Opinion : "ネット右翼" といういい加減な言葉 (2008/5/5)
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土曜日は拳法記念日、もとい憲法記念日で改憲派と護憲派が毎度のようにワアワアやっていたし、うちの近所でも街宣車が現れて、騒々しいったらありゃしない。おまけに、その翌日には本館のログ解析をしていたら「井上孝司 + 右翼」なんてキーワードによるアクセスが 3 件も記録されている始末。
そんな調子だから、ちょうどいいやということで「ネット右翼」という言葉について考察してみた。
一般的概念として、「右翼」といえば「国粋主義的な言動」がセットになると思われるけれども、その時点で自分は「右翼」の枠から外れてしまう。なにせ、国粋主義者どころか、モノの考え方はどちらかというとアメリカナイズされているのが実情で、それは当サイトにお越しになっている方なら先刻御存知の話。
それに、旧字体や旧仮名遣いなんてほとんど出てこないで、代わりに日本語で済むところまで英単語がポンポン顔を出している。もちろん日米安保体制には賛成。日本に空母機動部隊や核兵器を持たせろなんていう人が現れた日には、さっそく反対の論陣を張ってしまう。こんな調子だから、その時点でもう「アメリカのポチ」とか「売国奴」とかいう調子で罵倒されるのがオチ。
そういえば、空自の F-X に関して、F-22A の導入に否定的なことを書いて、あちこちでボロクソにいわれている。でも、これは右・左の問題とはまた別の考え方によるモノなので、とりあえず措いておく。とはいえ、「日本至上主義のイケイケドンドン」から距離を置いている、という点では共通項になるのだけれど。
ちなみに、military affairs (ほら横文字が出てきた :-) に関心があれば右翼かというと、その定義は大間違いのこんこんちき。左翼政党率いる共産主義国家にだって軍隊はあるのだ。いやそもそも、共産主義国家の軍隊は「国民の軍隊」じゃなくて「党の軍隊」だったりするではないか。military affairs と無縁なら左翼、と定義すると、この時点で訳が分からないことになってしまう。
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閑話休題。
じゃあ、右翼じゃなければ左翼かというと、それはもっと違う。共産主義なんてろくでもないと思っているし、大きな政府も大反対。世界が平和でいるに越したことはないと思うけれども、そのための方法論は、いわゆる左翼政党の人とは真っ向反対。私のことを左翼呼ばわりする行為が成り立つのは、4 月 1 日のエイプリルフールだけだ (え
ただ、国粋主義的ではないにしても、保守か革新かといわれれば保守、小さな政府主義、自助努力・自由競争礼賛。そんなところからすれば、blog のコメント欄でも書いた話だけれど、中道やや右寄りというか、中道右派というか、そんなポジションとみるのが妥当だと思っている。ただしこれは本人の自己診断だから、他人の目から見たらどうだろう ?
注意したいのは、ここまで書いてきたのは「絶対的」な意味での右・左について検討した結果だということ。相対的なモノの見方をすると、また違ったことになるかも知れない。早い話が、「左に寄った位置から見れば、どんな位置にいるものでも右寄りに見える」ということ。
それに、いわゆる左翼 (というよりサヨクというべきか) が主張している話に対して反駁した事例がいくつもある。先日に「ほれ見たことか、自分がいった通りだったではないか」とウハウハになってしまった「軍事産業陰謀論の否定」が典型例だし、軍事関連以外のネタとしては、ホワイトバンドへの反対論もそう。
(ちなみに、未だに ホワイトバンド公式 blog は放置状態でペンペン草が生えている。そんな醜態をさらすぐらいなら、とっとと閉鎖すればいいものを…)
つまり、左翼というかサヨクというか、とにかくそっち方面の人にとっては、自分達が喧伝してきた、拠り所にしてきた話をぶち壊しにしてくれる "不愉快な存在" だと思われていても不思議はなさそう。そんでもってネット上で論陣を張っているから、ネット右翼というレッテルを貼られる可能性は考えられる。ところがこの「ネット右翼」という言葉自体がいい加減なもので、定義は不明確だし、使われ方も不明確。
だいたい、先週にも書いたように、ネットでも向こう側にいるのは生身の人間なのだから、リアルとネットの差なんてないはず。リアルでもネットでも右翼は右翼だし、そうでない場合も以下同文。そこをあえて「ネット」という言葉を冠して区別するのは、本来の意味からすれば妙な話。
現実問題として、「ネット右翼」という言葉は、左翼というかサヨクというか、とにかくそっち方面の主張を掲げる人が使用するレッテル張り & 罵倒表現というのが、もっとも現実に近い定義なんじゃないだろうか。主張している内容が国粋的かどうか、右翼の定義としてどうか、なんてのは関係なし。
どういうことかというと、ネット右翼という言葉は思想的な面で絶対的に見て右翼的かどうかという問題じゃなくて、左の方から相対的に見た表現なんじゃないか、ということ。そして、街宣右翼などのおかげで「右翼」と付けばイメージが悪くなる効果も期待できる。本当にそうなっているかどうかは知らないけれど。
かくしてそっち方面の人にとっては、ネット上で気に入らない主張、都合の悪い主張を展開していれば、これみんなひとからげにネット右翼だということになる。これでは定義もヘッタクレもあったものではない。
実際、「ネット右翼」と呼ばれる人を眺めてみても、いわゆる国粋主義者というよりは、反左翼 (反サヨク)、つまり、これまで目立ってきた左派の主張に対するアンチテーゼの部分が強いようにも見受けられる。もっとも、それが結果として「日本のことを悪くいうなんて怪しからん」という方向に行く場面はあるにしても。
面白いことに、「ネット右翼」という言葉はあるけれど、「ネット左翼」という言葉はない (少なくともメジャーではない)。対義語として「右翼」と「左翼」があるのだから、「ネット右翼」の対立概念として「ネット左翼」がいてもおかしくない。ところが、そうした呼称が用いられないのは興味深いところ。
もっとも、「サヨク」とか「ブサヨ」といった言葉はあって、これが「ネット右翼」の対義語といえるのかも知れない。けれども、こちらはわざわざ「ネット」と冠していない。リアルだろうがネットだろうが関係なく、サヨクはサヨク、ブサヨはブサヨ、ということなのだろうか ?
なんにしても、定義が不明確で使われ方がいい加減な状態のまま、単に罵倒表現として「ネット右翼」という言葉が蔓延したところで、誰の得にもならないんじゃなかろうか。現実問題、この言葉の意味するところは「おまえの母ちゃんデベソ !」と大して違わないんじゃないの ?
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