Opinion : 万人に好かれようとすると… (2010/2/1)
 

…万人に嫌われるような気がする。以上。

というだけでは不親切もいいところだけれど、名護市長選の後の鳩山内閣のバラバラ発言ぶりを見る限り、そんな感じがしてならない。

最近、別の記事でも同じようなことを書いたような気がするけれども、いろいろな立場の人が一緒にいれば、モノの見方や利害の対立が生じるのは当たり前の話。そこで全員の顔を立てようとか、あるいは全員が喜ぶ結論を出そうとかいう邪心を起こすと、むしろ全員が納得できないような結論しか出てこないのでは。


「兵士に告ぐ」(杉山隆男著) の中で、中隊長が部下の小隊長に「部下のためを思うというのは、部下に楽させるという意味ではなくて、いざというとき死ななくても済む部下にすることだろう」と諭す場面が出てくる。確かに、楽させる方がパッと見のウケは良さそうだけれども、それでは危急の際の役に立たない。

そういう意味では、これまた部下を厳しくしごき上げて、感情を排除して (?) 指揮官としての任務にあたっていた米陸軍航空隊の某将軍 (戦後、空軍独立後に参謀総長にまで栄進した誰かさんのこと) にも通じる話かも知れない。でも、「部下に厳しいことばかりいっていると、却ってソッポを向かれるんじゃないか」と思ってしまう心情も、それはそれで分かる。

とどのつまり、厳しいことをいったときに、その理由を相手がちゃんと分かっているか、厳しさの裏でフォローもできているのか、という話なのだろうけれど。それを、相手が表面的に喜ぶ話だけ並べて済ませよう、自分が悪者にならずに済ませよう、と思ってしまうと、冒頭で書いたように全員からソッポを向かれることになるのでは。

思うに、これはトップの位置付けというか、どういう種類のトップか、という話と関係あるんじゃないかと。

つまり、肝心なことはみんな下の人間が取り仕切っていて、トップは頷くだけ、御神輿に乗っているだけだと、そのトップは厳しい決断から逃げやすくなるんじゃないかという仮説。その対極に位置するのが、自分でちゃんと意志決定するトップ。ただ、これは単なるワンマン、独裁者と区別しないと、厄介なことになってしまう。

部下からの意見や勧告などを聞き入れた上で (部下の言いなりという意味ではなくて、意見・勧告にも配慮するという意味)、最後の決断は自分で下す。それが気に入られない、あるいはマイナスになる場面も出てくるだろうけれど、それは自分が泥を被る覚悟で説得して、納得させる。あるいはフォローをする。それができるのが「ちゃんと意志決定するトップ」。

これがワンマンや独裁者だと、単に自分の言い分を押し通すだけで、人のいうことを聞かない。その場合、周囲にはイエスマンばかり集めるようになるだろうから、部下との関係や人の出入りを見ていると、ワンマン・独裁者なのかどうかを判断する材料になるのでは。

それと同じぐらいタチが悪いのが、部下がトップを突き上げて好き放題、トップはそれに対して無力、という状況。おそらく、そういうときのトップは右往左往するだけで、自分で自分の行動・言動に責任をとれない。トップがしっかりしていれば、部下が不必要な突き上げをやっても抑えられるのだろうけれど。

そんなこんなで、肝心なところで自分で意志決定できて、かつ「批判、反対が出るかも知れないけれども、これが必要だと信じるからやる。反対する奴は俺が説得するし責任もとる」といいきれる人ならいいけれども、それができないような人がトップに座ったら、その組織は不幸だろうなと思った次第。

もっとも、特に厳しい決断をしなくても物事が順調に進んでいるのであれば、八方美人で御神輿に乗って祭り上げられているだけのトップがいても、あまり害にはならない可能性が高そう。ところが、厳しい決断を迫られる場面、何か危機に直面している場面でそういうトップがいると、不幸が倍加 (では済まないかも) するのは間違いない。

それだから、自分は組織のトップに座ることはできないよなあ、部下を統率していくなんてできないよなあ、と思ってしまう。一人で商売している分には、少なくとも統率とかいうことは考えなくていいから。


そういえば、どちらからでも押された方に動くという意味で「便所のドア」なんて呼ばれた陸軍大将がいたけれども、それって冒頭で書いた、普天間代替基地問題にも通じる話かも。もっとも、杉山元大将が「誰にも嫌われまい」として全方位ウケを狙ったのか、それとも単に信念がないだけだったのか、そこのところは定かではないけれど。

当節では、「押された方向に動くドア」を付けたトイレというものが存在しないような気がするけれど、それはそれ。

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