Opinion : 海賊対策に関する私見 (2008/10/20)
 

海賊問題については以前にも書いたことがあったけれど、最近では焦点が、東南アジアからアフリカ東海岸に移ってきている様子。あちこちの国の商船が海賊の被害に遭い、物を盗られたり乗っ取られたり、しまいには乗組員を人質に取られたりといった状況で、もはやこれは戦争だ、といっても差し支えない感じ。

なのに、「海賊対策に投じる資金よりも、海賊に払う身代金の方が安いのだから、海賊対策なんて無駄」と主張するおたんちんがいるのだから困りもの。
それはつまり、海賊という名のビジネスを認めてしまうということ。そうなれば、海賊は低リスクで旨味のある商売だからということで参入する輩が増える可能性が高いし、要求額が吊り上がる可能性も高い。

しかも、海賊に遭遇して被害が出る可能性が高いということになれば、船主、あるいはそこに輸送を依頼する荷主にとってはリスクが増えるということ。保険をかければいいといっても、保険金の支払いが多発すれば保険会社がつぶれるから、結果として保険料の上昇につながる。しかも、そんな状況になったら乗組員の確保にも苦労するだろうから、人集めや待遇改善にも経費がかかる。

そんなこんなの結果は船主や荷主の負担増ということになり、海路を通じて輸送する商品の価格上昇につながる。突き詰めれば、商品を購入する人の負担が増える。

そこまで考えた上で、「海賊を跳梁させた方が安上がり」といいますか ?
そうやって、いったん賭け金を吊り上げてしまったら、後になって抜本的対策をとろうとしたときに、今と比べて何倍ものコストと人手と時間がかかるのは明白。そんなことも理解できないなんて。


確か JDW だったと思うけれど、アラビア海やソマリア沖で、海賊対策任務に就いている軍艦のレポートを読んだことがある。なんだかんだといっても現場の海域は広く、そこを往来する商船の数は多い。それと比べて、警備任務に就いている軍艦の数は絶対的に少なすぎる。

だから、私が読んだ記事でも「海賊に襲われた商船から救援要請が来たが、遠すぎて間に合わないと判断したため、駆けつけるのは断念した」なんていう記述があった。さもありなん。

これが東南アジアなら、少なくとも周辺各国の政府はまともに機能しているし、それなりに警備のためのリソースも体制も (相対的な意味で) 整ってきているから、まだしもマシ。それと比べると、ソマリア沖の方が遙かに始末が悪い。

ひょっとすると、海賊の被害が多発する海域では商船の自由な航行は止める、なんてことになるかもしれない。つまり、現場の手前に集合海域を設けて船団を組み、そこには必ず軍艦を最低 1 隻は護衛につけると。

なんのことはない、第一次世界大戦・第二次世界大戦で、ドイツが展開した無制限潜水艦戦に対抗するために、商船の独航を止めて護送船団方式を組んだのと同じこと。というか、それにヒントを得て書いた。バラバラに単独航行していたら、被害に遭いやすくなる上に救援を受けにくくなるけれども、船団を組めば、いくらかは問題を緩和できるはず。

もちろん、集合して船団を組む分だけ余計な時間がかかるけれども、海賊に襲われて被害が出れば、そっちの方が時間も費用もかかってしまうのだし、いくらか余分な時間がかかっても、襲われる可能性を減らす & 襲われたときに対応できる手段を確保する、という方がマシ。要は、その辺のリスクを船主と荷主がどう判断するかという話になるかなと。

いくら海賊が重機関銃や RPG で武装していても、なにもエリア防空用の艦対空ミサイルや水平線の向こうまで飛んでいく対艦ミサイルは必要ないはず。それよりもむしろ、近距離で使える砲熕兵器、夜間でも周辺を監視できるようなレーダーと電子光学センサー (いくらなんでも、海賊船に ESM は付いていないだろう)、そして何よりも武装可能なヘリコプター。それもできれば 2 機は欲しい。あと、根拠地が少ないところで長期行動をとれるように、燃費のいいディーゼル主機を使い、居住性にも配慮すると。

えーと、それは「しきしま」型巡視船のこと ? いや、Mk.13 を下ろした O.H.Perry 級ミサイルフリゲートも、この手の任務には向いている感じがする。

ただ、軍艦の歴史をひもといてみると往々にして、あまりにも特定の用途・任務に特化しすぎると後でつぶしが効かなくなって困る事態に見舞われるので、「海賊対策用の警備艦」を作るのが正しい選択肢かどうかは分からない。遠方までローテーションで展開する全体だと、ある程度は数を揃えられないと具合が悪いので、ヘリ搭載能力を持つコルベットあたりが落としどころかも知れない。


そういえば、海賊対策のために海自も艦を出すべきだ、なんて主張がある様子。"show the flag" の観点からすれば十分に価値があるし、海賊対策にコミットする姿勢を見せるという意義もあるから反対はしないけれど。

ただ、それならそれで、人・装備・カネの面でも政府は然るべき手を打つ必要がある。任務は増える、しかも過去に経験したことのない任務で、気象条件の厳しい遠方に出るのだから負担も大きい、それでいて人も予算も増えません。では、現場が過負荷になって、ロクなことにならない。

自民党でも民主党でも同じことだけれど、政治家の皆さん。「どこそこに自衛隊を出せ」と勇ましい主張をするのは個人の自由だけれども、それならそれで、防衛費の下落傾向をどうにかする方が先じゃないですかね ?

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