Opinion : 前向きと能天気の違い (2010/4/26)
 

以前にも、似たようなことを書いたことがあるかも知れないけれど、もしも被っていたら御勘弁を。

海外の架空戦記小説を読んでいると、ときどき「軍人は、どんな状況でもジョークのタネを見つけるという特技を持っている」なんていう記述に出くわす。たとえば、圧倒的な戦力を持つ敵と対峙していて、常識的に見て勝ち目はないんじゃないの、なんていう場面でジョークを一発、とかいう具合で。

自分が戦場に出たことがあるわけではないから、この話の真偽のほどは知らない。でも、ありそうな話だなとは思う。というかむしろ、難しい状況、辛い状況だからこそジョークが必要というか。一発、笑いをとることで、目の前の難局に立ち向かっていく気力を奮い起こそうじゃないか、ということなのかも知れない。

なんでいきなりそんな話を、となったのは、しばらく前に某社編集部の方と話をしていたときに、「井上さんって、いつも前向きですよねえ」っていわれたから。


といっても、自分が生まれついた頃からそういわれるキャラだったわけがなくて、むしろ後ろ向き (というのか ?) だった時期の方が長いと思う。過去の失敗経験なんかを延々と引きずってみたり、自責の念を強く出し過ぎて、自分で自分のことを壊してみたり。そういう経験があって、初めて「前向きですねえ」っていわれるような境地に達したような気がする。

とどのつまり、そうそう何事も自分の思い通りにいくわけではないし、むしろそうではないことの方が多いぐらい。ただ、そんな中で良い材料、好ましい方向性を見つけ出して、少しでも状況をいい方向に動かせれば、という感じかなあと。

たとえば、どこかに何か写真を撮りに行ったとする。晴天・順光で障害物もなく、ロケーションは抜群ということなら楽だけれど、そんな好条件ばかりとは限らない。逆光ならそれはそれで対応のしようがあるけれど、障害物だらけとか、すでに良い場所には先客がいたとか、ときには土砂降りの大雨だったとか (爆)

そんなときに「あーあ、駄目だこりゃ」と諦めて終了するのではなくて、どうすれば悪条件を緩和できるか考える、あるいは悪条件を逆手にとれないか考えるというのが、多分「前向き」っていうことなんだと思う。

実際、新幹線の写真を撮りに行ったら土砂降りの大雨に見舞われたことがあって、そこで「この天気なら水煙が盛大に上がるだろうから、それを活用するべき」と考えて実行したことがある。まさに「良い材料、好ましい方向性を見つけ出して」という言葉通りに。

そういえば、去年の観艦式では雨と波浪に見舞われて大変だったけれど、「これならミサイル艇と LCAC が狙い目に違いない」と判断して、迫力のある映像を確保できた (現時点でトップページに載せている写真は、その一例)。もっとも、乗組員の人は大変だっただろうけれど…

自分の日常生活、仕事、あるいは世の中のあれこれが思い通りの方向に行かないときでも同じで、とりあえずしゃがんでやり過ごすとか、良い材料を捜してみるとか、いろいろと対処の仕方はあるんじゃないかと。

ときどき、blog 界で世の中に対して「俺様の素晴らしい考えが理解されない、俺様の予測は次々に的中するのに俺様のことが認められない、俺様が不遇なのは世の中が悪い」とかいう具合に壁に向かってグチグチと文句ばかり垂れている人がいるけれど、そういう態度ばかりだと、ますます "人がつかない" 状態になって悪い方向に転がっていくと思う。

しかも、それを自分の日記帳とかチラシの裏に書いているならともかく、誰でも見られる blog で全世界に向けて発信していたら、「私はこういう生き方の人間です」って世界に向けてふれて回っているも同然。それを自分の周囲の人が見る可能性、考えたことはないんだろか。

何か失敗したときでも同じ。そこで「失敗した」という出来事に押しつぶされてしまうか、「失敗したけれど、それは○○がいけなかったから。この次はうまくやるぞ」となるかで、自分の気の持ちようも、周囲の受け止め方も、ずいぶんと違ってくるだろうに。最悪なのは、失敗したときに全部他人のせいにして済ませること。


ただ、勘違いされると困るから書いておくと、「前向き」と、「能天気」や「何も考えてない」は違う。たとえば仕事の話で、「できます、バッチリです、任せておいてください」と大見得を切っておいて、後になって「やっぱり駄目でした」というのは「前向き」とはいわない。

そういう場面で、「できること」「できそうなこと」「困難そうなこと」「不可能なこと」、あるいは「譲れるところ」「譲れないところ」をきちんと区別して、相手に説明して、納得してもらえるように話を持って行くのが「前向き」ってことじゃないかと。「これとこれは実現可能だけれど、これは難しい」とキチンと説明できれば、また相手も対応のしようがある。それを「全部 OK」または「全部駄目」のいずれかしか出せないのでは、相手も困ってしまう。

最悪なのは、大見得を切って相手の期待を膨らませておいて、後になってドスンと落としたり、ハシゴを外したりすること。なまじ期待感を煽るだけ煽っておいてから落としたのでは、相手に及ぼす迷惑が最高レベルになる。それは迷惑以外の何者でもない。

とどのつまり、いったい何についていいたかったのか。ええ、普天間代替基地問題の話ですよ。

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