Opinion : 中国と北朝鮮に関する徒然 (2010/11/29)
 

延坪島砲撃事件における最大の被害者が韓国であることは論を待たないけれども、その次の被害者は中国ではないか、と思える。その辺の話について、思ったことをつらつらと書いてみようと思った。

ちなみに、三番目の被害者は周辺諸国 (特に日本) にいる中国・北朝鮮シンパの皆さん。尖閣諸島での騒ぎに続いて、さらに今回の一件で追い打ちをかけられて、ますます彼らの主張が聞き入れられなくなりそうではある。

それはそれとして。北朝鮮が暴れて欲しくない、さりとて滅びて欲しくもない、というところでは、中国も含めて近隣諸国の利害が一致していると思われるので、当の北朝鮮の人民にとってはまったく不幸な話。


中国にとって北朝鮮の存在は、いろいろな意味で重要。

まず、韓国 (と、そこに駐留する在韓米軍) と自国の間を隔てる緩衝地帯としての意味。かつてのソ聯にとって東欧諸国がそうだったように、陸続きになっている他国からの脅威 (それが実際に存在するかどうかは別として) を遠ざけておこうとすれば、間に緩衝地帯を置くのが手っ取り早い。そうすることで、一種の縦深を確保できる。

だから、ロシアは NATO の東方拡大、あるいはバルト三国の上空で NATO 諸国の戦闘機が哨戒任務を実施する件に対して、神経をとがらせているのではないかと考えられる。そうやって NATO が自国の方向に "寄って" くれば、それだけ緩衝地帯が減るわけだから。いわんや、ウクライナの NATO 加盟なんてとんでもねぇ、という話になる。

おっと、今回は中国の話だった。その中国が、黄海での米韓合同演習に反対するのも基本的な考え方は同じで、「縦深を確保するための俺の海」に入っきてサーベルをガチャガチャやるな、ということじゃないかと。となると、その演習を強行する事態の原因を作った北朝鮮は、中国にとっては「困ったちゃん」ということになりそう。

もうひとつは、外交カードとしての意味。つまり、「北朝鮮に対してもっとも抑えが効き、北朝鮮にいうことを聞かせることができるのは中国である」というポジションを確立していれば、今回のように北朝鮮が暴れたときに、「中国がいないと問題を解決できないから」といって他国が譲歩する事態につなげやすい。

ただしいずれにしても、北朝鮮が中国のいうことを聞けば、という条件付きでないと成立しない。中国の制止を無視して暴れるようになると、二番目の話の前提条件が壊れてしまうし、結果として一番目の話も怪しくなる。素直にいうことを聞いてくれる属国でないと、緩衝地帯にならない。

折から、以前からいわれている国防費の不透明性や急速な軍拡の話、あるいはレアアースの件とか尖閣諸島の件とかいった話が火に油を注いで、特に日本や欧米諸国では対中警戒心、あるいは対中反発心が (以前と比べると) 強まってきている。そんな状況下で北朝鮮が暴れてくれたのでは、ますます中国の立場が悪くなってしまう。

今までだったら、「人口 10 億の大市場に対する期待感」などを武器にして相手を黙らせることができたけれども、最近ではそのカードの神通力が落ちてきているのではないかと。するとまた、中国にとっては手札がひとつ減ることになる。


これを書いているときに、中国が「重大発表をやる」と期待感を煽っておいて、いざフタを開けてみたら「六ヶ国協議参加国による協議の呼びかけ」だったという、まさに「ズコー (AA 略)」という出来事があった。

これも、中国が北朝鮮問題を逆手にとってヘゲモニーを握ろうと試みたのだ、なんて考えることはできないかなあと。プライドとメンツを重んじる彼の国のこと、欧米諸国などで反発心が盛り上がったからといって、「はいそうですか」とコロリと路線転換するとは考えにくい。

つまり、北朝鮮カードを駆使して外交面でヘゲモニーを握り、自国に手を出せないように緩衝地帯を拡大する目的で列島線ホンダララといって外洋に押し出す、そのためのツールと威信とプレゼンスを兼ねて空母を造る、と。そんなこんなの組み合わせで、状況を自国に都合がいい方向に動かそうと試みているんじゃなかろうか、なんてことを推測してみた次第。

もちろん、こういった個人的な推測・判断が正しいかどうかは分からない。自分が見落としていた要素が何かあって、そのせいで大判断ミスをしていた、なんて可能性も大いにあるけれど。

もっともマシなのは、中国が北朝鮮に完全にコントロール可能な傀儡政権をおっ立てることではないかと思うけれど、それがそもそも実現可能なのか、どうやって実現するのか、そこまでして緩衝地帯を確保する覚悟があるのか、なんてことを考えると、実現の可能性は低くなるようにも思える。そうなると、日本周辺の不安定化につながる原因が減らないので、あまり嬉しい話ではないなぁ。

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