Opinion : "愛国" あるいは "反日" といった毒薬 (2011/8/29)
 

先日、Twitter で流れてきたネタで「反日企業のリスト」「愛国企業のリスト」というのがあって、吹いた。

もともと、「愛国」「憂国」「反日」「親日」とかなんとかいって自分の主張をアピールしようとしたり、他人を色分けして物言いをつけたりするような人とは関わりたくないと思っている。それは、この手の言説が分かりやすい反面、毒薬にもなりやすいから。

韓国で「過去に日本に協力したのは怪しからん」といって罰する動きが出たときに、それを非難する人が出てきた。それは確かにそうだと思うけれども、それならそれで、自分らが同じようなことをやってどうするの、と。そういうところが「毒薬」なのである。


「反日企業」といって名前が挙げられるのはえてして、「日本と対立している某国にとって利益になるようなことをしている」とか「某国の手先になっている」とかいう類の理由によるようだ。直接的なものならまだしも、間接的な話になると、そんなもん、なんぼでもこじつけが可能であろうに。

それに、もともと当該企業がそういう意図を持ってやっていると立証できるならまだしも、企業が利潤を追求して行っている行動が結果として "反日的に見える" ということで物言いをつけているのなら、それはどこかで破綻する可能性があるから止めた方がいいと思う。

よく「企業が利益を追求しているのが怪しからん」といった主張をする人がいるけれども、そもそも企業が利益を追求するのは当たり前の話で、それ自体は何も問題はないのでは。そこで、(先週に書いた話とも絡んで) 手段の是非は問題になるけれども。ただしそこで「反日」「愛国」とかいう尺度を持ち出すと、収拾がつかなくなる。

たとえば、「日本をユダヤの陰謀から守れ」と主張する国士様 (いかにも存在しそうではある) が「生産拠点を海外移転しないで、日本国内生産にこだわっている某企業は素晴らしい」と持ち上げていたとする。

で、その「某企業」が販売している製品がイスラエルの武器メーカーなどで活用されていたら (実際にそういうことが起きているわけだが)。さて、その「某企業」のことを持ち上げればいいのか、落とせばいいのか。どっちになるんだろう。

メーカーの立場からすれば、外国為替管理法 外国為替及び外国貿易法に違反しない範囲で自国の製品を各国に輸出して利潤を得ており、その製品が各国で高く評価されている、という以上の意味も、それ以下の意味もないだろう。いちいち「愛国」とか「反日」とか「親日」とかいうことまで意識して売り先を決めている企業が、いったいどれだけあることやら。

同じことは、イスラエルに出店しようとしたら抗議を受けて出店撤回、なんてケースにもいえる。なにも「ユダヤの陰謀 (笑)」「イスラエルによるパレスチナ弾圧」に加担しようとしてイスラエルへの出店を決めたわけではあるまい。

身も蓋もないことを書けば、市場があるところに出店する。それだけのこと。ただ、抗議活動を受けることで商売がやりにくくなり、結果として商売の足を引っ張る結果になるのであれば、メリットとデメリットを天秤に掛けて出店を止める。そういう話。

確かにときどき、「○○に抗議して△△国への出荷を止める」とかいう類の声明を出す企業があるけれども、それとて基本的には同じ話で、出荷を続けることによる商売へのメリットと、それに対して物言いがつくことに夜商売へのデメリットを天秤にかける、というのが基本的な経営の判断というものなのでは。

もちろん、人道上の理由や政治的な理由といったファクターが、まったく入り込まないとは断言できない。ただ、そのために商売を完全に犠牲にしてよろしい、と考えている経営者はいないと思われる。どこでバランスをとるかという問題で、「いちぜろ」にはならない。誰だって霞を喰って生きていくことはできないのだから。


そういう考え方に立脚すると、当事者がいちいち意識しているわけではない行動や結果に対してまで、あれこれと都合のいい話の抽出やこじつけを行って「愛国」「反日」などと色分けするのは、結果として、自分達が嫌っている (であろう) 相手と同じ次元に墜ちることになりはしないかと。

国の体制が変わったときに「前政権に協力していた者を吊るし上げる」「前政権の政策を全否定するところからスタートする」とかいう類の行動も、度が過ぎると (そして、えてして度が過ぎるものである)、却って毒薬になるもの。そういう意味では、今後のリビア国内情勢には懸念が残る。

結局のところ、「敵」「味方」と色分けして過剰に攻撃的なことをやっても、ことにそれが分かりやすい単純な理由付けであるほど、長期的に見たときには良い結果にはつながらないと思うのだけれど、どうだろう。

実際、自国の外に「敵」を作り出すことで国内の結束を固めようとする国家がしばしば出現するけれども、そういうやり方が後でどういう結果につながったか。まずはそこのところから検討してみてはいかが。そうすれば、自分らが同じことをするのは賢明ではないという結論になると思うけれど。

そういえば、「○○は原発関連企業だからボイコットしろ」にも似たような空気を感じるのであった。原発関連企業の製品をボイコットするなら、とりあえず電車に乗るのは禁止ね :-p

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