Opinion : アンチ・魔改造 (2010/5/3)
 

兵器好きをワクワクさせる (?) フレーズのひとつに「魔改造」がある。具体的な定義は明確でないけれども、原型からかけ離れた、あるいは原形をとどめないほどに大改造を施して、しつこく使い続ける事例のこと、といえばいいだろうか。

イスラエルには、そんな事例がたくさんある。特に AFV の分野で目立つように思える。イスラエル以外では、南アフリカのオリファント戦車なんかが典型的魔改造といえるだろうか。あれ、元をたどればセンチュリオン戦車だ。

兵器以外の世界で「魔改造」という言葉を用いる事例はあまり見かけないが、鉄道車両の世界でも、原型からかけ離れた大改造を施す事例はあるから、これも一種の魔改造といえるかも知れない。

追記 (2010/5/4)
メールで指摘を頂戴したところでは、もともとこの言葉のルーツは「プラモ狂四郎」なる漫画にあり、常軌を逸した改造を施して参戦するキャラクターに由来するとのこと。


確かに、その手の大改造ものは眺めていて面白いから、趣味人の立場からするとワクワクする。ただ、大改造による能力維持やアップグレードを全面的に否定するものではないにしても、それはあくまで「やむにやまれずやるもの」という認識は必要ではないか、とも思う。いいかえれば、最初から魔改造を前提にするのはどうかと。

冒頭で引き合いに出したオリファントなんていうのは典型例で、アパルトヘイト政策のせいで武器禁輸を食らっていた南アフリカが、手持ちの戦車を使い続けるしかなくなり、そこで戦闘力を維持するために、改造に改造を重ねた結果として出現したもの。

イスラエルの AFV 群にしても、リソースが少なく、手持ちの車両を無駄にできない状況下で戦闘力を維持しなければならない、しかも実質的に常在戦場、というせっぱ詰まった状況から生まれたもので、何も趣味人を喜ばせようとしてやっている訳じゃあない。

1930 年代に列強各国の海軍で、手持ちの戦艦に対して大規模な改修を施して戦闘力の強化を図る事例が相次いだけれども、あれだって、ワシントン条約で戦艦の新規建造が禁止されていたから、手持ちの戦艦でなんとかしようとした結果のこと。

と、具体的な事例を挙げ始めるとキリがないからこれぐらいにするけれども、魔改造とか大規模アップグレードとかいうものは、あくまで他の選択肢がなくて、手持ちの装備でどうにかしなければならないときの最終手段。そのことだけは、ちゃんと認識しておいて欲しいと思う次第。

いいかえれば、「吊るし」の状態で使い続ける、あるいは新規調達して、それで何も支障がないのであれば、その方がいいに決まっている。手を入れれば入れるほど、自分のところの事情に合ったものにできたり、能力を高めたりできる可能性がある一方で、オリジナルのバランスを崩すリスクもつきまとうわけだから。

分かりやすい事例だと、IED (Improvised Explosive Devive) の脅威に対抗するため、AFV やソフトスキン車両に対して、手当たり次第に装甲の強化を図った事例がある。それで防禦力を高めた代わりに、重量の増加で機動性が悪化する問題が多発した。イラクのように道路網が整っている場所ならまだしも、路外機動性の悪化は、アフガニスタンみたいなところでは非常に具合が良くない。

すると、その問題を解決するために駆動系やサスペンションに手を入れて… なんてやっているうちに、改造範囲が雪だるま式に広がってしまう。他のプラットフォームでもある話で、ある部分に手を入れた結果としてバランスが狂い、それを解決するために別の部分にも手を入れることを繰り返し、やっと落ち着いたときには予想外の大改造というパターン。

身近なところで、自作 PC でも同じような問題が発生していたりしないだろうか ?


裏を返せば、「吊るし」のまま使い続けたり、あるいは新規調達したりしない事例があった場合、どの部分に手を入れるかに注目してみるのも面白い。表立って公言していなくても、その手の改造が「お国の事情」を暗黙のうちに語っていることが少なくないだろうから。

たとえば、イスラエル空軍で使っているアメリカ製戦闘機では、自国製の電子戦装置を装備している事例が多い。もちろん、自国が実戦経験を経て蓄積したデータやノウハウを活用したいから、という理由があるわけだが、それだけではなく、自国のメーカーに仕事を作るという事情もある。

そうやって自国メーカーの電子戦装置を強化して、かつメーカーのために仕事を確保することで、将来的に対外輸出のための競争力を高めて、外貨を稼ぐ手段にできる。実際、イスラエルには電子戦装置やその他の航空機搭載用電子機器で商売をしているメーカーが幾つもあり、その多くは対外輸出も積極的にやっている。

どうせ「魔改造」に着目するのであれば、「魔改造していて面白い」というだけでなく、その背景にある事情まで目を向けてみてもバチは当たらないと思うのだけれど、いかが ?

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