の場合、「世界の艦船」誌に載っている写真を担当しておられるカメラマンの方と同姓同名。そのため、しばしば混同されて「『ああ、世界の艦船』誌の ?」と訊かれるのは、もう NIFTY-Serve 時代から 15 年以上にわたって続いている FAQ。このことがさらに本人特定を難しくしてしまう。

だから、仮に私が悪ふざけして、Kojii.net、あるいはココログの別館と全然関係ないところで「スレンダーなメガネっ娘の井上孝子ですー」とかいって blog かなにか立ち上げたところで、それが本名なのかどうか、そういう人物が実在するのかどうか、パッと見には誰にも証明できないわけで。
(意味が分からない方は、「迅雷計画 - ミッドウェー殲滅作戦」を読んでね)

と、それは冗談の領域だけれど。つまりは、ネットにおける本名とかコテハンとかいったものは、所詮はその程度のもの。本人が「本名で書いてるんだから信用できるだろ」といっても、他者にとっては本当に本名なのかどうか検証するのは困難だから、結局は内容を見て判断するしかない。

では、証明が難しい名前ではなく、趣味・志向・その他の考え方に関して明らかにするという考え方はどうか。一見したところではもっともらしいけれども、趣味・志向・その他の考え方を明らかにする場面と、何かコメントをする場面とで両者の同一性を証明しないといけないわけで、それについてはどうすればいいんだろう。コメントする度にいちいち、「私はかくかくしかじか」と紹介文をつけるわけにも行くまい。

仮に、私が「井上孝司」と「井上孝子」を使い分けて、どこかの BBS や blog のコメント欄で二重人格みたいなことをやったら (しつこいけれど仮定の話だよ)、両者が同一人物、または別人だと証明するには、どうすればいいんだろう。多くの人がパッと思いつきそうな IP アドレスなんて、動的割り当てが多いんだからアテにならない。書き込みの内容を地道に収集して突き合わせることになるんだろうか。

あれ ? やっぱり行き着くところは内容の話じゃないか。

どうしても本人特定を確実にしたかったら、それこそ全国民的 PKI を実現して、個人特定用にそれぞれ専用のデジタル証明書を配布するしかない。そういうアイデアを考えたこともあったけれど、現実にはサーバ側での対応も必要になるので、実現は極めて難しい。しかも、クライアント PC の入れ替えや再セットアップをやる事態を考えれば、証明書をなくしてしまう事態が多発するのは明々白々だし。


というわけで、最初の方で書いた話に戻ってきてしまった。

そういえば。
冒頭でちょっと触れた JFTM-1 に関連して、杉原 "タフブック" 浩司氏やカナダの先生なんかが (涙目かどうか知らんが) 吠えておられたようだけれども。御両人とも以前に私がらみでスットコドッコイな発言をして、以来、私の身辺では名前を出すだけで笑いが巻き起こる存在。御本人が聞いたらカンカンになるかも知れないけれど、事実、そうなんだからしょうがない。

それは、本名ともコテハンとも性別とも関係なく、主張した内容がアレだったからで、それ以上の理由もそれ以下の理由もない。御両人が本名で書いておられようが、「名無しさん」として書いておられようが、内容が同じなら笑われるのは同じ。本名だから恥をかかないようにまともな書き込みをする、捨てハンや名無しだからいい加減な書き込みをする、と単純二分できるもんじゃないと思うのだけれど。

どうも、そこのところが分かっていなくて「本名で書く」ということを過大に評価している人がいるんじゃないかなあ、なんてことを考えてみた次第。

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