Opinion : 追い風が逆風の原因を作る ? (2011/9/5)
 

光人社 NF 文庫から「海上自衛隊員の作り方 - リクルートとしての自衛隊」という面白い本が出ている。海上自衛官はモノではなくて生身の人間だから、どちらかというと「海上自衛隊員の育て方」という方が適切かも知れないと思ったけれども、それは本題ではないので措いておくとして。

この本の中で、「向かい潮」という話が出てくる。船の舵は尾部に付いているから、前方からの流れに対しては効くけれども、後ろからの波、つまり追い波を受けると舵の効きが悪くなり、針路の保持も操艦も難しくなるという話。だから、むしろ向かい潮の方が良くて、海峡通航などの場面では向かい潮になる時間帯を選ぶのだそうだ。へえー、それは知らなかった。

ひょっとすると、飛行機も同じかも知れないと思った。マリアナから日本の上空にやってきた B-29 がジェットストリームに巻き込まれて、精確な投弾ができずに苦労した話を連想したから。でも、自分は飛行機を空の上で操縦したことはないので、実際のところはよく分からない。飛行機の操縦を習っている友人がいるから、機会があったら訊いてみようと思う。


といったところで、いきなり話題は変わって。

WikiLeaks.org がサイバー攻撃の被害に遭っただとか、公電のファイルを解読するためのパスワードを流出させた挙げ句にソース隠蔽なしの暴露大会に出たとかいうニュースを聞くと、「ああ、やっぱりねえ」という感想しか出てこない。

もともと「秘密の暴露」という刺激が売り物だから、刺激はどんどん強くしないと後が続かないし、やっている内容が内容だけに敵も多いはず。敵といっても、なにも政府機関に限った話ではない。実際、WikiLeaks.org がイケイケドンドンで持て囃されている頃からすでに、「wikileaksleaks.ほげほげ」とかいう類のドメイン名を早手回しに確保している人がいた。

これは多分、WikiLeaks.org の暴露ネタを出すチャンスを窺っている人がいて、そのときがくるのを見込んでドメイン名だけ先に確保しておいたのではないか、と推測した次第。そのうち、「WikiLeaks の真実」とか「私が見た WikiLeaks」とか「これが本当の WikiLeaks だ」とかいう類の暴露本が、ゾロゾロと出てきてもおかしくなさそう。

もともと「暴露」という一種の破壊行為だけで、建設的なことを何もしていないのだから、追い風が吹いているときほど身の処し方や情報管理に注意しないと、後で盛大に利息を付けてお返しが来るだろうに。当事者は、そんな簡単なことも考えていなかったのだろうか、と思った。

以前にもどこかで似たようなことを書いたような気がするけれど、向かい風 (向かい潮) のときよりも、追い風 (追い潮) のときの方が、調子に乗って道を踏み外しやすいのだから。

WikiLeaks.org に限った話ではない。その他の分野でも、何かの事象をきっかけにして突然、追い風が吹き始めてスターダムにのし上がり、いきなり朝野の注目を浴びる個人、あるいは組織が出てくるのはよくある話。そこで調子に乗って、「このチャンスにこそ、一気に我が目標を達成したい」「このチャンスを利用して名を挙げて、地位を確保したい」などとまなじりを決するのは、いかにもありそうな話。

そういう人や組織って多くの場合、以前から問題意識を抱えているライフワーク的な事案が何かあったり、あるいは何か敵視している対象がいて、それと戦うためなら何でもあり、みたいなことをやってきていることが多そう。ただ、特に追い風 (追い潮) のときほど、周囲の状況を正しく認識できなくなり、「世間はみんな自分の味方」と勘違いして暴走するのはありがちなパターン。

仮に、その事案に関する見解や主張、運動の内容が正しかったとしても、そこでどういう対応をとるかが問題。
たとえば「○○を止めれば問題を解決できる」「△△をなくせば問題を解決できる」と考えたときに、「○○を止める」「△△をなくす」だけを唯一究極の目的にしてしまい、それによって生じる影響や反応まで考えられないのは活動家 (運動家)。無論、反対意見の存在なんて「もってのほか」。

それに対して、「○○を止める」「△△をなくす」を実行に移したときにどういう影響が生じるか、どういう反対や反論が考えられるか、それに対してどう対応するか、最終的にどういう形で落としどころを見つけるか、そもそもトータルで見てプラスとマイナスとどっちが多いのか、といったところまでちゃんと考えられるのは政治家。

というか、「政治家とはそうあってほしい」という方が正しいか。

だから、追い風 (追い潮) が吹いたときに調子に乗ってしまい、自己目的の追求以外は何も考えられなくなるような活動家根性だけでは、大局を見失い、操艦も針路の保持も怪しくなって、いずれはどこかに座礁したり、誰かと衝突したり、なんてことになるのがオチではないのかなあと。と、半ば強引に冒頭の話に結びつけてみた。


もちろん、何かに問題意識を持つこと自体は悪くないのだけれど、問題意識を持っていても、それをどう解決しようかという取り組みのところで、「良い運動」と「悪い運動」(と、ひょっとすると「普通の運動」) の違いが出てきそう。

さらにその過程で、特に急な追い風 (追い潮) が吹いてきたときの取り組み方や身の処し方がちゃんとできる人でないと、最終目標の達成も怪しいのでは。というところで、今回はこの辺で。

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