Opinion : 横須賀で見た、サイレントマジョリティの本音 (?) (2008/12/8)
 

土曜日に、横須賀まで出かけて USS George Washington (CVN-73) の一般公開を観てきた。Nimitz 級原子力空母そのものは、10 年ばかり前にネームシップを見物したこともあったから初めてではないけれど、やはり比較的新しいフネだけに、至るところがきれいでいい。
(くたびれて帰宅してみたら、仕事がドカドカと発生していて蒼ざめたのは秘密)

それはともかく、面白かったのは汐入の駅前。反基地団体だかどこかの宗教団体だか知らないけれど、要するに米海軍の原子力空母のプレゼンスに反対するビラを配ったり演説をしたりしているのに、大半の人が無視して通り去ってしまっていた。その後の報道によると、土曜日の一般公開に集まった人は 29,000 名ほどだった由で、反対活動をしていた人より何百倍も多そうだ。


もちろん、この 29,000 名の大半は私みたいな "よく訓練された軍ヲタ" ではなくて、単に物珍しさで原子力空母を観に行って、ついでにアメリカンな食い物を楽しんでイルミネーションを楽しんで、フェンスの向こうのアメリカをのぞき見てみよう、という人だったはず。それでいいと思う。

実際、ピザやハンバーガーやホットドッグの屋台には行列ができているし、飛行甲板では金筋を何本も袖に付けた海軍士官が気さくに記念撮影に応じているし、またそこに行列ができている。まことに友好的かつ微笑ましい光景で、観ているこちらも楽しくなった。

去年なんか、金筋 4 本つけた海軍大佐 (USS Kitty Hawk の艦長) が飛行甲板の上でサイン会をやっていた ! あれにはほんと、驚いた。

アメリカという国は (もちろん例外はあるにしても) 食い物の旨さで知られているわけではないけれど。ばかでかいハンバーガーやホットドッグ、それに自分でケチャップやマスタードを使って味付けをするスタイル、やたら巨大なボトルに毒々しい色の液体が入ったゲータレード (笑)、そんなところで「アメリカ」を感じて異文化体験をできるだけでも、貴重なチャンスだと思う。

そういえば、屋台で売っていたチョコチップクッキーを買って食べてみたけれど、「カントリーマアム」みたいに中がしっとりと柔らかいクッキーで、個人的に好みに合う。次にベースに行ったときに売っていたら、また買いたい。

おっと、閑話休題。
ともあれ、日米同盟がどうとか、軍のあり方がどうとか、在日米軍のプレゼンスや抑止効果がどうとか、そんな小難しいことは考えていなくても。日本におけるサイレントマジョリティは、在日米軍の存在に対して少なくとも否定的にはならず、イベントがあれば気軽に出かけていって楽しんでいるのだなあ、なんてことを考えながら帰途についた次第。

もちろん、ときには困った事件を起こす跳ねっ返り者もいて、そういうのに対しては断固たる措置をとってもらいたいと思うけれども。じゃあ日本人が、あるいはその他の外国人が在日米軍と比べてはるかに清廉潔白で問題を起こさないかというと、そういうわけでもないし。
そこのところを理解しているのか、あるいは感じ取っているのか。なんにしても、件の 29,000 名が「在日米軍は出てけー」というノリでなかったのは、紛れもない事実。

その一方で、青筋立てて金切り声を上げて絶叫調で演説したり、十年一日どころか五十年一日ぐらいの内容のビラを撒いたりしているようでは、悪いけど在日米軍のソフト作戦には対抗不可能だと思う。戦略も戦術も根本から改めないとダメでしょ。

だいたい、「軍隊がなければ平和になる」とか「無防備がいちばん合理的」とか「こちらが殺さないと宣言すれば相手だって殺しに来ない」とか「基地がなければ攻撃されない」とか、そんな類の世迷事ばかりを壊れたレコードみたいに繰り返していても、サイレントマジョリティには相手にされないってことぐらい、土曜日の横須賀の様子を見ただけで一目瞭然だろうに。

それだからこそ「原子炉の安全性が云々」と不安感を煽る作戦に出たのかも知れないけれど、お生憎様。サイレントマジョリティは、米海軍の原子炉より北朝鮮のテポドンなんかの方が危険だと思っていて、それに対抗するには (積極的か消極的かはともかく) 在日米軍のプレゼンスを受け入れる方がよい、と現実的に考えているってことなのでは。これについては、リッコーヴァー提督にも感謝しないといけないな。


普段、さまざまなルートから伝わってくるのは「在日米軍の不祥事」とか「アメリカの悪行」とか「反対運動のデモ行進」とかいうものばかりで、それだけ見ていると日本人の大半が在日米軍の撤収を求めているように見える。でも、実際のところはそれほどでもないんじゃないの ? むしろサイレントマジョリティは肯定的なんじゃないの ? というのが個人的な印象。

だからこそ、新聞記事でも「(原子力空母の) 安全性をアピールしようとしてたんじゃないの」なんてコメントを載せる程度のことしかできなかったのではないか、と書いたら言い過ぎだろうか。

ひょっとして、ネガティブな話ばかりが表に出るのもコミンテルンの陰謀 ? (マテ)

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