Opinion : まずは休んでよ… (2011/7/18)
 

東北地方太平洋沖地震から 4 ヶ月ちょっと。以前に考えていたよりもずっと早く、自衛隊がらみのイベントに関する情報が出始めた。一人の趣味人として考えれば嬉しい話ではあるものの、その一方で、「え〜、ちょっと待って」と思ってしまったところもある。

もちろん、関係者が内部の状況を見極めて「大丈夫」と判断したからイベントを行うのだろうと思うけれど、それにしても、「それはいいから、もうちょっと休んでからにしてくれても…」というのが正直なところ。

少し前に栃木県方面を訪れたとき、「災害派遣」の垂れ幕を付けた陸自のトラックを何台か見掛けた。4 月の下旬に会津若松に行ったときに「災害派遣」のトラックを見掛けたのは分かるけれども、それから 2 ヶ月あまり経過した後の話だけに、なおさら。


これを書くために防衛省の Web サイトで確認したら、7/15 時点の発表で「人員・約 23,150 名 (陸災部隊 : 約 18,600 名、海災部隊 : 約 1,800 名、空災部隊 : 約 2,600 名、原子力災派部隊 : 約 150 名、航空機 : 約 60 機、艦船 : 6 隻」が活動中とのこと。以前の 10 万人体制と比べれば減ったとはいえ、まだ 23,150 名「も」というべきではないかと。

しかも、10 万名にしろ 23,150 名にしろ、それは被災地で活動中の隊員の数で、後方でそれを支えている隊員は含まないわけだし。それに、すでに派遣任務を終えた部隊でも、消耗した物資を補充するとか、使った装備を整備に回すとか、いろいろと作業が残っているのでは。

なんてことを考えると、「イベントもいいけど、まずは整備・補充、そして何よりも隊員の休養を先にしてよ…」となってしまい、なんだか素直にはしゃげない。

矛盾の塊みたいな話だけれど。

軍隊とか警察とか消防とかいうのは、本番がなくてヒマで、練成に励んでいられる方がいいに決まっている (でも、そこでちゃんと術力を磨いておかないと、いざというときに役に立たないし、ことに軍隊の場合には抑止効果が怪しくなってしまうけれど)。
ところが、実際に有り難みを実感できるのは、その起きて欲しくない本番が発生したとき。戦争でも災害でもなんでも同じこと。

兵庫県南部地震でも、あるいは東北地方太平洋沖地震でも、その他の事故・災害でも、多数の自衛官が救援活動に従事して、国民から高く評価されているのは周知の通り。とはいうものの、本来任務である国防の任を果たすための体制は常に維持してもらいたいとも思う。

それは頭数だけの話ではなくて、物資や整備の状況や疲労回復などといった、即応体制全般という意味で。なんだかんだといっても、そちらが本業なわけだから。前述した災害派遣に関するものはともかく、お楽しみ系のイベントみたいな広報活動は、体制がちゃんと整ってからやってもいい種類の話。


とかなんとか、思うままにいろいろ書いていたら、何が何だか分からなくなってきてしまったけれど。

「被災地のために誰が身体を張って動いてくれたか、他所の土地の人間が何をいおうが、当の被災地の皆さんが一番わかってくれてるはず」と思いつつも、「被災地以外の人にも活動状況について知ってもらう必要があるだろうし、被災地以外の人でもねぎらいの言葉をかけたいことってあるよね」というのもまた正論。

実際、朝霞の陸自広報センターを訪れたときに、被災地における陸自の救援活動の模様を撮影した写真がたくさん展示してあって、それを見ていたら胸が詰まる思いをした。そういう意味では、ちゃんと「広報センター」の仕事をしているなと思う。

そういうことを考えると、イベントを開いて被災地以外の人と接する時間を作ることにも、おおいに意味はあるはず。でも、訪れた側が単にお祭り騒ぎで楽しむだけでいいのかなぁ ? と。

要するに、災害派遣から戻ってきたばかりでイベントを開催するというだけでも大変だろうし、規模や内容が平素より縮小されていても文句なんていわず (そんなことをいう奴がいたら怒りますよ ?)、「災害派遣、お疲れ様でした。国民は自衛隊や在日米軍の皆さんに感謝しています」っていいたいよね、と。そういう話。

そういえば本業の方では、「トモダチ作戦」の記事は書いたけれど、自衛隊の活動についての記事は書いていない。でも、これは自分より上手に書ける同業者がたくさんいらっしゃるわけで、あえて自分がしゃしゃり出るまでもなさそう。

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