Opinion : いい意味での英国面 (2011/3/7)
 

なぜか軍事趣味界では、イギリスというとネタ扱いされて、お笑いネタを提供する素材にされてしまうことが多いように思える。なにもパンジャンドラムに限らず、いろいろと妙な珍兵器を開発してきたのは事実だし、「駄っ作機」のバリエーションも豊富。よせばいいのに、未だにしつこく L85 自動小銃を使い続けている。etc、etc。

ただ、あまりイギリスのことを馬鹿にしてばかりというのもどうだろう、と思うので、ちょっとはイギリスを弁護する話を書いてみようかと思った次第。


もともと第二次世界大戦の終結以降、イギリス軍の戦力は削ぎ落とされる一方。だというのに、2010 年秋にリリースされた SDSR (Strategic Defense and Security Review) で、骨と皮と化した状態からさらに皮が剥ぎ取られようとしている感がある。

そのせいで、やっと量産までこぎ着けた Nimrod MRA.4 は「世界でもっとも高価なスクラップ」になってしまうし、フォークランド紛争における英雄・軽空母 HMS Invincible は危うく中国人に買い取られるところだったし、イギリスの誇り・Harrier GR.9 は予定を早めて退役させられる始末。これでパイロットの所要が減って、せっかく発注した Hawk T.2 練習機の中には、一度も訓練飛行に用いられないうちに余剰になる機体が出てきそう。

もちろん、イギリス国内にもこうした動きに反発する人はいるけれども、国の財政事情を持ち出されれば反論は難しいのが辛いところ。そもそもイギリスという国、「海軍は神様並みに扱われる」とはいうものの、一方では「海軍は神様と一緒で、困ったときだけ頼りにされる」という一面もあるし (ぉ

ただ、イギリスがイギリスである理由が、その「困ったとき」にあると思う。つまり、逆境・苦境に直面したときに、骨や皮を削ってでも苦境に耐えて乗り切ろうという、いわゆるしぶとさというか、粘り腰というか、諦めの悪さというか。そこのところでは、もっとイギリスを見習ってみてもイイと思う。

もっとも、その粘り腰や諦めの悪さが、駄っ作機を量産する一因になっているのかも知れないけれど…

もちろん、何かまずいことになったときに、早いところ見切りをつけて方向転換しないといけない場面もある。では、誰とはいわないけど米陸軍みたいにいろいろと装備開発プログラムを立ち上げて大風呂敷を広げて、その度にコスト上昇とスケジュール遅延のダブルパンチに見舞われて途中で放り出し、過去を振り返ってみたら死屍累々。なんていうのを見ていると、粘り腰を発揮すべき場面の見極めが重要じゃないのかと。

実際、開発過程でさんざん苦労して、議会や会計監査当局やマスコミなどから袋叩きに遭って、それでも放り出さなかったおかげで熟成されて活躍できたウェポン システムはいろいろある。ここぞというところで担当者が放り出さずに周囲を説得してきたからこそ、後になって成功物語を語ることができる。もっとも、いったん熟成されて問題が解決されてしまうと、開発過程で苦労した話をきれいさっぱり忘れてしまい、最初から問題なく完璧なものができたと思ってしまう人がいるのは困り者だけど。

その一方で、他国で苦労しているのを茶化してくさして、それで「うちのプログラムは上手くいっているぞ」と優越感に浸ってナショナリストぶりを発揮する人がいるのも、これまた困り者。

こんなことを書くと無責任だと怒られるかも知れないけれど、技術者でも何でも、修羅場をくぐった人、壁にぶち当たって乗り越えてきた人の方が、順風満帆の失敗知らずで過ごしてきた人よりも強い。そういうところで、イギリスの過去の歴史や、そこで発揮してきたしぶとさや粘り腰や諦めの悪さ (←しつこい) を参考にしてみるのは、決して無駄なことではないんじゃないかと。

あと、よく知られているように、イギリスという国は上に「超」が着くほど保守的で、古いものを大事にし続ける傾向がある一方で、新しいもの、革新的なものを生み出してきた側面もある。どうしてこの両者が共存しているのか、ちと不思議でならないのだけれど、研究してみたら面白いテーマかも知れない。


と、ここまで書いたところで思ったけれど、逆境や苦境に対する強さというのは煎じ詰めると、逆境・苦境との向き合い方の問題なのかも知れない。
つまり、何かまずいことが生じたときに、目の前の現実を現実として受け入れた上で、手持ちの資源や資産でできることを冷静に見極めて、打てる手は打つ。それでインスタントに問題が解決しなくても、多少なりとも物事を良い方向に持って行く工夫をする、といった具合に。

それとは反対の、目の前のまずい話を否定するような話を探して飛びついて現実逃避したり、それとは逆に悲観的になり過ぎたり、細々した話でいちいち一喜一憂して感情が揺れ動いたり、といったことはしない。というか、少なくとも避けたいところ。

少なくとも第二次世界大戦当時のイギリスの動向を見ていると、なんとなく納得できるような気がする。もっとも、したたかさの故か (?) 腹黒紳士ぶりを発揮して後世に紛争のタネを残してしまうのも、またイギリスの得意技ではあるのだけれど。

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