Opinion : とりあえず落ち着け (2008/7/28)
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なんだか最近、韓国で元海軍関係者が「独島防衛のためにイージス艦の増勢を」とか「空母の建造を」とかいう主張をしているという話。さらにそれに乗せられた新聞記者が「韓日もし戦わば」なんて記事を書いてみたり、またそれを受けて日本のネチズンがあれこれと反応したり、といった状況の模様。
韓国も日本も、とりあえず落ち着け。
熱くなる人が出るといけないので先に書いておくと。
この記事で「独島防衛」という言葉を使っているのは、韓国関係者の発言を引き合いに出しているからで、問題の島嶼の領有に関する個人的見解を反映したものではない。と、お断りさせていただきたい。
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何も日韓間に限らず、土地や島嶼の領有をめぐって主張がぶつかり合っている話は、世界のあちこちにある。でも、それがすべて武力衝突に発展しているかというと、そんな訳ではなくて、よほどのことがなければ武力衝突には発展しないもの。そもそも今の日本で、教科書の文言を書き換えた以外に、何か具体的な「竹島奪還のためのアクション プラン」みたいなものが出ていただろうか ?
この件について強気な発言をしているのが韓国の海軍関係者というところからすると、「独島防衛」という内輪ウケしやすいキャッチフレーズを使って、海軍に予算を回してもらって海軍力増強を、というあたりが本音なのではなかろうか。特に韓国の場合、どうしても陸軍・空軍が偏重されやすい状況にあると推察されるから、海軍関係者としては、何か強力な「予算獲得のための切り札」が欲しいところだろうし。
だから、日本のネチズンまでがこれに煽られて、カッカすることはないと思う。というか、するだけエナジーの無駄。いわせておけばよろし。
それにしても、イージス艦の増勢を、というぐらいならともかく、空母云々になると、たとえそれが小型の V/STOL 空母だったとしても、フカシ過ぎとしかいいようがないけれども。そもそも、艦載機や護衛艦、さらにそれらを支える人員やインフラの確保はどぉすんの ?
実のところ、こういう類の話はなにも韓国に限らず、案外とよくある。たとえば、しばらく前にイスラエルで、海軍のトップが「ドック型揚陸輸送艦 (LPD) の建造を」なんてブチ上げたことがあった。これがまた、えらくフカシの入った内容で、JDW (2004/6/2 号) によると、
排水量は 13,000t 級
戦車やヘリコプター、兵員数百名を載せて 2,000nm の行動半径を備える。さらに固有乗員 115 名、イージス タイプのレーダーを備える
イスラエル海軍は大量の地上部隊を兵站支援付きで、現在のイスラエル海軍の作戦範囲よりも遠方まで送り込める能力を持つべきだ
過去 35 年に渡って小型・高速・重防禦のプラットフォームに注力してきたイスラエル海軍の教義に、LPD の建造によって革命を起こす
とまあ、こんな調子。まさか、ドック型揚陸艦でイランの核施設を襲撃する、って訳でもなかろうに、INS (いったい何をするものか) の典型例といわれても仕方ないような話。そもそも、こちらもまた、護衛にあたる艦艇はどうするつもりだったんだろう。ミサイル艇とコルベットと潜水艦と哨戒艇しか手持ちがないイスラエル海軍なのに。
もちろん、こんなブッ飛んだ話がそのまま実現するはずもなく、いつの間にやら沙汰止みになってしまった。最近になって、FMS (Foreign Military Sales) 経由でアメリカから LCS (Littoral Combat Ship) を調達する話が出ているけれども、その手の沿岸戦闘艦の方が現実的だし、まだしも出番がありそう。
つまり、この手の「○○が必要だ」とか「○○を導入する」という類の話には、本気で真剣に考えた結果としてのものだけでなく、「観測気球」だとか、あるいは「とりあえずいってみただけ」だとか、はたまた「予算欲しさのための名目作り」だとか、いろいろな理由が存在するもの。
その辺の背景事情を見極めるのも、必須の能力。本気のものならともかく、勢い任せの観測気球までいちいち真に受けていたら、えらいことになってしまう。仮に本気だったとしても、すでに書いているように、相手国が (あるいは、それに対抗する自国が) 経済的・人的に支えられるのかいな、という問題もあるし。
前に、「中国が空母を欲しがっている」という話について、「欲しがっているなら、いっそ煽って突き進ませるのもひとつの手。空母単体だけでなく、艦載機や護衛艦、支援インフラや訓練体制作りまで含めると、ベラボーなカネと手間がかかるのだから、それで資金を食いつぶさせる戦略だってあり」という趣旨のことを書いた記憶がある。
この辺の考え方は今でも変わっていない。すぐ熱くなって「某国が○○を持つというなら、うちも対抗して△△を」とわめくだけが能じゃない。場合によっては、その手の話をうまいこと使って、相手にカネやその他のリソースを使わせて疲弊に追い込むのだって、広義の軍事戦略といえるのだから。
もっとも、日本が韓国に対してその手の策略を使う必要があるかどうかは、また別の問題。そもそも、竹島問題についていえば「宣伝戦」の領域にとどまっているので、誰も武力で奪還すべしなんていっていない。ぶっちゃけ、この件に関しては韓国 (の中の、そのまた一部かも知れない) が過剰に熱くなっている感じがする。そこのところをうまいこと北朝鮮なんかに利用されて、足元をすくわれても知らないよ ?
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