Opinion : ピースボートはツンデレ団体 ? (2009/5/18)
 

先週、最高のお笑いニュースだったのが、「ピースボートの船が、海上自衛隊の護衛を受けて航海した」というやつ。まるで、「オープンソースこそ正義 ! Windows なんて要らない !」という原稿を、Windows 上で動作する Microsoft Word で書いていたのがバレたかのごとく (え

毎度おなじみの「自衛隊なんて不要」「自衛隊の海外派遣反対」「戦争ではなく話し合いで解決を」とかいう主張とは裏腹に、いざ自分達が海賊の脅威に直面したら、その海上自衛隊の護衛を受けたというオチ。ひところ話題になったツンデレじゃあるまいし。海賊と話し合うというオプションを行使すれば、ちっとは株が上がっただろうに。

私は以前から、「自衛隊を廃止すべき」とか「日米安保解体」とかなんとかいう類の政府批判の主張をする人に限って、自分が戦乱に巻き込まれて被害を受けたら「国が自分達のことを護ってくれなかった」とわめくのではないか、と書いてきた。今回の一件、それを図らずも裏付けてくれたのではないかと思える。


なんていう声に対して、ピースボートを擁護するための理屈をいろいろと、必死になって考え出している人がいる。日本では思想信条の自由が認められているから、「お好きなように」としかいいようがないけれども、どう足掻いても旗色が悪いのは事実。

あれはピースボートが外国の船社から客船をチャーターして運航しているものだから、安全に関する責任も船社側にある。したがって、船社側が海自の護衛を受けたいといえば、ピースボートとしては従わざるを得ない。乗客の思想信条がもとで、船と乗組員を危険にさらす訳にはいかないのだから。だから、船社側が護衛を受けると決めた判断は正しい。

ただし、それは裏を返せば、ピースボートが唱える主義・主張には船社側を説得するだけの力はなかったということ。もしも、最初から船社に対する説得をしていなくて、船社側の判断に従っただけなら、なおのこと説得力のなさを当人達が承知していたということになりかねない。

それに、船社と主催者の関係がどうかということに関係なく、世間一般は「ピースボートが海自の護衛を受けた」と受け取るはず。だから、どう理屈をこねても、ピースボートにとってダメージがでかい一件なのは間違いない。

ピースボートの関係者じゃなかったと思うけれど、「海賊が嫌なら喜望峰を迂回すればよろし。9 条を護るための経費としては当然」なんて主張があった。けれど、それすらも無視しているのだから、なにをかいわんや。

ともあれ、平素の主張とは真っ向反対の行動をとってしまったという事実は残る。そして、船 1 隻について説得力を持たなかったことが証明された主張を、日本国に対しても同様に展開できるものなのか、というツッコミも可能になる。

以前に「自己責任」という言葉に絡めて、「自分で主張したことに付随して発生したことについて、自分で責任をとれないような主張をするのはどうか」と書いた。
それを敷衍すると、ピースボート (と、そこからつながりのある各方面) が、自分達で責任をとれないような主張を、日本国という一種の船を共有する体制、あるいはそこに住む国民に対して展開してきたということになりはしないか。

それって、あまりにも無責任な行動だったってことになりませんか、常識的に考えて。船社ひとつ説得できなかったロジックでもって、果たして日本国民 1 億 2,000 万を説得できるのか ? それはどう見ても不可能。となると、日本国という同じ船を共有する国民に対して、あまりにも失敬な話なのでは。


結局のところ、「戦争に関連しそうな物事を、見えないところに封じ込めて否定すれば平和になる」「武器・軍隊の存在さえ否定していれば平和になる」「9 条のマントラを唱えていれば平和になる」という従来の主張が、厳しい現実の前にはまったく無力だったということを、身体を張って実証してくれたのが今回の一件。

いくらかでも学習能力というものがあれば、今回の一件を教訓にして、平和を実現するための方法論を根本的に再構築するのが常識的判断というもの。でも、絶対的かつ神聖なる存在の教典をひっくり返す度胸があるかというと、多分ない。

そして、ますますおかしな方向に暴走して、大多数の国民からそっぽを向かれそう。それは平和を希求する上で足を引っ張りこそすれ、どう見てもプラスにはならないと思うのだけれど。いっそ、ピースボートが政治色抜きの単なる船旅業者に徹するというなら、却ってスッキリするだろうけれど。

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