Opinion : サミット騒動をめぐる雑感 (2008/7/7)
 

先日、JR の某駅でカメラを構えていたら、駅員さんに「撮影ですかー」と訊ねられた。別にウソをいう理由もないから「はい」と答えて少し話をしたのだけれど、なんでもサミットがらみの警備で、かなり神経質になっている様子。

そういえば、駅のコンコースを通ると警察官が何人も立っているし、街中では検問なんかやってるし。サミットの会場は北海道だというのに、東京ですらこの調子。北海道はどんなことになってるんだろう、と心配になってきた。

どうして、こんな厳戒態勢になるかといえば、サミットというとデモやらなんやらを仕掛ける人がいて、中には海外からわざわざ飛行機に乗って飛来する人までいるから。ということらしい。

そういえば、地元の駅前でもどこかの労働組合の関係者か何かの人が、「サミット粉砕」といって演説して、通行人にスルーされまくっていた。それも無理からぬことで、たいていの人にとっては、サミット粉砕よりもサミットストアの割引セールの方が重大関心事だろうから。


どうも、サミットとか WTO とかいう類のイベントがあると集まってくる人達には、「グローバリゼーション反対」とかいう主張を掲げる人が多いという印象があるのだけれど、これで合ってるんだろうか。でも、国境越しに人・モノ・カネが自由に往来して世界規模の経済圏を構成するという動き、彼等が好きそうな「ちきゅう市民」への第一歩じゃないの、というこじつけもできそうだけれど、よくわからん。

仮に、今の世界が抱えている問題に関する「諸悪の根源」はグローバリゼーションであり、それを粉砕しなければならないのだとする。じゃあ、世界各国が自国内だけで完結した経済圏を構成して他国との交易を止めて、鎖国すればいいのだろうか。
んなこたーない。だいたい、「グローバリゼーション反対」と演説している人達だって、当人が意識しているかどうかはともかく、グローバリゼーションの恩恵をどこかで受けてるんじゃないだろうか ? 本人がそれを意識しているかどうかはともかく。

でもって、「反対」とか「粉砕」とかいう教典は熱心に唱えるけれども、「じゃあ、どうしろと」という部分がさっぱり見えてこない。何事にもプラスの面とマイナスの面があるので、マイナス面ばかり強調して「反対」とか「粉砕」とかいうだけでは、ズルいと思うけれど。

いまさら、国をまたいだ人・モノ・カネの往来を押しとどめようとしても無理な相談。鎖国はなんぼなんでも極端だから措いておくとして、往来を認めるにしても、どこまでが OK でどこからがダメなのかという閾値を、誰もが納得する形で (←これ重要) 決めるなんて無理でしょ ?

だったら、人・モノ・カネの往来があるという事実は受け入れるとして、その中でどういう風に弊害を抑えていくか、そのためにはどうすればいいか、という方向に話を持って行く方が、むしろ「グローバリゼーションに付随する問題点の解決」という目的にとっては早道なのでは。

たとえば、途上国の人が低賃金でこき使われて搾取されていると主張するなら (それが事実かどうかという話じゃなくて、ひとつの例)、「搾取によって安くした商品よりも、搾取しないで高い値付けをしている商品を買おう」と呼びかける方が、まだしも理に適っている。「途上国の搾取」じゃなくて「日本国内における人件費が云々」でも同じだけれど。

少なくとも、「金持ち国だけで開催するサミット粉砕」なんていうよりマシなやり方だと思うけれど、どうだろう。「とにかくサミットは怪しからん、粉砕だ」といってデモ行進するだけでは何も変えられないし、マジョリティからの信頼や支持は得られないのでは。

もっとも、この手の「不買運動」というやつは往々にして暴走して、本来の趣旨をすっ飛ばしてしまうものなので、そこがまた難しいところ。


そんな騒ぎをやっている一方では、政府・警察に加えて軍まで一緒になって、しかも退役軍人まで引っ張り出してきて野党勢力の弾圧をやっている、ジンバブエみたいな国もある。JDW (2008/6/25) でジンバブエ情勢に関する記事を読んで絶望的な気分になったけれども、それと「グローバリゼーション反対」とか「貧困問題の解決」とかいって北海道でデモ行進している人の対比も、負けず劣らず絶望的。

一体全体この人達、本気でグローバリゼーションに付随する問題や貧困問題を解決したいのか、構造的・体質的な問題を無視して「先進国にカネを絞り出させれば OK」としか考えていないのか、はたまた単に「サミット粉砕祭り」をやりたいだけなのか、そこのところはどうなんだろうと思ったから。

とどのつまり、「サミット」とか「WTO」とかいったイベントにかこつけて騒ぎを起こすことが目的になってないのかなあ ? だとしたら、そりゃ取り締まられても仕方ないし、結果的に問題解決を遠ざけるだけだと思うよ ? というのが、個人的な印象。こういうのって、目の前の問題と現実的に向き合って、できるところからコツコツと解決に取り組んでいる人に対しても、すごく失礼だと思う。

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