Opinion : 島嶼作戦と戦車と火砲 (2010/12/20)
 

新しい防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画が (ようやく) 出てきたので、ダウンロードして目を通してみた。「南西方面の島嶼防衛重視」とか「対中シフト」とかいうあたりは当然といえば当然の話で、特に物言いをつける筋合いのものではなく。

なんていっていたら、沖縄タイムスだったか「軍拡競争を煽らないで」という見出しをつけた記事を掲載していたようで、思わずミネラルウォーターを吹きそうになった。それはそれとして。

とはいうものの、「国が持つリソースの範囲を超える軍事力は維持できない」訳で、海・空を重視すれば陸が割を食う。で、定数を減らされるわ、戦車・火砲を減らされるわで、軍事趣味人の間では今度の大綱、なんだか評判がよろしくない様子。


確かに、陸戦において戦車が持つ火力・防御力・センサー能力・機動力の融合っていうのは重要な要素で、過去にカナダがやって失敗したように、戦車なんて要らないといって全廃するのは極論過ぎる。砲兵にしても事情は同じ。

なんにしても、ある兵科を「不要そうに見えるから」といって全廃してしまうと、後でそれを取り戻す必要が生じたときに、人材もノウハウも払底していて悲惨なことになるのはお約束。だから、全廃するのではなく、小規模でも維持しておくべき。

ただ、だからといって「島嶼防衛でこそ戦車が必要」「島嶼防衛でこそ火砲が必要」というのも、ちょっと話がすっ飛んでいないかと思う。島嶼防衛といっても、考えられるシナリオは色々あるし、それによって相手が何をどの程度だけ持ち出してくるかも違うだろうし、そして戦場となる島嶼の地形・地勢だって色々。それによって、必要とされる装備は違うんじゃないの、と思うから。

まず、「南西諸島の島嶼そのものが目標になるのか」、それとも「他の紛争において作戦を容易に進めるための支作戦として、南西諸島の島嶼を狙うのか」で、投入される戦力や目標が違ってくるはず。

また、前者であればチョーク ポイントに風穴を開けるとか、あるいは海洋・海底資源を確保するとかいう経済的目標が関わってくるかも知れないし、政治的目標として内輪向けにアピール度が高い場所をぶんどる、というシナリオだって考えられる。

後者にしても、単にレーダー サイトなどの「眼」を塞げればいいのか、飛行場まで欲しいのか、もっと恒久的に制圧してしまいたいのか、という違いが出てくる。飛行場が欲しければ、当然ながら滑走路がある島が狙われる。レーダー網に穴を開けるだけなら、SEAD/DEAD 作戦だけで済むこともある (かもしれない)。

そして島の地形。面積が広いのか狭いのか、上陸に適した海浜があるのかないのか、地形が平らなのか山がちなのか。それぞれ、最適な装備や部隊の規模・編成って違ってくるんじゃないの ?

でもって、それに対してこちらがどう対応するつもりなのか。とにかく上陸させないことを前提にして洋上での撃滅を目指すのか、いったん上陸させておいて雪隠詰めにするのか、はたまた上陸させておいて逆上陸作戦によって叩き落とすつもりなのか。

そういう前提条件の話抜きに「島嶼防衛でこそ戦車が必要」とか「島嶼防衛でこそ火砲が重要」とかいわれても、なんかピンと来ない。そもそも、島嶼防衛といっても海上からの揚陸作戦とは限らず、空挺部隊が降ってくる可能性だって考えないといけないかも知れないし (特に飛行場の奪取とかいう場面では)。


もちろん、想定されるシナリオの内容によって、「戦車が要る」とか「火砲が要る」とかいう話になる可能性はある。ただ、戦車といっても種類は色々、火砲といっても榴弾砲 (さらに自走榴弾砲と牽引砲があるぞ)、迫撃砲、カノン砲、あとは火砲じゃないけれども対戦車ミサイルや使い捨て式対戦車ロケットや多連装ロケットなど、考えられる火力は色々。

でもって、想定されるシナリオに照らしてみて、実際に必要なのはその中のどれ ? という形で話をしてもらう方が、きっと説得力があるよね。なんてことを考えた次第。

これはあくまでネタとして書くのだけれど、まかり間違って「迫撃砲を搭載した軽 4WD が最強」なんていうことになったら面白いかも。いや、面白がるような種類の話ではないけれど。

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