Opinion : 航空宇宙展にみる "仕草" のいろいろ (2008/10/6)
 

土曜日に横浜まで行って、国際航空宇宙展を観てきた。4 年前にも行っていて、そのときと比べると「人が多い」「撮影禁止が増えた」というのが第一印象。

個別のアイテムについてはチビチビと blog で取り上げることにして、ここではとりあえず、総論的な話から入ってみたい。


まず間違えてはいけないのは、この手のイベントは基本的に「商売」のためにやっているということ。だから、水曜日から金曜日までは業界関係者向けのトレードデーで、言い方は悪いけれども、土曜日・日曜日のパブリックデーは付け足しみたいなもの。故に、パブリックデーには人がいないブースが散見される。

出展する側にしてみれば、カネをかけて出展して人やモノを送り込んでくるのであれば、それに見合ったリターンを得たいと考える。いいかえれば、出展しても商売にならないと思われるものは持ってこないし、出展しても新たなリターンは得られそうにないと思った会社はそもそも出展しない。軍用機の展示やデモフライトだって同じようなもの。

今回でも、過去に出展していた P&W、GE、Raytheon、Northrop Grumman といったあたりは、出展していなかったり、していても規模が異常に小さかったり、他社任せだったりした。出展している会社でも、製品群の中から何を持ってきているかで、日本で何を売り込みたいのか、何をアピールしたいのかを推測できる (こともある)。公言しなくても仕草は見せる、というやつで。

たとえば、面積が広い割には展示物が少なくて (4 年前とはえらい違いだ)、しかもブースの外側を囲って立ち入り禁止にしてしまっていた Boeing。F-15FX と F/A-18E の模型を展示していたけれど、「日の丸」付きになっていたのは F-15FX の方だけ。となると、模型を手直しする手間を省いた F/A-18E/F よりも、F-15FX の方を優先的に売り込みたいのだろうか、なんてことを考えてしまった。

そういう観点からすると、ScanEagle UAV の模型を置いてあったのは謎。Lockheed Martin のブースに AGM-158 JASSM の模型を置いてあったのも謎。Finmeccanica (ここも広々としている割にモノが少なかった) が C-27J の模型を置いていたけれど、他の展示物のついでに持ってきたんだろうか。どう見ても日本では売れないぞ。それとも売る気なんだろうか。

前回・前々回のイベントと同様、Navy BMD のブースを構えていた。昨年暮れに「こんごう」が実施した要撃試験・JFTM-1 のビデオを、わざわざ日本語ナレーション付きに再編集して流していたのは、日本の一般人向けに MD をアピールしたい、という目的からすると納得しやすい。素材のビデオそのものは、試射に成功した直後に MDA が配布していたものと同じみたいだけれど。

最初は首をひねり、後で納得したのが、仏国防調達局 (DGA) が小さなブースを構えていたこと。よりによってフランス軍の調達部門が何のために、と思ったけれど、よくよく考えると「心神」のテストを DGA の施設でやっていたから、その関係で「おつきあい出展」してみたのかも知れない。それと比べると、フランスの業界団体・GIFAS が出展していたのは理解しやすい。フランスの航空宇宙業界は、案外と日本と結びつきがあるから。

あと、日本のイベントに固有のチェックポイントが商社のブース。それぞれ、会社ごとにつるんでいる海外メーカーがあるから、どこのメーカーの、どの製品をアピールしているかを観察するのは、なかなか興味深いものがある。

今回、なんと Microsoft がブースを出していて、軍事向けのソリューションとして SharePoint (すでに米海兵隊で採用実績がある) や HPC Server をアピールしていたのも興味深い。こういう新顔が出てくるのには、相応の理由がある。そういえば、NEC では頑丈ノート PC・Shield PRO を出展していたっけか。杉さまー、出番出番 ! (え

こんな感じで、イベントに誰が出てきているか、何を出しているか、を丹念に観察していくだけでも、推測できることはいろいろ。もちろん、推測が外れることもあるけれど、外れたら原因を検討して、今後の推測に活かせば済む話。こうやってあれこれ思索を巡らせるのは、単なる道楽としても面白いと思う。

冒頭で書いた「撮影禁止」の話にしても、何が撮影禁止で、何が撮影禁止でないのかを比較してみれば、どの辺にヤバそうな情報があるのかが推測できるってものである。4 年前には撮影できたモノが、今回は撮影禁止になっていた、なんて事例もいくつかあった。


いいかえれば、何でも馬鹿のひとつ覚えみたいに「公開しろ公開しろ」というだけが能じゃないだろう、ということ。チョコチョコした公開情報を丹念にウォッチングして、何をいっているか、何をいっていないか、何をアピールしているか、どうやってアピールしているか、などのデータを蓄積していけば、公に発言していないことでも推測できる (こともある)。

それすらちゃんとやっているかどうか怪しいのに、何かというとすぐに「秘密主義だ」とか「知る権利がどーたらこーたら」とかいう言葉を連発するのは、一種の怠慢。CIA を筆頭とする国家の情報機関だって、仕事の大半は公然情報の調査・分析だという話は、昔からさんざんいわれていることですぞ ?

ましてや、「英語で書いているということは、秘密裏にやっているということだ」なんていうのはギャグ。これがショナ語やナバホ語の情報だっていうのならまだしも、英語なんてみんな義務教育でやっているのだし。それにニュースやプレスリリースの英語は文学作品と違って、そんなに難しい言い回しは出てこない。
そういう意味では、英語をしゃべる国と戦争しているのに「敵性語禁止」なんてやっていたのは、とんだ愚行だったと思う。

原潜領海侵犯事件に絡んで自衛官がクビになった一件で、「原潜の居所が分からないと漁船が危険な目に遭う」なんて寝言をいっている向きがあるようだけれども、そんな寝言を考え出すヒマがあったら、「トム・クランシーの原潜解剖」でもしっかり読んで、さらに地図と海図を調べるのに時間を使う方が、よほど役に立つはず。

きっと、何でもモロ出しで公開しないとダメだ、と主張する人って、「見せない色気」みたいなのは理解できないんだろうなあ (違)

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