Opinion : 目標とタイミングと手段と空気の話 (2008/11/17)
 

相変わらず、尾を引いている空幕長更迭問題。
そもそも、前空幕長の更迭に反対している人について「それは違うだろう」と思うのは、前空幕長の行動と、問題の論文の内容をごっちゃにしている人が多すぎること。つまり「日本は侵略戦争をしたわけではない、つまり前空幕長は正しい主張をしたのだから、更迭するのは間違いだ」といった類の言い分。

でも、論文の「内容」と、論文を出したという「行為」については、分けて考えないといけないのでは ? 内容が正しいかどうかについては盛大に議論すればいいと思うし、前にも書いたように、個人的にどういう考えを持とうが自由。そこまで口を出して「政府見解に反する考えを持つような人を重要ポストに据えるな」なんていい出したのでは、思想統制に他ならない。

前にも書いたように、「空幕長という立場にありながら、政府見解に反する発言をすることが及ぼす影響について判断できなかった」のが最大の問題。だってそうでしょう。煎じ詰めれば軍人 (あえてこう書く) というのは、「正しい目標 (goal ではなくて target の方) を」「正しいタイミングで」「正しい手段で」叩くのが仕事。なのに、目標もタイミングも手段も間違えたんだから。


目標・タイミング・手段の一部、あるいは全部を間違える例。

たとえば、イラクでもアフガニスタンでもいいけれど、「どこかの村落にテロ組織の拠点があり、そこを策源地にして攻撃を仕掛けている」という情報が入ったとする。

そこで、500lb の Mk.82 爆弾を 84 発積んだ B-1B を 20 機ばかり差し向けて、合計 1,680 発の爆弾を投下、村落をまるごと消滅させて更地にしてしまったとする。なるほど、それでターゲットは殲滅できるかも知れないけれども、後で予想される政治的リアクションを考えれば、どう見ても手段を間違えている。絨毯爆撃で町や村をまるごと消滅させて石器時代に戻すなんて選択肢は、当世では許容されない。

さらに、何か重要な政治的取引をまとめようとしている直前のタイミングで、そんな「おいた」をやらかせば、政治的取引の話まで壊れてしまう。それはタイミングを間違えた例。パッと思いつかないけれども、目的を実現するために選んだターゲットそのものが実は大間違いだったという事例も、戦史をひもとけばいろいろ出てくると思う。

だから、何か達成すべき課題を与えられたときに、さまざまな方面から検討した上で、最適な手段とタイミングと目標を選ぶのは、プロの軍人の専権事項であり、特に手段の選択については政治家には難しい仕事。独裁者にありがちだけれど、政治家がそんなところまで細々と口出ししても、ロクなことにはならない。

ただし手段については、過去には正解とされてきたものが、現在では間違いだったり、過去には実現不可能とされてきたものが、現在では技術の進歩によって実現可能になっていたり、ということもあるから、何が正しい手段なのかについては、時代が変われば変化していくものであり、常に勉強が必要なんじゃないかなあと。

そんなこんなで冒頭でも書いたように、正しい目標・タイミング・手段を選ぶ能力を欠いている軍人では困るということ。特にタイミングについては、「空気 (= その場の状況)」を読む能力が求められるはず。それができなかったのだから、更迭されても仕方ないだろうと。

ただし、それは「空幕長」というポストに対してのものだから、定年退職の後で退職金の自主返還まで求めたのは、法的な整合性の話を抜きにしても、やり過ぎ。


「空気」を読む能力、と書いたけれど、朝日新聞かどこかが「空気読め」(または「空気を読めない」) という言葉を槍玉に挙げた際に、この言葉の解釈を間違えていたように思える。

つまり、この言葉を槍玉に挙げたのは「周囲の空気を読んで合わせるとは、いいたいこともいえない自主的言論統制社会になって、それはいつか来た道であり、"ぐんくつの響き" が聞こえてきて qあwせdrftgyふじこ」という考えがあったのではないか、と推測してみたのだけれど、だとすれば、それはちょっと違うんじゃないのと。

平たくいえば、「空気読め」という言葉は本来、「場違いなことをするな」「TPO を弁えていないことをするな」という意味だったんじゃないの、と思ったのだけれど、違うの ?

むしろ、特定の方向に向けて世間の「空気」を作り出しているのは、マスコミじゃないのかなあ ? 「空気読め」の話についていえば、「空気読め」という言葉は良くない、という「空気」を生み出して、そこから外れたことをすると「空気読めない」というレッテルを貼る結果につなげているのではないのかなあ ? (以下無限ループ)

そういえば、「トレンド」とか「流行」とかいうのも、そこから外れると時代遅れで恥ずかしいという「空気」を作り出して消費を煽るための道具でしょ、あれは。

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