Opinion : 非日常イベントの損得勘定 (2010/2/15)
 

なんでも、関西本線で線路内に立ち入って撮影をやっていて、列車を非常停止させてダイヤを乱した人がいたとかいう話。線路の中に立ち入るな、なんていうのは常識以前の話だけれど、実は 1970 年代の SL ブームの頃にも似たような問題はあった模様。まさに旧くて新しい問題。

これを聞いて思ったのは、「趣味人がただの "イベント屋" になっちゃっていいのかなあ」という話と、「イベントを仕掛ける鉄道会社にとって、それがペイするものになっているのかなあ」という話。自分もなんとなく 500 系の "追っかけ" をやっている身だから、こんなことを書くのは自己矛盾もいいところなのだけれど。


去年、磐越西線に乗りに行ったら、たまたま「SL ばんえつ物語」の運転日だったので、線路脇にはカメラを構えた人がゾロゾロ。その前に只見線に行ったときにも、途上で利用した上越線で「SL みなかみ号」の運転があったので、これまた線路脇には (以下略)。

それは別に個人の自由だけれど、撮影ポイントは往々にして駅から離れているものだから、そうなるとクルマで行ってしまう場合が少なくない。それでは鉄道会社におカネが落ちない。もちろん、当該列車を利用する人の分は収入になるし、列車が走る場所まで移動する分の乗車券収入、駅弁などの副収入などは計上できるにしても。

とはいえ、それらをひっくるめて、ちゃんとペイしてるのかなあ。と余計な心配をしてみた次第。定期列車が廃止になるとか、あるいは車両が交代するとかいうことなら、お名残乗車の需要は純増、ないしはそれに近いことになるかも知れないけれど。
(金額的には小さいだろうけれど、500 系がらみだと、小田原駅の入場券収入なんていうのもあるかな ?)

これが自衛隊や米軍だったら、ときどき開催するイベントに集中せざるを得ないのは分かる。普段は黙々と有事に備えて練成に励んでいなければならないし、そこまでいちいち一般公開するようなもんじゃないから。ときどき開催するイベントを通じて、理解を広めたり親近感を持ってもらったり、という対応になるのは致し方ないところ。イベントで警備や案内を務める隊員の方は、大変だと思うけど。

でも鉄道業の場合、身も蓋もないことを書いてしまうと、イベントよりもむしろ、日常的に利用する "フツーの利用者" の方が大事なんじゃないかと。おそらくは、そちらの方が一見さんよりも、多くのおカネを落としている場合の方が多いだろうし。

もっとも、イベント列車の運転が地域ぐるみの観光キャンペーンとリンクしているような場合は別。それは鉄道事業者だけで完結する話ではなくて、それぞれの土地を訪れる人が増えて、認知度が上がって、飲食店や観光拠点や宿泊施設におカネが落ちて、トータルでプラスになれば OK という話になるから。

単なる偶然の所産とはいえ、例の有楽町 ITOCiA のイタメシ屋さんは、ひょっとすると「500 系特需」なんてことになっていそう。JR とは何の連携もしていないだろうけれど。でも、これをきっかけにして「いいお店が見つかった」といってリピーターが増える可能性はあるかも ?

じゃあ、たとえば京浜東北線における 209 系の引退興行はどうなのさ、という話。
だいたい、登場した当時は「使い捨て電車」とか「走ルンです」とかなんとか、さんざん馬鹿にされたのに、引退するときだけ、えらい騒ぎになっていたと聞く。日常的にさんざ乗っていた身からすると、なんだかなあ、というのが正直なところ。いろいろな意味で画期的なところがある車両だけれど、それがプラスの面もマイナスの面も、どれだけ正しく理解されていたかというと、ちょっと疑問。

この調子だと、引退が見えてこないうちは大して見向きもされなかった車両、たとえば東海道新幹線の 300 系 J 編成あたりも、そのうちフィーバーしちゃったりするんだろうか。これが 100 系や 200 系なら、まだ分かるけれど。
(300 系の名誉のために書いておくと、技術的なブレークスルーを成し遂げたという点では重要な車両。ただ、快適性の面で至らなかったという話で)

あと、まだ騒がれ方は少ないけれど、これからヤバくなりそうな面々というと、「きたぐに」の 583 系、新幹線 200 系 (特に K47)・E1 系、「はまかぜ」の 181 系 (すでにフィーバーの兆候あり)、中央線の 201 系、房総方面の 113 系 (え ?)、山手線のサハ E230 (ええ ?)、といったあたりになるだろうか。

またぞろ、撮影の際に熱くなり過ぎて、列車を止めるような「おいた」をやらかす人が出ないといいのだけれど。そういう事件が結果として、イベントの損得勘定を悪い方に押しやってしまい、イベントそのものを減らす方向につながったら自爆もいいところなのだし。


先週に書いた話と被るけれど。見る側にしても、イベントや引退興行みたいな「非日常空間」の熱気を味わうだけでなく、普段着の姿から見ておいて欲しいなあと思うことしきり。その方が、平素の姿も、車両そのものも、落ち着いて眺められるのは間違いないのだし。これ、車両だけでなく路線や駅でも同じことだけれど。

それに、鉄道愛好家を標榜するなら、平素から鉄道会社におカネを落とす、という姿勢を示すことがあってもバチは当たらないのでは ? 列車に乗るのはいうまでもなく、関連事業とかなんとか、いろいろな形があるわけだし。

鉄道ネタに限らず、たとえば自衛隊や米軍にしても、好きでいるから、あるいは興味があるからこそ、ただのイベント屋で終わって欲しくないというのは同じこと。特に安全保障をめぐる問題なんていうのは、関わる学問の幅がとんでもなく広いし、突っ込み始めるとキリがない奥の深さがあるのだから。

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