Opinion : ぶっちゃけ過ぎた発言の裏にある (かも知れない) もの (2008/11/24)
 

先日、DefenseNews.com が報じていたニュースで、中国国防部の人が Financial Times 紙の取材に対して「我が国にだって空母を持つ権利がある」「空母を 10 隻も抱えている度去年の国とは違う、我が国のは近海防衛用だ」と発言した、というのがあった。これを見た途端にコーヒーを吹きそうになった。

だってそうでしょう。空母というのはそもそも、飛行場を確保できない場所でも航空戦を展開できるようにする、いわば移動式飛行場。沿岸・近海の防衛なら、中国には Su-27 も空中給油機もあるのだから、わざわざカネがかかりまくる空母なんぞ建造する必然性はゼロ。なのに、どの口で近海防衛用だなんていいますか、と。

多分、中国国防部がいうところの「近海」とは、太平洋の西半分を指しているのではなかろうか。と、嫌味はこれぐらいにして。


「中国の空母」に限ったことではなくて、何か装備調達を行う際に「これは防衛的な用途だから」と言い訳を付けるのは、よくある話。アメリカの DSCA (Defense Security Co-operation Agency) が議会に FMS (Foreign Military Sales) の通告を行うときなんか、毎度のようにこの手のエクスキューズが付いている。

あと、核開発に乗り出した国が「これは平和目的である」と言い訳を付けるのもお約束。その割には IAEA の査察を拒否しちゃう場合があるのが面白い (面白くねぇよ !)。

どのケースにしても、(たとえそれが見え透いたものであっても) 何か言い訳せずにはいられないのだろうなと思った。空母の建造でも核開発でも、諸外国から何らかの疑念を持たれるのは避けられないから、口先だけでも打ち消しておかないとヤバいと。

本当に疑念を持たれないような状況、あるいは実績があれば、わざわざ「平和目的でござい」なんてエクスキューズを付ける理由はない。実際、日本には原子力発電所がたくさんあるけれども、それを見て「日本は原爆を作ろうとしている」と騒ぎ立てるのは一部の電波さんに限られている。

つまり、何かする際に、訊かれてもいないうちからエクスキューズを付け始める、あるいは「防衛的」とか「平和利用」とかいった話を殊更に強調するのは、表向きの建前と違う裏の目的があるとか、本音と建前が違っているとか、そういう状況であり自覚もあるんだと判断してもいいかもしれない。

ちなみに「中国の空母」について書くと、彼の国ではずいぶん前から、米海軍に倣って「空母の艦長はパイロット出身者に」ということで、パイロット訓練を受けた士官を水上艦の勤務に就けていて、その世代がそろそろ艦長を引き受ける時期にさしかかってきている。そこまでの深慮遠謀があるのだから、ちょっとやそっとの言い訳では、誰も信じてくれないのではないかと思うのだけれど、どうだろう。

しかしこれ、なんとなく「形から入ろうとしている」感が否めないのだなあ…
私がよくいうジョーク、つまり「ディスカバリーチャンネルの DVD、あるいは米海軍の空母が出てくる映画のビデオをかき集めて、キャリア オペレーションについて必死になって研究しているんじゃないか」も、ジョークで済まないような気がする。飛行甲板に配置する作業員が着る職種別のジャージの色が、米海軍とまったく同じになったら笑うよ ?


だいたい、「我が国には空母を持つ権利がある」「空母を持つのは大国の夢」とかいう類の発言、まるで子供がおもちゃを欲しがっているみたいだ。どう見ても嘘くさい「近海防衛用である」発言も含めて、業界のプロの発言とは思えない。

本気でそんな発言をしている可能性も皆無とはいえないものの、実はむしろ、わざとすっとぼけた発言をして見せて、「中国の空母保有構想」に対する諸外国の反応を調べようとしている、つまり観測気球を上げたというのが、本当の狙いなのかも知れない。となると、私なんか見事に釣られたことになるけれど。

だって、本気であんな発言をしていて、裏に何もない、字面通りの意味なのだとしたら、ちょっと馬鹿っぽすぎやしませんか。策略とか奸計とか深慮遠謀が大好きな彼の国の高官が、そんなマネを本気でしでかすとは考えにくい。

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