Opinion : "合同演習" をめぐるあれこれ (2008/7/21)
 

最近ではニュースにもならないけれど、確か、海上自衛隊が初めて RIMPAC 演習に参加するようになった頃は、野党がいちいち大騒ぎしていたはず。それこそもう、日本があっという間に軍国主義化してトンでもないことになりそうだ、といわんばかりの勢いだったと記憶しているけれど、それがスカに終わったのだから笑える。

そういえば、航空自衛隊がアラスカまで合同演習をしに行くようになったときには、もう野党もほとんど騒がなくなっていたような… いい加減なモンだなあ。

最近では、空自がアラスカに合同演習をしに行くと、大西洋の向こう側からスウェーデン空軍の戦闘機がやってきて、日の丸をつけたイーグルとスウェーデン空軍のグリペンが同じ演習に参加する、なんていう時代になったのだから、長生きはしてみるものだと思う。


もっとも、日本とアメリカは日米安保条約を結んでいる仲だから、合同演習をすることに不自然さはない。最近はアメリカとインドがなにかと接近しているから、"Red Flag" 演習にインド空軍の Su-30MKI が現れると聞いても、そんなに驚かない (ロシア空軍の機体だったら、ちょっと驚くけれど)。

ところが業界のニュースを眺めていると、「え、何でこの国とあの国が ?」という組み合わせで合同演習をすることがある。でも、単に「合同演習」というだけでひとくくりにするのはどうかなと思う。新聞なんかでこの手のニュースを取り上げると、「A 国と B 国が合同演習」と報じるときにはたいてい、もう A 国と B 国が友好ムードでラブラブ、みたいな扱いになるものだけれど。

本当に仲が悪くて一触即発なら、もう合同演習どころの騒ぎじゃない。でも、そこまで酷いことになっていなければ、救難演習ぐらいは一緒にやることがある。あるいは、災害派遣や平和維持活動を念頭に置いた人道支援任務の演習。これぐらいなら手の内はモロ出しにならないし、名目も立てやすい。信頼醸成や緊張緩和にも役立つ。

もうちょっと接近した関係になると、人員の往来、海軍の演習だったらヘリコプターのクロスデッキなんかもやるようになる。でもって、本格的な軍事作戦の演習を一緒にやるのは、それなりに立ち入った関係の国だけなのが普通。そうしないと、不必要に手の内を知られてしまうことにもなりかねない。

だから、軍事作戦の演習でも、一緒にやりたくない、あるいは何かの事情でやれない場合には、不参加になったり、オブザーバー参加にとどまったりする。最近では、日本からオブザーバーを送り込んでいる演習もあるけれど、オブザーバーを出すだけでも、なにがしかの意味や成果はあるのでは。

その辺の関わり方まで把握できると、どの国とどの国がどんな演習をやったか、という情報も、国と国との距離感を推し量る材料になるはず。たとえば最近のニュースだと…

バルト海で行った NATO の演習 "Exercise Baltops 08" で、英海軍の揚陸艦にロシアの海軍歩兵が乗り組んで演習に参加した、なんて話があった (MoD のプレスリリースによる)。NATO とロシアは MD の配備問題をめぐって角突き合っているのに、一方ではこういうことも起きてるんだ…
と思ったけれど、内容を見てみると「民間人救出の演習」という話。一緒に演習をするけれども、内容は比較的穏当なもの、というあたりに微妙な距離感が見えるなと思った。ただ、メディアで煽られているほどには一触即発でもないのかなというのが、個人的な見方。

ちょっとひっかかりを覚えたのが、イスラエル空軍機がギリシアで演習をやったというニュース。空路、攻撃を仕掛けた想定ターゲットまでの飛行距離が、イスラエルからイランの核施設までの飛行距離とだいたい同じぐらいだというので、「すわ核施設攻撃の演習か」と騒がれたけれども、それとは別に気になったのは、相手がギリシアということ。

なぜかといえば、イスラエルはそもそもトルコと仲がいいのであって、トルコの航空機や AFV をイスラエルの企業がアップグレードしているぐらい。そのトルコと角突き合っている仲 (といっても、最近は以前よりマシになってきたようだけれど) のギリシアとイスラエルが組んで演習をするのでは、まるでイスラエルが二股かけているみたいに見える。

なんでも、イスラエルはギリシアに対して S-300 地対空ミサイルを演習に持ち込んでくれないか、と要請して断られたとかいう話。トルコだと S-300 を持っていないから、ギリシアで… というだけで、ギリシアに演習への協力を頼むもんだろうか。

こういう "普通でないこと" が起きるときは、たいてい "普通でない理由" があるものだけれど、現時点では具体的にそれが何なのか、よく分からない。後になってどんちゃん騒ぎが持ち上がった後で、「あれが予兆だったのか…」というのはよくある話だけれど、このタイミングで、東地中海でゴタゴタやられてもかなわない。はてさて。


ともあれ、単に「合同演習をやった」というだけじゃなくて、「何が参加して」「何をやって」「どの程度の関わりだったのか」まで分かると、かなり興味深いなというのが個人的な考え。兵器輸出などの情報と一緒で。そういう話を知る上でも、業界筋の情報が満載の JDW 、あるいはアメリカを初めとする各国国防省の報道発表資料なんかに目を通すのは面白いと思った。

演習じゃなくても、基地祭の展示機だって侮れない。単に広報のためだけにアメリカ本土から米軍機が日本まで飛んでくる、なんてことはそうそうないわけで、何かの理由があって飛来したついでに公開する、あるいは何らかのメッセージを誰かさんに送る狙いから機体を送り込んでくる、というケースの方が多いはず。そういう見地から展示機のメンツを眺めてみるのも面白そう。

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