Opinion : 第二次テポドン祭りに関する雑感 (2009/3/16)
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「祭り」とは不謹慎な、と突っ込まれそうではあるけれど、それはそれとして。
今回に限ったことではないけれども、北朝鮮に強硬な姿勢をとりたい人、北朝鮮に融和的な姿勢をとりたい人、MD に肯定的な人、なんとかして MD を否定するきっかけを求めている人、とさまざまな立場や思惑があるので、各方面から出てくるさまざまな声を見ていると、まさに百家争鳴。
そんな中で、一応は自分としても、何か書いておこうかねえ、と思った次第。とりあえず、確実にいえることと、推測あるいは願望の区別はちゃんと付けないと。
まず、確実にいえることは、北朝鮮が今回の件について「衛星打ち上げ」という大義名分を掲げているにしても、根っこにあるのは弾道ミサイルの開発だということ。
現実問題として、衛星打ち上げに使用する SLV (Space Launch Vehicle) と弾道ミサイルの間には、構造的に大した違いはない。地球上のどこかに弾道飛行させるか、衛星を軌道に投入するための針路に載せるかという違いがあるにしても。だから、弾道ミサイルを SLV に転用した事例は幾つもあるし、それ故に SLV を持っている国に対して「弾道ミサイル転用疑惑」が持ち上がる場合もあるし。
ただ、後者についていえば、そういう疑惑が出てくるかどうかは日頃の行い次第。だから、日本に H-II があっても「弾道ミサイル開発の布石だ」なんていう声は、皆無ではないにしても小さい。それに H-II は燃料の常時貯蔵ができない上に、地下サイロも移動式発射器も存在しないから、兵器としての有用性は皆無に近いし。
一方、北朝鮮はどうかというと、限りなく黒に近い核開発疑惑に加えて過去に弾道ミサイルを試射したり輸出したり他国に技術援助したりした実績があるから、これまた日頃の行いにより、たとえ衛星打ち上げだということにしても「弾道ミサイルへの転用を視野に入れている」といわれても抗弁できまい。
では、弾道ミサイルの試射であれ衛星の打ち上げであれ、それに対して日本で何ができるかという話になると、これがなかなか難しいところ。
北朝鮮が通告した危険海域の情報からいって、発射コースが日本のどこかの上空を通るのは確かだから、放っておけ、とはいえない。前回みたいに試射に失敗して、日本の上空で余計な「落とし物」をするかも知れないし。そういう事態であれば、SM-3 なり PAC-3 なりで要撃する体制をとるのは問題ないはず。というよりも、後述するような理由から要撃体制をとるべき。
通告したコースが本物なら、アメリカ本土 (含アラスカ) には向かわないから、今回の件に限定すれば、「アメリカに向かうミサイルを日本で要撃した際の、集団的自衛権がどうのこうの」という議論は、あまり意味がなさそう。仮に北朝鮮からアメリカに向かうミサイルを発射した場合でも、コースは日本列島よりも北方に寄るから、これとて日本が要撃の当事者になるかどうかというと疑問。もっとも、ハワイやマリアナ諸島を狙った場合はどうよ、という話はあるにしても。
ただ、技術的な話は抜きにして法的な意味でどうするか、という議論には意味があると思うけれど。この手の騒動をきっかけにして、日本が目の前の現実に対してどう向き合っていくか、という議論は不可避だと思うから。
実のところ、今回の一件で日本にとって美味しいのは、データ収集 & 予行演習の機会ができることではないかと。
なにしろ、日本の上空を通って飛んでいく (ことになっている) わけだから、監視するなという方が無理。特に成功した場合には、どういう軌道を通って、どんな挙動を示しながら飛んでいくかを把握できれば、いいデータ収集になる。衛星打ち上げならなおのこと、弾道ミサイル攻撃との違いを把握するためのデータ収集になるだろうし。
あと、以前にも書いたかも知れないけれど、弾道ミサイル防衛で何が難しいかといえば、発射から着弾までの時間が短いから、探知→追跡→判断→意志決定→(交戦) のシーケンスを短時間の間にこなさないといけない。それをいきなりぶっつけ本番でやるのは難しいだろうから、何回も予行演習をして慣れておかないといけない。
今回の場合、「衛星打ち上げってことになってるけれども、弾道ミサイル試射の可能性もゼロではない」という想定の演習 (というより、限りなく本番に近いけれども) を、しかも本物を使ってできるわけだから、またとない機会が得られたように思える。AN/SPY-1 や FBX-T、ひょっとすると FPS-5 にとっても、本物のターゲットを使った探知ができれば、これはなかなか貴重な機会。
もっとも、それを狙ってロシアや中国が電子情報収集機を飛ばしてくる可能性も、決して低くはないはず。それぐらいのことは考えるでしょ、常識的に考えて。
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それに、前回の実績があるから、また失敗して、途中で「落とし物」をするかも知れない。そうなると日本の上空から何か降ってきてもおかしくないから、本番と同じつもりで立ち向かってもいいぐらい。否、本番と同じつもりで立ち向かうべき。
弾道ミサイル防衛というと「ピストルの弾をピストルで撃つようなもの」とかいって、要撃のためにミサイルを当てることの難しさを協調する人ばかりが多い。確かに分かりやすい分野ではあるけれども、それ以前の指揮・統制レベルの問題にも、もうちょっと注目して欲しいのだけれどなあ。と思った次第。
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