Opinion : 密約あるいは機密費に関する徒然 (2010/3/29)
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最近のニュースで、明らかに「それは違うだろう」と違和感を感じていたのが、例の「核持ち込みの密約」、それと「機密費の使途公開」に関するニュース。
もちろん、どこかの国の陸軍みたいに「それは機密ですのでお答えできません」の一点張りで何でもかんでも隠蔽されるのは問題だけれども、じゃあ、何でもかんでもあけすけ、開けっぴろげ、モロ出しにすればいいのかというと、そういうもんでもないだろうと。
そもそも、程度の差はあれ、誰でも「公にできない話」の一つや二つは持っているもの。それは仕事に関わるものかも知れないし、プライベートに関わるものかも知れない。自分みたいな不良社員でも、MSKK 時代の仕事に関して大っぴらにできない話がないわけではない。人によっては「出生の秘密」みたいな話があるかも知れない。
つまり、立場上、公にできない種類の話もあれば、公にしない方が皆が幸せでいられる種類の話もある。市井の一般市民でもそういう話と無縁ではないのだから、ましてや、企業の経営者であるとか、大臣であるとか、国家元首であるとか、はたまた軍の指揮官クラスであるとか、そういう重要な立場になればなおのこと。
とりわけ国政の話になれば、外交・安全保障でもその他の分野でも、公にしないで隠密裏に話を進めないといけないことって、いろいろ出てくるはず。
アメリカでは、功成り名を遂げた人が引退後に回想録を書いて出版するのがお約束みたいになっているけれども、あれだって、公にできる話だけを注意深く選んで書いているわけで。それ以外にも、関係者限りの話、あるいは当人が墓の下まで持って行かないといけない話は、きっと存在している。
ちょうど、米露両国が新しい核軍縮条約をまとめたけれども、両国で議論しながら内容を詰める過程では、おそらく色々なやりとりがあり、その中にはとてもじゃないけど公開できないような話があっただろうと想像できる。
そうなると、中にはおカネを動かさないといけない話だって出てくるだろう。そして、某海軍大将の言葉を借りるならば「用途をいちいち財務当局に説明しなくても済むのが機密費だろう」という話になる。後になって用途を開示するのでは、それはもはや機密費ではない。
だいたい、機密費について公開する、密約を暴く、といきり立っている民主党だけれども、「じゃあ、民主党には一切の秘密がないのか、あらゆる情報・出来事などについて公開しているのか」といえば、そんなことはあるまい。自分たちの秘密はそのまんま、他人の秘密は暴く、そういうことなら、それはただのダブスタという。
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じゃあ、機密だといえば何でも許されるのか、機密費と称して私的流用するような不祥事が生じたらどうするんだ、という反論は、当然ながら予想できる。でも、それに対して全面公開のモロ出しが正解かといえば、それは違うだろうといいたい。そんなことになったら政治が機能不全を起こす。伏せた方がいいことは伏せなければならない。
現に、普天間代替基地問題では各方面の人が、言わなくてもいいことまで各自の立場から勝手な発言 (にしか見えないぞ) を繰り返している。それら全部を組み合わせると矛盾の固まりになり、信頼もヘッタクレもあるかという状況になっている。本来なら公開すべきでないプロセスまでモロ出しにして、みんなに対していい顔をしようとするもんだから、却って事態を悪くしている。
先の話に戻ると。
まず、あらゆる分野に機密費、機密事項が必要なのかという定義付け。秘密にすべきこととそうでないことの区別、メリハリをちゃんとすることが重要だから。事なかれ主義で、何でもかんでも「機密」のハンコを押すと、却って保全が怪しくなる。本当に護るべき情報にだけ「機密」のハンコを押さないと。
あと、なにがしかのチェック機能が働く必要はあるので、機密費でも機密事項でも、たとえば財務当局、あるいは国会議員の中でセキュリティ クリアランスを与えた特定の人だけがチェックできるようにするというのは、ひとつの考え方。もっとも、その特定の人をどうやって決めるんだ、という問題はあるにしても。
あと、機密費、あるいは機密情報を扱う立場の人がずーっと同じだと、それが不正の温床になるかも知れないので、定期的に人を入れ替える枠組みを作るというのも、ひとつの考え方。
機密費の話の場合、「機密費が不正に、不当に使われるのが悪だ」という話が「機密の存在そのものが悪だ」という話にすり替えられているように見える。密約の話も同じで、その密約が結果的にプラスに働いたか、マイナスに働いたかという議論はそっちのけで、「秘密があることが怪しからん」という話にすり替えられていやしないかと。
機密というと、個人的には先日の、AN/APG-79 レーダーに関する記者説明会の話を思い出す。ボーイングの人もレイセオンの人も、抽象的な話ならするけれども、AN/APG-79 レーダーの具体的な性能に関わる話になると、途端に何も話せなくなってしまう。レイセオンが、というより米海軍が、AN/APG-79 に関してガチガチにガードを固めているのではないかと推測できるけれども、その辺の事情ですら公ではないから、これまた推測でしかない。
個人的には、米海軍が F/A-18E/F に対する "force multiplier" として AN/APG-79 のことを極めて重視していて、それ故に尋常ではないガードの固さにつながっているのだろうと思っているのだが、これもまた推測。推測に留まるのと、公式に「ハイそうです」と認めるのとでは、意味も重みも全然違う。
この件も含めて、誰にでも程度の差はあれ、秘密にしておかないとならない話、秘密にしておいた方がいい話はある。そこで、よせばいいのに歓心を買おうとして「秘密をなくします、公開します」なんてことを迂闊に口にする人は、却って信頼できないんじゃないかと思う。そういうところで、今の民主党は「野党根性」が抜けていない。
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