Opinion : 見えない敵と戦う人々 (2009/4/27)
 

誰かに喧嘩を売って、あるいは喧嘩を売られてバトルするならともかく、案外とよく見かけるのが「見えない敵と戦う人々」。以前から何度もネタにしている陰謀論者なんかは、まさにその典型例。実在するかどうかも怪しい陰謀、あるいは陰謀組織をターゲットにしてシャドーボクシングを展開している。

結局のところ、陰謀論に固執することが「世間のみんなは知らないけれど、自分は真実を知っているんだもんね」的な優越感・快感につながるのと似たところがあって、見えない敵をでっち上げて戦うことで、「強大な (とは限らないけど) 敵に対して雄々しく立ち向かう俺様はえらい」的な快感を得られるのだから、安上がりでいいなあと。

そういえば、私のことを「親米・親ユダヤのプロパガンダを撒き散らす、闇の陰謀組織の一員」呼ばわりしている人がいるそうだけれど。でも、そんなことするから却って面白がってしまい、「横須賀ネイビーバーガーを食べる OFF 会」なんてものをやっている。まさに藪蛇。


いわゆる「見えない敵と戦う」の定義からは外れるかも知れないけれど、相手が自分のことを知っているのかどうかも定かでないのに、勝手に「相手が自分のことを意識しているに違いない」「相手が自分のことを脅威に思っているに違いない」「相手は自分が書いたものを見ているはずだ」とかなんとかいう類の思いこみに走る人もいる。

それの派生型で、「自分が政府にとって耳の痛いことばかり書いている」→「電車の中で、不審な人物に尾行されているような気がした」→「自分は公安にマークされているに違いないっ !」とか。

さらにすっ飛んだバリエーションで、「ネット右翼とは公安がやっている工作活動だ」という話が、まことしやかに囁かれていたり、それを真に受けて信じ込んでいる人がいたりする。公安警察って、そんなに暇だったっけ ?

たとえば、Web や blog で何か体制批判みたいなことを書いて、実際に政府機関からアクセスがあってログが残ってた、というなら、まだ分かる。「どこかの Web サイトや blog で自分のことが批判されていた」という場面で、直リンクされていたとかリファラが記録されてたとかいうのも同じ。

そういえば、税務訴訟の一件が盛り上がっていたときに (実はまだ、再審請求後の放置プレイが継続中)、「mof.go.jp」というドメインを持つリモートホストからアクセスがあった。といっても、これは「アクセスがあった」というだけの話で、そこから先、先方がどういう反応をしたかどうかは知らない。

そういうエビデンスすらも存在しなくて、単に「不審な人物に後をつけられているような気がした」「これは自分が書いたものを批判しているに違いない」といった思いこみレベルでは、妄想といわれても仕方ない。たいていの場合、本人が思っているほどには、まわりの人は自分のことなんて見ちゃいないものだと思うけれど。

そういえば、「自分の blog で厳しい体制批判をやっているから、Google 八分にされた」と吹聴している人がいるとかいう話を小耳に挟んだことがあるけれど、これだって似たようなもの。要は、「国家権力に敵視され、監視されるぐらい自分はグレートな存在なのだ」という話に持って行って、自分を大きく見せたいだけじゃないのかと。


こういうのって早い話が、自分を安全圏に置きながら「あえて危険に身をさらす勇者」を気取りたいのかなあ、なんてことを考えてみた。それは、本当に危険に身をさらしている人に失礼というもの。

こんなことを書くと真っ赤になって怒り出す人がいそうだけれど、今の日本やアメリカみたいな体制の国だからこそ、安心して陰謀論を吹聴したり、あるいは見えない敵と戦ったりできるわけで。本当に危険な体制になっている国だったら、そんなこと、表立ってやれたもんじゃない。

国によっては、体制批判をガンガンやっているうちに、それこそ本物の「国策捜査」や「国策逮捕」を食らって、事と次第によっては冤罪で銃殺刑を食らって、残された家族に弾代の請求が行くことだってあるかも知れない。日本だって、当局が恒常的に監視するぐらい「要注意」と思わせる組織には、それ相応のバックグラウンドや理由があるのが普通 (例 : オウム真理教)。悪口ぐらいでいちいち追いかけていられませんって。

現実問題、国を相手に裁判を起こしてワアワアやっている私が普通に暮らしていられるのだから、blog で国の悪口を書いたぐらいで、当局に注目されるとか公安に目をつけられるとか尾行されるとかいっても、笑い話にもなりませんぞ ?
国家権力がそういうのを本気で取り締まろうと思ったときに、あるいは言論を都合良く動かそうとしたときにどうなるか、という格好のサンプルは近所の別の国にあるのだから、そっちと比較してみてからの方がいいと思う。

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