Opinion : 機微情報の管理とサービス精神と (2011/9/12)
 

先日、「羽田空港に勤務する管制官が飛行計画の情報を撮影して blog に載せていた」件について某所から電話がかかってきて、寝ている最中に叩き起こされた。もっとも、ことに物書き稼業で日が変わる前に寝ている方が珍しいので、叩き起こされたこと自体はどうでもいいのだけれど。

重要な部分を "墨塗り" 状態にして公開された不鮮明な画像を見てみると、どうやら、運航票に記載されているのと同じような情報が出ている画面を撮影して、blog に載せていた模様。

この事件、イロハが分かっていない新人ならまだしも、ベテランの仕業とのこと。このニュースを聞いて「職業意識がどうの」などと本人を責める声があちこちで出ているようだし、それはそれで当然の反応。でも、個人の問題だけに押しつけてしまって良いものなのか、とも思う。


数は少ないけれども、携帯電話会社の中に「カメラなしの端末」をラインナップしているケースがある。それはもちろん、そういう需要があるから。たとえば、メーカーの研究開発部門なんかでは外部に出せない重要な秘密情報がいろいろあるだろうから、カメラ付き携帯電話もカメラと同様に持ち込み禁止にするのが筋。

ところが、だからといって携帯電話まで全面的に持ち込み禁止にすると支障があるだろうから、そこで「カメラなし携帯電話」の需要ができる。そういえば、カメラ付き携帯電話に起因する問題として「デジタル万引き」なんていうのもあるけれども、そこまで話を拡げると散らかりすぎるので、今回はパス。

今回の一件で、どういうデバイスを使って写真を撮ったのかは知らないけれども、なんにしても、機微に触れる情報を扱う職場において、そういう情報漏洩につながりかねないデバイスを持ち込むことができたこと自体、ちと問題だったんじゃないの ? というのが個人的な印象。国土交通省がこの点について、どういう規制を敷いていたのか。それが問題ではなかろうかと。

確か、しばらく前に「軍事研究」誌か何かで書いたことだけれども、いわゆるサイバー攻撃といっても、ネットワーク経由で不正侵入や乗っ取りなどを企てるものばかりとは限らない。実のところ、IT がらみの情報漏洩事件というと未だに、内輪の人間による情報持ち出しが少なくないのが実情。先週のネタにした WikiLeaks.org もそう。

それだからこそ、防衛関連の大手企業がサイバー セキュリティ分野に進出する際に、「内輪の脅威」に対処するための製品を売り出している。個人個人の挙動の監視、情報持ち出しにつながる手段の制限、アクセス権の管理・アクセス制限・アクセス情報の記録、といったあたりがポイントか。そういう製品が必要なのは、それを必要とする脅威が存在するからに他ならない。

多分、この手の製品の話は「今週の軍事関連ニュース」あたりをサーチするといくつか出てくると思うので、もし興味があれば試してみていただきたいと思う。

閑話休題。
そういう状況だから、個人の職業意識、秘密保持意識を高めることももちろん重要であるにしても、内輪の脅威が存在することを前提にして情報漏洩を防ぐための施策をとることも重要なはず。そっちについてはどうだったの ? というところまで突っ込んでこそ、ジャーナリズムというものだと思うのだけれど。現実問題としては以前から、先に書いた「カメラ付き携帯電話禁止」みたいな話もあるわけだから。

ところで。この件について調べていたら、ACARS (Aircraft Communications Addressing and Reporting System) の情報を受信して、地図上にプロットするソフトウェアがあることを知った。こちらはこちらで「えー、それってアリか ?」と思った。リアルタイムの情報だから、これはこれで問題があるのでは。

もちろん、暗号化する等の措置をとれば隠蔽可能だけれども、世界各国の相互運用性が重要な業界だけに、日本だけが勝手に暗号化するわけにも行かない。それに、誰でも傍受できる状態で運用しているのは、「それでも問題ない」という認識があるからだろうし。ただ、傍受して得た情報を他の誰かに漏らすと、日本では電波法違反になりはしないかな ? とは思った。


あと、もうひとつ感じたのは、「サービス精神」ということ。

管制官に限らず、他の職業にも多かれ少なかれいえることだけれども、外部の人が知りたがっているけれども分からない情報を持っているときに、それをモロ出し、あるいはチラ出しすることで、人気者になれることがある。あるいは、自分が何か特定の業界の「中の人」であると表明することで。

今回の場合、当事者でなければ見られない情報を blog に載せることで、一種の「読者サービス」「人気者になる手段」を実現しようとする、そういう意識がなかったのかな。というところが気になった。

blog でも Twitter でも、程度の差はあれ読者サービスということは考えるもの。ただ、そこには「超えてはならない一線」というものがあるわけで、そこのところの意識が希薄ではなかったのかなと。これは冒頭で書いた「個人の資質/意識」に関わる問題だけれど。

その点では、自分も該当者の端くれだから自戒の意味も込めて書くのだけれど、読者サービスのために「書かなくていいこと」「書いたらまずいこと」まで表に出さないように注意しないと。

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